続・ヒカリ日記



破瓜の日、裏切りの友

途切れぬ雑音が、アスカが蹲る狭い空間を満たしていた。
ザァザァとも、ゴォ、ゴォ、ゴォ、とも。それは、幾十幾重にも連なった機械達の働きぶりが、隔壁を隔てて聞く内にただ一つの唸りへと唱和された物にも似て聞こえる。
ドイツから乗った油臭い船旅を思い出す。思い出してしまう。
それは辛いことだ。
エンジンのものか波のものか、騒音にいつも包まれていたなと浮かび上がるのは、一番長く過ごした輸送船での時間に他ならない。
元はタンカー。ただ急ごしらえでオイルタンクを甲板までぶち抜き、LCLのプールに作り替えてしまった、『アレ』のためだけの船。天井はただの幌だった。
外海の高波を押して割って進む音が常にそのまま赤い水面の上まで、間近に響いていた。
それこそ、太平洋の雨雲に出くわそうとも大して変わりないくらいに、いつもいつも只とにかくうるさく―― 。そんな浮き桟橋の上で、『アレ』に寄り添って、誇らしい気分に満たされて過ごしていた。

その誇らしさまでが浮かび上がってこようとするのが、今のアスカには堪らなく煩わしい。
日本で降る雨。ドイツにも帰らずに聞く強い雨足を、不快な騒音以外に聞けたことなど、久しく無かった。

「……ッ」

無意識に呪い言が突いて出る。
この部屋がいけないのだ。外に近すぎる。
壁一枚で、そこがもうブロック塀まで数十センチしかない庭で。
庭とすら呼べたものか。猫の額とはよく言ったものだろう。
壁に嵌っているのも、外の雨音程度も遮断できない窓なら、いっそ塗り潰してあった方がマシにしか思えない。
ちゃちなサッシ窓も憎々しければ、薄っぺらな壁も憎らしい。
人が勝手に過ぎっていける往来まで、ほんの僅かしか距離を稼いでいない敷地の狭さは、それこそ憎悪に値する。
置かれているブロック塀なんて、ただの気休め以下。

―― きっと誰かは耳にした。

(このアタシの、惣流・アスカ・ラングレーの)

犯されて上げる、聞くに堪えない悦がり声を。



◆ ◆ ◆



昨晩もアスカは、徐々に強くなっていく雨音に紛れ、この洞木の家の中年男に相手をさせられていた。
最初に飲まされたザーメンを全部、叫んでいる内に口の中から飛ばしてまうくらい、手酷く突き潰されたのだ。

男の娘達とは違う、西洋人としての美貌を持つアスカを抱く時、体位は正常位か屈曲位かが多く選ばれる。
その金髪碧眼で豪華に飾られた白皙が変わりゆくのを、最も鑑賞しやすい繋がり方だ。
そうして彼女の蒼い瞳が、常の鬱屈とした濁りから徐々に恥辱の感情を表し、追い詰められていって弱気を覗かせ、遂にはどろりとした官能で焦点を失っていくのを、くつくつと愉しむのである。

『おうおう、お姫様みたいな顔をして。なんだその、だらしない涎は』

己を俗物であるとしきりに口にする中年男には、本来のアスカは違う世界に属した、仰ぎ見るだけの存在の筈だった。
娘ほどの年下の、小娘ではある。
けれど、男自身が一員を務める組織が、彼女を世界にまたとない高貴な身として遇していた。
与えられていたのは、世界に三人のみの資格を証す、赤い戦装束。
許されていたのは、世界最高峰の頂きにあった技術と予算の結集を、たおやかな腕の一振りに預ける神威の力。
まさに確かに、すっと高貴に通った鼻梁も、意志の強さを感じさせる弓形の眉も、ただの姫ならず、戦場に駆けるヴァルキューレへ喩えるべきであったか。
身体のラインをくっきりと出す姿に、同じほどの実の娘の味を覚えていた男は密かな欲望を抱かずにはいられなかったが、近寄ることすら夢のまた夢。所詮男は組織の末端、換えの利く歯車。
セカンドチルドレンの称号をこの上なく誇りとしていたアスカにも、鼻に掛けて、そんな男を側にも寄らせぬ棘があった。

だからこその、堪えられない犯し心地。

『はひ、ひ、ひぐっ……。っ、ッぐっ。うっ、あうっ』

あっ、あっ、あっ、と。悦びの蜜でどろどろにぬかるんだ小さな入り口へ、ぱんぱんに大人のペニスを飲み込んで息を切らせる。
お高くとまって見下す目をしていたのと同じ顔が、身も世もなく眉根をよじらせ、深い性の迷宮に惑う懊悩を訴える。
勝ち気さの面影はなく。しかし、泣き喚く赤子さながらにくちゃくちゃと歪んで尚、麗しい美少女。
狂おしげに捩らされる首筋に、舐め取る汗すら甘い味わい。
ざんばらと乱れて顔を隠すブロンドをごつごつとした手で払い、白痴の法悦を、安っぽい蛍光灯の下に暴く。

『い、いやぁ……』

その可憐な唇から、『あひぃ』と馬鹿のような叫びを絞らせるのも。
か細く『し、しんじゃう。……もう許して、休ませて。やすませて、くださ、いぃひッ、ヒぃぃいッッ!?』と喘がせるのも。
自慢の逸物の突き挿れ次第。パンチをきかせた腰遣いの、ひねり次第。
それだけで、

『どうだぁ、アスカぁぁ。俺のチンポは? セカンドチルドレン様も、こんなお持てなしは受けたこと無かっただろう?』
『あぁ―― あ、ぁあ、あああ! はれっ、破裂っ、しちゃう……! アソコが、苦し、しぃ……いっぱぁいぃぃぃ』
『おうおう、美味しそうにマンコ食い締めてやがって、そうか、イキ死ぬか?』

ぎゅっ、ぎゅっ、と。布団に汗みずくの背中を踊らせて悶える金髪美少女が、押し潰す中年腹を力一杯抱きしめ返してくる。
よく鍛えられた身体は、ヴァギナの締め付けも一流逸品。挿し込んで激しく前後させる亀頭先端から竿半ばまで、瑞々しい反応を『にちゅ、きゅぅっ』と絡ませて、男の歓びに奉仕するのだ。

『はひ、ひっ、ひひぃ……ッ』

天才の誉れ高い知性をすっかり駆逐して、叫び散らすのだ。

『しんじゃう。しんじゃ、ぅぅぅ』
『ヒカリに感謝しとけ。お前をここに連れてきてくれた―― いや、元々はヒカリを俺が仕込んでやったからか。ハッ、やっぱり俺に感謝だな、アスカぁ』
『あぐ、ぐっ、またっ、また、い、イク……! これっ、腰がっ、なか、溶けちゃ……から。熱いの、熱いのぉっ』
『……イケよ、幸せだろう? 連中にただ飼い殺しにされてるより、よっぽどなぁ』

こう嘲笑っては、悦に入る。
言われ、見るに堪えない痴愚の様を晒していると自覚させられても、アスカに出来るのは、とっさに背けるくらい。

『ああっ、嫌ぁぁ……』

背けられでもしたなら、まだ上等の部類だ。
手で庇おうとすれば、どけろと凄まれるだけ。後は怒りを買わない程度に弱々しく、『見ないで、みないでよぉ……』と、嗚咽を零すだけ。
その手も大抵は余所にある。塞がっている。
―― 憎い男を、愛おしく抱き返すことで。
殆どはただ、正視に耐えないアヘ顔を止められず『あひ、ひぃヒ、ふひぃっ……』と涎を垂れ流すままだ。
碌な正気だって、残していられない。
寧ろ積極的に理性を手放してしまった後が多いのだから、朝になってから思い出し、思い出させられて、俯くのが関の山。

そんな正常位と同じぐらい、四つん這いにさせてのバックスタイルもまた―― 何かへと震える手を伸ばして逃れ出そうとする背中を、尻からピストンの腰遣いで屈服させてゆける体位であるが為、好まれるところではあったが。昨晩はまず、そして最後も、選択されたのは正常位。
この頃のアスカに最も辛く、故にこそ男はご満悦で組み敷いてくる姿勢だった。
なぜなら、男とその淫ら極まりない娘達とに夜ごと責め上げられ、開発されて、すっかり女としての悦びに目覚めてしまった躰を抱えるアスカには、手足が一番自由になる体位であることこそが、最も呪わしい。
自分の思いのままになる手足が、快楽のどん底で踊りくるっている時に何を求めてしまうものか。よく、分かっているだけに――



◆ ◆ ◆



(ちっく、しょう……)

雨風に軋むサッシから、冷えた空気が壁伝いに降りてくる。
常夏の15年から四季を取り戻したでもなく、日本の気候は不安定に崩れたきり。かつてを知る大人達も『秋』と呼びきれたものか戸惑う近頃だ。着直した寝間着があって尚、午後になっても降り続く肌寒さはアスカの周りを取り囲む。
乱れた寝床を脇にした部屋の隅、足を抱えて蹲っていたその薄着の肩にひんやりと届いても、今更もう、瞑った目蓋に堪えるものも、込み上げてこない。
うだつの上がらない中年男の慰み者にされる惨めさを泣くには、アスカはもうこの家と、饐えた生臭さの漂う寝床に馴染みすぎていたし。呼び出しに黙って従い続け、半ば住み着いているも同然になる程、かつてのエリートパイロットの自尊心は摩耗しきっていた。
はれぼったい目にしても、今から悔しさの涙を流すものではなく、夜にひぃひぃと喘ぎ泣いた名残にすぎない。
あの夏の級友だった洞木ヒカリの家へ、友人にではなくその父親からの電話で呼び出されるのが珍しくなくなった。これと同じで、アスカが泣き腫らした目をして遅い朝を、この他人の筈の家で迎えること自体、日常と化して長い。
泣き腫らした理由すら、しばしば変質するに至っている。
屈辱の涙だけではなかった。
悲しみに濡れた夜だけでも、最早なかった。
頭の中を歓喜一色にして、声も枯れろと快楽をこそ咽び泣いた悦びの夜。強いられるばかりではなく、自ら強く求めて肉欲に浸った―― 大人になりきれない手足をいっぱいに踊りくねらせて、快感を貪った夜も、積み重ねてきていたのだった。
未だ、好きになれる場所の一つも見つけられない中年男。躰を、唇を重ねることに抵抗感はある。
けれども、

『あっ……』

太い指に顎先をくいと持ち上げられると、声が出なくなる。
たとえそれが、登校しようとヒカリたちと玄関に向かおうとした矢先の不意打ち、男の娘達である彼女ら姉妹に見詰められている前だとしても。
男が腰を屈め、顔を近付けてくると、目だけは後ろめたく横に向けても、顔は逸らせない。
その瞬間までを無意識に計って、震えながら自分でも唇に隙間を作り、大人しくただ待ち受ける始末。

『んっ、んむぅンン』

間を置かず滑り込んでくる、男のぬめる舌先。
唇を割られるのを、慄然恍惚相半ばの複雑な感情と共にゾクゾクと受け容れて、パブロフの犬のように下着を濡らしだしてしまう。
応じてぴちゅくちゅと自分からも絡め、恋人のような深い口付けを、父親ほども歳の離れた男と作り上げてしまう。
まだ中学生の少女と、40を数えた中年男。
乙女としての当たり前の抵抗感は残しているつもりなのに、それらの一切をこなすのに遅滞がないのだ。
一連の動作がすっかり身についている。躾けられてしまっていると、強く自覚する。
アスカの知っている『大人のキス』は、そうやってヒカリの父親に覚え込まされたものだった。
ヒカリの父親相手に、最も喜ばれるやり方だった。
もうこれから別の誰かとキスをするような関係になっても、教えられたキス以外で、応じることは出来そうにない。
セックスもだ。

アスカがセックスを知ったのもこの家で。この、主である男の部屋の、寝床の上でだった。
何がなんだか、霧に包まれたかのように上手く頭が働いてくれなかったその時。覚えているのは、耳元でクスクスとこぼして、何事か自分以外と言葉を交わしているらしいヒカリ。彼女の、背中から抱きついている女の子らしい柔らかい感触と、シンジとはまるで違った―― 体毛の目立つ胸肉を晒して、ゆっくりのし掛かってこようとする大人の影だった。


イラスト:目黒腹蔵さん「ヒカリ日記 case Asuka 01」


学校帰りに家に誘われた、そこまでははっきり思い出せても、後が分からない。
いつの間にか布団の上でお尻をついてしまっていて、そのお尻には直接シーツを敷いている感触があって、

(あ、れ……? パンツ、いつ脱いだっ、け……?)

股は大開きで、処女の部分が丸出し。制服のブラウスもブラも、はだけ、ずらされて、胸が綺麗に出てしまっていた。
ぺたんとへたり込んだ後ろには、自分を抱き支える、抱き支えながら片手ではおっぱいを揉んできているヒカリ。
乳首がツンと尖るくらい愛撫を施されてしまっていたと気付けたのも、悲鳴を上げるには遅すぎる位になってやっと。
じんわりとお腹の下から込み上げてくる熱があって、無性にそれが気持ち良くて、

『なん……で、ヒカ、リ……ぃ、ぃあ、あ、あぁぁ……そ、そんなところ……あっ、ああっ、ああ――
『うふ、見てお父さん。はやく、はやくぅ……って、もうアスカのここ。ほら、いやらしい涎こぼしちゃってる』

親友の女の子に秘所をまさぐられていたのだと気付くの自体、物の見事、遅きに失していた。
同性同士でもここまで完全に性器をくつろげて見せてしまうなど、ありえない。ましてそこにはもう一人、立派な大人の、男が覗き込んできているのだ。
アスカのヴァギナが濡れた桜貝色の粘膜を露呈しきり、隠された膣口がヒクヒク震えている様子まで見て取れる。
最も神聖なヒーメンさえ、じっとりと欲望を向ける父娘の眼前で晒し物になっていたに等しい。

『あ……あぁ、ぁ、あぁあ……』

それなのにはぁはぁと、息はすっかり熱く。純潔を守り抜くべき乙女にはあるまじき、陶然とした表情すら浮かべてしまって。
アスカは、迫り来ようとしていた悪夢の瞬間への備えが、まるで出来ていなかった。
ぼんやり、14歳の狭隘な処女にも安心できる同い年のほっそりとした指がくれる膣庭攪拌で、未通のスリットをトロっトロにぬかるませてゆくばかり。

『いやぁん、ヒカリぃぃ……』

ぬるり、ぬるり、ぬるり―― 。敏感極まりない秘苑に絶妙なタッチが続き、アスカはもう夢見心地で。
ずるずると、腰砕けの背中が一層ヒカリにもたれかかっていく。
焦点の定まらない目では、天井からスイッチ紐を垂らす電灯だけが明々とただ眩しく。下に同時に、黒い大柄な影が蠢いていたのにも関わらず、アスカは無防備にもその目を瞑ってしまった。
目を刺して、幾らかでも理性を呼び戻したかもしれない眩しさもそれまで。頭の悪いことにアスカは安心しきって、甘ったるい声を上げつつ、どうしてこんなに体中が熱く、そして気持ち良いのだろうと、不思議にばかり思っていた。
子犬のように鼻を啜って、抱きしめてくれている親友に訴えたのだ。
ひそやかな自慰にでは得られたことのないこの快感を、『どうして……?』と。
ドイツからやってきた美しくも愚かしい友人に、答えを返すこともなく。大人の気分を軽く味わうつもりで、用意された口当たりの良いアルコールに完全に酔い潰されたアスカの耳元、ふふふっと発せられたのは、

『ね? お父さん』

ヒカリが父を呼ぶ、生真面目なクラス委員少女のものとも思えない、邪悪な含み笑いだった。
火照りきった花びらの縁をつまんで、拡げて、しとどに潤った様子を指し示して。頃合い良しと。

『もう、焦らすのも……可哀想でしょう? アスカは待ってるわ』

そうして男の影は覆い被さってきたのである。

『ひうっ!?』

鈍い痛みが霞を吹き飛ばす。
けれども、念入りに準備されたアスカの愛液は、きつい入り口に侵入者を拒みきる逆にしか働かず、じりじりと体重を乗せてくる牡槍に却って潤滑を与えてしまっていた。

『うぁぁ、あ、ひっ、ヒカリぃ……!』

覚醒しようとする最中の混乱は、ただ一つはっきりとしていた友人の存在に縋るしか、無かったのだろう。
たとえその友人こそが、裏切り者であったにしても。

『大丈夫よアスカ。力を抜いて。……なぁんにも怖いことなんて無いんだから』

優しく言い聞かせて、耳朶を甘噛みしてくる。
そこに居たのは、アスカの知らないヒカリだった。
そのヒカリがちゅっちゅっと滲み出していた涙にキスをくれながら、両の胸の頂きで、指を動かす。
しこりきった甘やかさを失わないグミの実の乳頭を、クリクリ、くりゅくりゅ、くじり惑わせてくる。

焦りの欠片も見せず、親子二人がかりでゆっくり確実に進行させる処女喪失儀式だ。
その痛みに竦み上がり、力なくかくかくとシーツを掻く下半身とは裏腹。燻る愛撫の記憶に火を足された乳暈部分が、敏感な性感帯として充血し、乳首を膨らませていく。膨らんだだけ、またヒカリの丹念な愛撫で望まぬ歓喜を受け取ってしまう。

『あっ、あっ』

快美の上昇曲線は再びアスカの喘ぎを導いた。
悩ましい声が上がる。
ひくんと打ち震える細腰。しかしそれは今度は、苦痛にではない。
10代の硬さを残す乳房の先端で、鮮やかに色付いた部分が左右、螺旋を描かされるのと同調して。ゆるりゆるり、スレンダーなウェストが艶めかしく揺すられる。
その分、中年男の亀頭は、美少女中学生のバージン・ラヴィアにめり込んでいく。

『はっ、ヒッ、ひはっ……ハッ、はぁぁっ!』

小さく尖った顎を小刻みの息で跳ね上げて、アスカが矯正されていくのは、最も適切な破瓜への体勢だった。
大丈夫だとヒカリは請け合った。少女悪魔の囁きではあったが、確信でもあったのである。
なにしろ、ヒカリの父親はこれまでに三人、アスカと同じ年頃の実の娘からバージンを奪っていたのだから。
分けても末妹のノゾミはまだ小学生。遙かに堅く閂の掛けられていた処女膜に、姉二人を犯した経験を活かして大人のペニスを迎え入れさせたのだ。
こうしてアスカを犯せば、都合四人目。
姉や妹のアヌスをほぐす手技さえ覚えたヒカリを介添えに伴えば、アスカが潔癖に守り抜こうとしていた純潔を手折るなど、いかにも容易いことだった。

『あっ、ああっ、ああああっ!』

確かに甘く、啼きながら。アスカは啜り上げて大粒の涙をこぼし、その瞬間を遂げた。
他者の、碌に言葉も交していない中年男の重みが、一軸の剛直を通して彼女の内奥に―― 子宮に響く。
深々とした着底。間違いなく宝物だった筈の処女は奪われて、太い肉の柱が、開通したばかりの狭路にみっしりと詰め込まれたのだ。
ぷちゅりと、肉襞の隙間から追い出された蜜汁が、赤いものと共に内腿に伝う。

『ふふっ、うふふふ』

楽しくて仕方がないという表情で、ヒカリが女になったばかりのアスカを祝福した。
絶望に声も出ない友人に、対照的な喜悦を頬寄せて、

『覚えておいてね、アスカ。アスカのはじめての男の人、私のお父さんだって』
『あ、ああっ』

上目遣いには邪悪な達成感に口元を緩ませる父親と、ねっとり視線を絡ませる。
純朴そうな少女の顔立ちとはうって変わった、女の媚びがそこにあった。
ヒカリにとってはそう、父親はまた自分の処女も奪った『男』だったのだから。そうしてまた欲深にも、新たにアスカという飛びっきりの美少女を四人目の愛人にしようとしている男に、嫉妬と、興奮と、媚態を見せずにはいられなかったのだ。

『おとう、さん……。んっ、ンふっ』

ロストバージンに震えるアスカの肩越しに交す、父親とのキス。
たっぷりと互いの咥内でやり取りした後に掛かった、ねばつく架け橋が途切れると、親子の唾液の混ざった雫はアスカの頬に跡を残していった。

ほどなくして数分後、

『あうっ―― ぐ、ううっ、うっ、ああううぅぅ……!』
『おうっ、おっ、出る……』

さすがにまだ大人の男を根本まで受け容れきれない硬い膣だが、初物のきつさはえも言われぬ使い心地。お伽噺のお姫様にも劣らぬ極上の美少女ぶりもあって、それを手折ってやったのだと昂ぶる男が早々と精を噴き上げるのに、不足など無かった。

『ひぃぃ、ぃっ、いや、いやあぁぁ……』

ぐいと開かされた股の間から、切り裂く苦痛を従えて蹂躙してくれた肉杭が、アスカの胎の中に熱いものを吐き出していく。

『なにが嫌なの? あったかい精液がお腹の底にじわって広がっていくのって、素敵でしょう?』

その時までは親友だと疑いもしなかった女の子の、助けてくれるどころか、レイプを焚き付けまでした声だった。

『お父さんの精液が、赤ちゃんの時から全然変わらずに綺麗なままだったアスカのアソコに、初めての匂いをたっぷり染みこませてくれるのよ』
『せ、せい……えき……』
『そうよ。ここに、アスカのバージンなくしちゃった、オマンコに……ふふふっ、いっぱぁ〜い』
『あ、ああっ、ああ……ぁ、あああ……!』

青ざめてガクガクと眼を見開くアスカの下腹部に、その内側に潜る肉杭の感触を確かめるような、撫ぜまわす手を回してやりながら。ヒカリは下品な言葉を思い出していたようだった。

『……これでアスカとも、姉妹ってことになるのかしらね』

悪びれもしない興奮を宿した目を、あまりの受難のショックに放心する横顔から下へ下へと向けて。覗き込む先には、薄くアスカの亀裂にけぶる紅茶色の叢と、黒い父親の陰毛とがじっとり汗と体液とに濡れ、そして二色互いに絡みついている様子が。
その二人の結合部を、抜去に連れて溢れ出した白濁の粘汁がどろりと汚していっていた――



◆ ◆ ◆



そんな、悔しさしか残らなかった初めての時以来、一番多く裸身を横たえてきたのも、やはりこの饐えた臭いのする寝床だ。
今は酔い潰されて運び込まれるでもなく、自分の足で。あたかも主人を待つ妻のように、愛人のように、寝床に入って待ち受けている。
犯して貰う、夜を。

裸になった男に、寝間着をはぎ取られる。
次から次に下着も剥かれ、前日の湿りもまだ残したままシーツを取り替えたくらいの白い敷布団に、負けず白い全裸を晒す。
当たり前の顔で唇を吸われ、手荒に胸をあちこちをまさぐられ、組み敷かれるに至る準備の儀式として、フェラチオを要求される。

『よし、舐めろ』
『……はい。っ、あぁむ……む、ムゥフ、フッ……』

はじめの頃はよく歯を立ててしまって怒声を浴びていたのも嘘のように。アスカは直立するペニスに、顔は顰めても躊躇わずしゃぶりつく。
毒々しい赤黒さを示す肉竿を恭しく捧げ持って。舌を絡め、裏筋をカリ首まで丁寧に舐め上げ、亀頭をもごもごと含んで先走りを啜り、挿入の準備を整える。
片手落ちにならぬよう、その間は自分の性器にも指を這わす。
男の腿を跨いで秘部をこすり付け、ラヴィアとクリトリスに刺激を集めておけと言われることもある。
沁み出した愛液で男の太腿の上をヌルヌルにしてしまうまで、卑猥に少女が腰をくねらせる様を楽しむためだ。
時にはアスカの指の代わりに、こともあろうに男の足先を―― ラヴィアの花びらに迎え入れろと、足指での嬲られで濡らしておけと命じられることもある。
たっぷりと潤み、しとどに溢れさせたなら、そこがもう真っ当な理性を保っていられる最後になる。そう諦めて間違いない。

『寝ろ、足を開け』
『…………』

正常位が選ばれれば、覚悟するほかないのだ。
もう男のペニスが秘唇に押し当てられ、突き入れられてきても、痛みはない。
予感が昂ぶらせている通り、乱暴にピストンを見舞われれば見舞われるだけ喉が、裏返った歓喜を張り上げていく。
そんな、貫く逞しい肉棒の存在感に支配される、熱い一時が訪れるだけだ。

『どうだ? え、アスカ。どうだ、俺のチンポは……!』
『い、ぃい……』
『ええっ?』
『……いい、ですっ。ああっ、イイっ。あ、アタシのオマンコ……ずぽずぽっ、いいの、イイのぉっ』

押し潰される勢いの膣肉への叩き付け。華奢な骨盤の腰に怒濤の突きを受けて、あえなく、こねくり回される子宮が歓びに負ける。
そうして、セックス漬けで従わされる躰に実に正直になって。アスカは両の腕を男の背に回し、ひしと齧り付く。
まるで恋人にするように、熱烈に。
左右の細い脚をあられもなく贅肉の目立つ腰に巻き付かせて、全身で縋っていってしまう。

―― 少なくともそれは、あらゆる鬱屈を頭の中から追い出していられる一時ではあった。
時には、鳴りもしないネルフ支給の携帯に意識を縛られて一人で過ごす夜よりはまだしもと、そんな愚かしい考えに囚われることも。

「……馬鹿じゃないかしら」

雨はまだ、やみそうにもない。
昼過ぎになればどうだろう。濡れながら帰るのも億劫だなと、引きっぱなしのカーテンの隙間からアスカは、どんよりとした外を眺めた。
万年床になっている布団の周りには、くず入れがすぐそばに置かれていながら投げ損ねたティッシュが、幾つも丸まって転がっている。
綺麗に畳んでおいたままの、彼女の制服の上に飛んだものもあった。
廊下と寝室を仕切る戸襖には、男の換えのスーツが鴨居からハンガーに吊してある。
また、獣も同然に熱く狂って過ごした部屋の中では、うって変わって寒々と、雨音のうるささしか聞こえなかった。
廊下に出て階下を窺えば、当たり前のように誰かが上げる嬌声が響いているのかもしれないけれども。

「…………」

耳を澄まそうとして、不快げに顔を顰める。
空腹を抱えた胃袋が欲求していた。昨晩に消費した分のカロリーを補えと、育ち盛りの身体が文句を上げてくる。
最近、ブラジャーが少しきつくなってきた気がする胸は、直に寝間着を羽織っただけ。ヒカリからの借り物だが、直接胸の先に当たる肌触りは気に障る。
部屋の隅からのっそりと立ち上がりながら、一瞬だけ、着替えに鞄に入れておいた下着を取ろうかと考えたが、使ってしまうのはまだ早いかと思い直した。

男はどこへ行ったのか。
時間はもう、人並みの朝方を過ごすには遅い頃合いだ。休日なのだから、家族ででも出かけていればいい。
弱まりもしない雨足を背に、愚にもつかない希望だと自分で嗤う。
せめて、姉妹のどれかの部屋にでもしけ込んでいるのなら、上等だった。
ヒカリが煩く言ってシャワーを浴びさせていたなら、もっと良い。昨晩はたっぷり汗をかいたろう。自分だって、お湯を浴びてさっぱりしたいところだ。髪も洗わなければならない。
家事の一つも手伝わないと彼女がぼやいている末妹あたり、一緒に連れ込まれてでもいれば、時間はもっと掛かってくれる。
その間に、この時間になら忙しく台所で洗い物をしているはずのヒカリに言って、パンででも――
父親も娘もなくセックスをしまくっているような連中の癖に、よく似た顔で平然と『家族』をして、テーブルを囲んでいる中に混ざるのは、アスカには御免だった。



◆ ◆ ◆



アスカは最近、アルコールを覚えつつある。
今や自分のアパートを恋しく思うのは、隠れて心ゆくまで飲み潰れていられる、そんな場所であるが故なのだ。



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Original text:引き気味@北京之春
Illust:目黒腹蔵さん

From:エロ文投下用、思いつきネタスレ(4)