Convenience Harlem -Preparation-



01〜β版

車掌が流す、気だるいスローテンポのアナウンス。閉じるドアにご注意―― と、人混みを乗り降り二つの動きがかき混ぜて、そこでアスカは己の失策を知った。

「アイツ―― らぁっ!」

油断した。手遅れだった。
通勤客で満杯の車内には、既にギュウギュウに詰め込まれた仮初の定位置が出来上がっている。
シンジの姿はその人壁の向こうに連れ去られていた。

引っ張り奪われたのはすぐそこ。ひと一人分踏み込めばすぐに取り返せるのに、隙間の無い背広の壁はアスカに地団太を踏ませるばかり。
ついさっきまではがっちり背中に隠していた筈が、停車したホームに人が動こうとする僅かな混乱を突いて、さっとその周囲を取り囲んだのはアスカの敵。
マナが、レイが、山岸マユミが、親鳥の隙に雛をサッと浚う猛禽の集団のように、したたかに動いたのだった。

(シンジにまた変なことしたらーっ!)

タダじゃおかないわよっ! と、目を合わせるだけで死ねるような形相のアスカに、マナが返すあかんべ。

(へへーんだ。アスカさんはそこで大人しくしてて下さいねー)

これみよがしにシンジに抱きついて、すりすりと頬ずりなんぞして見せる勝者の余裕だ。
共謀する仲間の二人とシンジを囲み込んで、焦りまくる体にさっそくベタベタと手を這わせている。

(ま、マナっ……、綾波もぉっ! くっ付き過ぎだってば!)
(……満員だもの。仕方ないわ)
(だからってそんな、ああっ、お願いだから山岸さんも……!)
(しっ、仕方が無いことですから。ええっ、本当に。満員ですから―― 仕方ないんです)
(ああん、シンジったエッチぃ〜。マユミの胸にぐいぐいって、やらしー肩ぁ)
(ええっ!? し、してないって! ほんとに! ……ほ、ホントだからね、アスカっ)
(えー? だったら、わたしのオッパイにもグイグイしてくれてる、こっちの腕は何かなぁ?)
(わぁっ!? それはっ、マナが―― ! だ、だから放してってばぁ!)
(良いの、良いのよぉ? 照れなくっても。ここからなら次の駅までたっぷり時間があるもん。うふふ。泣いても喚いても逃がしゃしないんだから。ねー)

まるっきり痴漢そのものの理屈でシンジを耳まで真っ赤にさせて。何故かそれだけは騒がしい電車内で良く通る、小声の攻防。
絡め取ったシンジの腕に女子中学生の弾むような身を預け、過激に擦り付けている小悪魔達だった。
右腕のマナ。左腕のマユミ。そしてちょっと不満そうにしながらも、背中からしがみ付いているレイ。

(おおっと、カーブぅ! でもシンジは大丈夫だよね♪ エアバッグ完備だもん)

『ほら、やーらかいでしょ?』と、三方から人垣の傾き以上に寄り掛かる。
レイとそしてマユミも、あまりのマナのオヤジ臭さに一瞬素に返り掛けたのも振り払い、顔をピンクに染めて誘惑を続行するのだ。
それは三人係りの反則技ででもシンジをGetするぜと、恋の逆転を誓ったアスカを意識すればこそだったのだが、

(ぶぅっ、コロース!!)

当然アスカも、座視して済ますプライドじゃない。
ギリギリと奥歯を軋ませて、そんな鳶色の瞳がくれたにんまりの流し目挑発に、軽く沸点越え。

(退きなさいよぉぉ〜〜〜っ!!)

背広の壁から上がる非難も物ともせず。
殆どショルダータックル同然の勢いで肘撃ち突貫した、無理矢理過ぎる割り込み突破であった。
余勢をかって、今まさに『ぶちゅう〜』とシンジの唇を奪いかけていたマナの、その頚骨目掛けて突き出したエルボーは―― 、しかし素早く身を翻した仇敵の手のひらに、しなやかに巻き止められていた。

(ちょっと! アスカさん、今の急所狙い、かな〜りキツくなかったかしら?)
(チッ……!)

侮れないわね、このオンナ。さすが戦自仕込み……! と、本気で殺す気の次を練る、アスカの目。
何せマナのすぐ後ろでもって、『このアタシの目の前で良い度胸じゃない、シンジぃぃ……!!』な感じに、両手の花相手にフザケる真っ最中とシンジが映っている。
許しゃしないわ、お仕置きよっ! とか、既に最終目標を近眼的に入れ替え済みで、殺気だけでシンジの背中を怯えさせる。
すると――

「……えっ?」

そんな苛立つアスカの捉え切れなかった視界の端で、マナはするんと距離を詰めていた。
『ええっ!?』と、戦闘モードで構えていた筈の驚きも躱して、あっさり密着。
無防備なままの胸部に向かって伸びた手は、排除の一撃を加えるのかと思いきや、

「…………!?」
「むにゅむにゅっ、とな」
―― ッ、キャー! 何しやがんのよ、このヘンタイっ!!」

がばっと払い除け、胸を庇おうとするアスカ。
それも身動きの付かぬ満員の車内とあってはままならず、ブラウスを豊かに持ち上げる膨らみにへばりついたマナの手は、そのまま鷲掴みでわきわきと動いた。

「アンタ……!」
「……揉むわよ」

ぼそりとマナは告げた。
もがくアスカも、ここまでガードの中に入り込まれては有効打が放てない―― そんな鼻と鼻を突き合わせた真正面から。
淀みなく動く手はアスカの双つの隆起を頂上から覆い、異様な巧みさで揉み上げ続けている。

「な、なにを……んぅ、ッ? う、ううン……!?」
「揉むわよ、って言ったの」

マナの目付きは本気だった。
ちょっと笑顔になり掛け半端で引き攣ったような、本気でアレな、壊れた目付き。
笑ってるけど、笑ってねー! 笑えないのよー! と、布越しに発見された乳首もくにゅくにゅと、やたら上手に押し転がされてされてゾクゾクしつつ、アスカは流石に怯んでいた。

「動くと、邪魔すると、揉むわよ。アスカさん」
「んあっ、ハ、ぁ……あ、もうっ、揉んでるじゃ、ない……!」
「もっと凄い勢いで揉んじゃうって言ってるの」
「ひぃぃぃ〜〜〜!?」

大蛇に睨まれ竦んでしまった獲物ような、そんな不覚の表情を浮かべてしまって。執拗な愛撫を加えられ続け、とうとう同性の手でだというのに先端をツンと硬くしてしまった乳房は、呆然とマナに委ねたまま。
喧嘩腰に来たのならいくらでも強気を張り通せる彼女も、これまで14年たらずの人生経験では対処のしようを学べなかった類の、妖しい脅迫だった。

「あっ、あっ、あぁっ……!」

ブラジャーの輪郭を探り出す指先が、熟しはじめのバストをその円周ラインの麓から頂上へ、また上から下へと繰り返しのリズミカルさでもって囲み揉み、皮膚の泡立つ感触を送り込む。
時には人差し指と親指で作ったリングに乳首をギュッギュッと締め付ける。

悪い冗談のようだと、敵愾心と怯え、そして羞恥の混じった胸の揺らめきに惑乱するアスカに向けて、マナはやけに薄ら寒い笑顔で畳み掛けた。

「うふ、うふふふ。わたしも伊達にスパイの勉強してきたんじゃあないんだから。……良いわね、アスカさん?」
「なっ、何よ……」
「暴れると、周りのお客さんにも迷惑でしょう? 私も手加減するつもりないし、シンジだって見ている前よ」

言外に告げている。
逆らえば、一気に責め上げる。その前にあなたは耐えられるの? こんな大勢の中で醜態を晒してしまっても、それで平気でいられるの? と。
軽く足を動かしてハイソックスの内側をこすり上げたのは、そこから内股に続いた“上”への侵攻を示唆してだ。

―― ッ!」

たじろいだ。それでアスカは思考の袋小路に捕まってしまった。

レイとマユミに挟まれて、千々に乱れた呼吸でいかにも危うく身を捩じらせているシンジを、あくまで逆痴漢状態から奪取すべきか。
しかし、その前に天秤に掛けねばならないのは、避けられぬと予感するマナのテクニックに喘がされての、惨めな公衆陵辱だった。

耳に耐えない無様な悦がり声を張り上げて、何事かと振り返った通勤客達の前に、びくびくと崩れ落ちる絶頂姿を演じてしまう。
白痴じみただらしのない顔をして、マナの手に思うさま蹂躙された制服の前がボタンを全て外されてしまっていて、ブラジャーもたくし上げられた下で、ピンク色をした乳首がぴぃんと張り詰めているのを見られてしまう。
いやらしい痴漢がそうしたがるのと同じように、電車の中だというのにずらし下ろされてしまったショーツが膝に引っ掛かっている―― その奥に、マナの巧みな指でくじられ漏らしてしまった浅ましい汁液が、べったりと恥毛ごと内股を濡らしている様子を、床に腰砕けに倒れこんだスカートの乱れに覗き込まれてしまう。

―― きっとそうなる。

(あっ、あっ、ああ……。どうしたら……)

胸元に添えられたまま踊る手首のスナップに大きく乳房を揺さぶられながら、それへの抗議も忘れ立ち尽すほどに、アスカはマナの術中に陥っている。
その今も、シンジは、少女たち二人の唇に左右の耳たぶをねっとり舐め上げられ、吐息を少女のように切なくさせているのだった



 
Menu


Original text:引き気味
From:【妄想炸裂】思いつきネタスレ2nd【猥文投下】 & ハーレム物全般嫌いなんだけど@2ch