Daughter's Wife from Mercury
Original text:引き気味
『 発情、娘の嫁の熱い肌 』
「それじゃ、いつも言ってることだけど」
あまり無茶はしないようにと言い含めておいて、ミオリネは慌ただしく出掛けていった。
夫婦の間柄のというよりも、それはスレッタの母親か姉かのようではあった。
ふぅ――と、大きく胸が上下するような息を吐き、スレッタは一人になった寝室で横たわりながら天井を見上げる。
体も少しずつ動くようになってきてはいた。
出来るならば玄関までぐらいは出て、仕事へ行くミオリネを見送りたかったのだが。
けれども、そうしようとする都度(無理でしょう?)と目で窘められてしまうのだ。
そのことに納得してしまう自分が居て、それは今朝も変わらなかった。
「ミオリネさん、前は私より全然体力無かったのに……」
抱きしめた時のその華奢な体つきの感触を思い出し、頬が熱を持つ。
現役の頃の父親を思わせる黒いスーツに着替え、仕事向けの軽いメイクまで済ませたミオリネはいかにも出来る企業人のという佇まいであり、凛としたそこにスレッタと昨晩交わした情熱の名残りは見付けられなかった。
止め処なく胸の奥の深い部分から、そして下腹部の淫らな場所から湧き上がる衝動に突き動かされて、明け方近くまで互いを貪りあったというのに。
その挙げ句に寝坊をして、慌てふためいていた痕跡すら欠片も窺えない取り繕いぶり、或いは切り替えっぷりだった。
そして彼女自身の方はといえば、決まった時間に縛られていない療養中の身なのを幸い、更に昼近くまでを二度寝に当ててやっと起き出す元気を取り戻せるのである。
同居する家族にしても、母親は似たような療養生活。GUNDフォーマットを使い続けた後遺症による容態は安定しているが、スレッタ以上に神経を痛めてしまっていることもあって、いつもその眠りは長く、深い。
実体を持たない姉たちは会社経営のサポートをするのだと称してミオリネの携帯するデバイスに意識を宿らせ、出払っている。
自身も不自由な体であるスレッタが起きて片付けなければならない仕事は、事実上家の中に皆無なのだった。
「……家のこと、まだほとんど手伝えてないの、お義父さんにも申し訳ないんだけどな」
そうやって彼女が安心を抱いていられる最大の理由が、舅であるデリング・レンブランの存在だ。
表舞台から退いた後、実は母の古くからの同盟者でもあったらしいデリングはこの何もない田舎の土地へ共に移ってきていた。
同じ敷地に離れを構えて一人起居しながら、社長業に忙しいミオリネの留守についてスレッタ達に何くれとなく手を貸してくれている。
その謹厳な横顔。低いバリトンの、男性らしい声。
「…………」
スレッタはまた一段と増して頬を熱くさせた。
ひどく寝乱れてしまったままの裸に掛けて貰っていた寝具の下で、もぞもぞと自分の体を持て余すように身じろぎをしようとした――そのタイミング。まさか見計らっていたわけでもあるまいが、
「――ッ!?」
リビングとの間仕切りを兼ねた引き戸はスレッタの負担にならないように開け放たれていたから、ノックの代わりに壁をコンコンと小突いて合図にしたのだろう。
ゆったりとしたオリエンタルな普段着姿でいるデリングが寝室の入り口に立っていた。
「朝食の用意をするが君はどうする? 彼女はまだ眠っているようだから、そのままにさせておいたが」
「ぅえ? えっと、その……っ。わたし、目は覚めてたんですけど。朝の、朝ごはんはどうしようかなって」
答えにもなっていないことを口走りつつ、スレッタは気付いた。
慌てて姿勢を起こそうとしたものだから、体を隠していたブランケットがずり落ちてしまっている。
彼女の裸の胸が、膨らみの先端に至るまで完全に露わになってしまっていた。
褐色がかった素肌にミオリネが昨晩付けた愛撫の痕跡すら、デリングからは見て取れてしまっていただろう。
認識した途端の羞恥の爆発に目がくらむ。
あたふたと手を伸ばすものの、そんな時は余計に丁度良い動かし方が分からなくなってしまう指先がブランケットを掴み損ねてしまう。
何度も何度も、焦るほど増々下手くそに、カーッと顔中を赤くさせながら。
(……あれっ?)
しかしパニックになりそうになっている片方では、脳裏の片隅から淡々と自分自身を眺めている目が、丁度エアリアルの操縦レバーを握っていた時と同じに、こう冷静に言ってもくるのである。
――そんなに慌てる必要、あるのかな?
どうせ“今更のこと”じゃないかと、どこかあの小さな姿をした姉、エリクトのように意地悪めいた響きを伴って。
「……ふむ」
ゆっくりとベッドまで歩み寄ったデリングが、軽く身をかがめて手を伸ばす。
スレッタは思わず身構えたものの、舅である老齢の男は彼女に代わって毛布を直してやっただけだった。
だとしても、老いたとはいえ男の心境がまだ木石の域にまで至っていないことについては良く知っていたし、若いスレッタの――軽い身じろぎだけで弾むようですらある瑞々しい乳房が眼前で剥き出しになっているのに、決して無関心でなどいない、そんな視線を向けていたことにも、彼女はちゃんと気付いていた。
「……体を冷やすのはな」
取って付けたように声を掛けたそれが、スレッタと同じで黙ったままでいる居心地の良くなさに困っての、誤魔化そうとしただけであることも。
つまりは、厳しそうでいるわりに可愛いところもある人なのだという、スレッタにとっての理解なのだった。
「あの……」
頬の火照りは収まらない。
真正面から顔を向けるのは避けるようにしながら、ちらちらと横目に様子を窺いつつ。スレッタはつい口にしてしまっていた。
「わたし、まだシャワーも浴びてなくて」
その、つまり、ええと……と要領を得ないのをデリングがじっと黙って聞いているのは、その先を待っているからだ。
ミオリネの仕事についての相談に乗っている時もそう。最終的には自分で解答に辿り着くのに十分なだけの道筋を示して、後は自分で決めた答えを娘が口にするのを待っている。
強引なようでいて、それだけではない。
学生時代のミオリネが何かにつけ口汚く罵っていたことがあり、面識が少ない内は近寄り難い相手でもあったのだが、今や家族皆が随分と世話になっていることもある。実際のところは優しい人だったのだなと、心を許すに至っていた。
そのデリングが、義理の娘の醜態に見て見ぬ振りをして立ち去ることも出来た――その選択をせず、介護の体裁をとってみせるなどという格好の悪い真似までして、控えめに“持ち掛けてきている”のだ。
行動の意味を正しく理解して、胸の鼓動が一層早まるのを自覚する一方、
「ミオリネさんの……ミオリネさんとの、その、匂いとかも残っちゃってたりするんですけど」
デリングのその後ろめたさを共有することに、それがとうに自分の決めてしまっていた選択だったことに、スレッタは不思議と躊躇が浮かばない。
――それで良いなら、良いです。
唇がそう言葉にしていた。
何かを掴もうという些細な動きをさせるのにも不自由するスレッタの体だが。今、心からの言葉だと伝えるのには、指先を伸ばしてデリングの手と触れ合わせるだけで良い。
「私は、その――OK、ですからっ」
結果として意気込んでのようにすら聞こえる、思いの外の強い調子で告げていたものだから。スレッタはまた恥じ入り、俯いてしまったのだった。
◆ ◆ ◆
スレッタの手を握り返した後、自分で掛け直してやったばかりのブランケットをまた剥いでいきながら、デリングは面白そうに言った。
「若い娘なら、もう少し舞台劇めいた言い回しを好むかと思っていたのだがな」
「恋愛小説とかメロドラマみたいなのは、私ちょっと……」
あらためて男のその間近からの目に晒されるスレッタの上半身には、ミオリネが残していったキスによる鬱血の跡が目立つ。
軽く汗ばんだ小麦色の素肌に点々と花びらを散らしたかのそれに飾られ、女性としてまさにここから豊かな母性を爛熟させていこうというふくよかなバストが、乳首を頂きにふっくらと並んでいて。
(あっ……)
感嘆めいた眼差しに男の欲望が強まったのを感じたスレッタだったが、ぎゅっと肩を縮こまらせこそしてみせても、隠そうと動きはしなかった。
(だって、お義父さんも男の人なんだし。男の人は大きいおっぱいが好きだって、ミオリネさんもいつも――)
やはり、比べてしまったのだろうか。
スレッタとて、そこは察しもする。
なにしろ他ならぬミオリネが度々羨ましがってみせたり、からかってみたりで、二人の時間の話題にすることが多い。
今のデリングにとって普段最も身近に接している若い娘達が彼女らであって。そうであるからこそ、仮にそのスレッタとミオリネとでの発育の違いを咄嗟に想起してしまったからといって、仕方の無いことなのだろう。
余計に“そそる”眺めとして映ってしまったとしても、それは自然な心の動き。
むしろ、スレッタはときめいてしまった。
(私の体を見て、良いって思ってくれるなら)
さっと足元まで走らされたデリングの視線。足の付根のその部分まで検分されてしまったのだと分かっても、彼女はもうじっとしたまま。何もかも受け入れても良いという、そういう心境なのだった。
「本当のことを言うと、私も……誓いあった二人のロマンティックな告白とか、お誘いとか、憧れるんですけど。その、ミオリネさんが」
「……あれの母親は、軍人の私に無粋が過ぎると良く腹を立てていたものだったが。ミオリネは違うか」
「頑張ってみたつもりのセリフ、似合わないって笑われちゃいました」
耳に心地良い低い声の囁きと共に与えられた優しい口付けに、青い瞳を閉じて。『んン――』と甘えた鼻息を漏らして応じていたスレッタは、そこだけは唇を尖らせるようにこぼした。
「ふぁ……ぁ……」
挨拶程度のキスからそのまま、首筋を味わうかに舌が這わされていく。濡れた、熱い感触。
緊張して身構えている分だけ、より敏感に感じ取れる状態になっている素肌の上に。舅である男の唇と舌、甘咬みを使った愛撫の軌跡がじりじりと刻まれていく。
それは昨晩のミオリネの愛撫の痕跡を、そのまま追跡している風でもあった。
「ぁあ……ぁ、あぁ……っ」
到底落ち着いてはいられなさそうな素足の先が、短い指を丸めさせたり、反り返らせたり。
その焦れったいまでの攻略が乳房にまで及んだ時、吐息を小さく震わせながら待ち構えるスレッタの乳首では、敏感さがこれ以上ないという状態まできていた。
男と女の体温に挟まれる最先端にある乳頭の部分などはピリピリと、ヒリついている位にまで。
今ならただ摘んだり舐められたり、軽く可愛がって貰っただけで凄く気持ち良くなってしまえるだろうと分かるだけに。吐露してしまうなら、早くそこへ進めてほしいとすら。
(ううっ……。ミオリネさんになら、もうそのままおねだりしちゃうんだけど――)
こうなってしまえばいよいよ直視してしまうのは恥ずかしすぎる、すぐ間近のそこに来ているデリングの深い人生の年輪が刻まれた顔が、どんな表情でいるのか。気になりつつも目を開けてしまうのは躊躇われて。
早く、早くと念じ、ぎゅっと閉じ合わせることで色々なものを我慢している瞼と、それと両脚に、一層強く力を込めるばかりだった。
それでも心臓の暴れる一鼓動ごとに(ジン……)と疼きが走る乳首は、ミオリネとのセックスであればもうよっぽどの行為まで進んだ時と同じぐらいに固くなってしまっている。
(ジン、ジンッ……)と疼いて疼いてしょうがないものだから、それが嫌というほど分かってしまう。
(ああっ、あっ、おっぱいの先っ、私これもう……どうしよう。はしたなさすぎるって、思われちゃうんじゃ)
「ぴったりと同じ場所にだけ跡を残すなら……どうだろう。気付くだろうかな?」
膨らみの麓を手始めに一つ一つ意地悪なぐらい丹念にキスマークを追い、確かめるかの指先になぞらせていたデリングがまた一つ、きつく痛い程に吸った。
「ふぁああっ!?」
「ここは歯型か。所有欲が強いのか、それとも君が強くされるのを気に入っているのか……」
クッ、と前歯を使って、皮膚表面より薄くの肉を食まれる。
与えられた感覚は純粋な痛みだ。
それでもそこでミオリネの残した愛撫を上書きされているのだと思うと、スレッタの背筋をゾクゾクと痺れさせるものがある。
そして同時に、どれだけたくさんミオリネは跡を付けていたのかと。
(早く、ああっ早くおっぱいの先、どうにかして欲しいのに――!)
「ああっ、はぁぁぁっ。お義父さ――っ」
「……気持ちよさそうな顔をして。悪戯程度のつもりで、これぐらいなら痛がるだけかとも思ったのだがな」
元はメガコングロマリット総裁という仰々しい肩書を持っていた老境の男は、まだ自分の服を脱ぐ素振りもみせていない。
ミオリネのようにあれをして欲しい、どこをどうして欲しいといった要求を、まだスレッタにしてきてもいない。
男と女がする肉欲の交わりという段階には、まだ全く本番から遠い。だのに一方的に気分を出し、加速さえさせていっている彼女ののめり込み具合が過ぎているぐらいですらある。
自分の娘と歳の変わらない若い肢体に半ば覆い被さる体勢になっていても、その鍛え込まれた体格で押し潰したりはしないよう気を使っている様子であって。
見方によってはスレッタをお姫様か何かのごとくに扱い、丁寧に丁寧に奉仕している風にも思えてしまえようか。
ことに、あまり積極的に迫ってこられても苦手に感じるだけの辺境惑星育ちの感性では、こういうデリングのことはつまり紳士的なのだなと、それこそ夢見がちな捉え方までしてしまう程だった。
「さて」
何箇所にも甘い疼痛を刻まれたスレッタの乳房を片側、優しげにさすってやりながら。もう片手をシーツに振り乱された赤い髪が広がる横で突いて体を起こし、いよいよデリングが見下ろすのは――肌の小麦色をより濃くした丸い乳暈が乗った双つの膨らみ、それぞれの先端であった。
「ぁ、ぁあ……」
寝室の窓はミオリネが大きくカーテンを開け放って行ったそのまま。
眩しい朝日が同性同士の夫婦が使っているベッドの枕元にも射し込んでいて。
スレッタがずっと目を閉じ合わせていたにしてもだ。募るばかりの淫らな期待を押し隠しきれず、慎ましやかな悶えぶりを見せていた可愛らしい顔へは、長身の男の上背が日差しを遮っていた――それが移動したのだ。デリングが姿勢を変えたことは容易に伝わろうというもの。
だとすれば、いよいよと。
じわりじわりとした口唇愛撫で残すところはそこだけと追い詰められてきたのだから、予期されるものは明白だった。
当然、スレッタの漏らす吐息は熱く、喉は生唾を飲み込んでわなないてしまう。
(ああっ、やっと……!)
そして勿論、デリングも気付いていた。
「よほど感じやすい躰をしているようだが……。男として甲斐のあると言うべきか、それともあれを良くやったと褒めてやるべきか」
今のスレッタの胸の双丘には、どれだけ浅ましくデリングの愛撫を求めてしまっているかを物語る尖った乳首が、ツンと突き出してしまっている。
加えてデリングがとっくに承知しているのは、力みきった太腿でギュッと挟んでいる彼女の秘処からの――汗ばみとは種類の違うぬめり。
自覚してはいても、ずっと年上の異性相手に直面を強いられる口ぶりで指摘されれば、スレッタとしてはまた体温を上げて身を揉むより他ない。
「そんな……恥ずかしい、です」
その場所までは流石に、いくらでも見られればと覚悟を決めてしまえるものとは違う。
さりげなく脚を閉じ合わせることで義父の視線からも庇っていたつもりだったが。身じろぎをする都度どれだけ隙を晒してしまっていたかは、分かったものでなかった。
「だが、男としてはな」
口元を緩めて言うそれは、デリングの正直な気持ちだ。
「私なりに大事にしてきたつもりの娘を、どんな若者が勇ましく勝ち取ってみせるのかと思っていたが」
意表を突かれた。
そう苦笑したデリングは、その上でと面白げな口ぶりを作ってみせた。
「妻として娶られるでなく、嫁を掴まえたのだと連れてきて。それが君のような美しい娘だ」
数年に渡る療養生活で随分と筋肉が落ちてしまった。それでも尚、豊かな胸の膨らみと無駄な肉のないウェストのくびれを両立し、しなやかに伸びる手足とで調和の取れたスレッタの肢体は、男の目を強く魅了する。
ミオリネとの結婚生活がそこに愛する者と交わす女性としての歓びを教え、少女の時期を脱した彼女にしっとりとした大人の艶やかさをも備えさせたのだろう。
或いは長い療養生活による儚さもまた、一側面の魅力となっていただろうか。
「そうして、その美しい嫁とだ。いつの間にか私は、こんなことをするようになっている」
今、レンブランの家に迎えることをデリング自身が認めた娘は、マリッジリングを交換して互いに誓いを立てたミオリネにではなく、舅たる彼の前に、不貞のと言うしかないあられもない姿を見せてしまっている。
官能の昂りも明らかに。愚かしいと思いつつも愛おしい、奇妙に純朴さを失ってはいないしどけなさで。
貞淑さを問うならば完全に失格。欲情あからさまな涎蜜に濡れそぼつ赤いアンダーヘアさえ、むっちりとした太腿の狭間に垣間見せながら。
「ああっ、その――っ。こ、こんな……いやらしい嫁で、わたしっ。す、すいません……」
「謝る必要は無い。いや、あれには勿論、謝っても済まされることではないのだろうが。そうさせたのは私だ。私自身だ」
「でも、OKですって。そう言ってお義父さんを受け入れてしまったのは、私なわけですし……」
「自慢の我が子にも負けない美しい娘を、こうやって抱ける」
デリングはわざとらしくスレッタの胸を鷲掴みにして、加減無しかという荒っぽさで揉みしだいてみせた。
「あッ……あんっ」
老境のかさついた掌には吸い付くほどの若々しい肌をした乳房だ。五指を動かして揉みたてる水蜜桃の果実は手頃な量感でたわみ、デリングの手指に魅惑的な弾力を伝えてくる。
散々に焦らされた乳首を乳肉の丸ごとと一緒くたで急に責め立てられたスレッタは、軽い狼狽と素直な歓喜の入り混じった声を上げた。
「あはぁ……。ぁ、お義父さ……っ」
「若い嫁の味を、老いさらばえてから堪能できる果報者なぞ、スペーシアンとアーシアンの両方を見渡してみてもそうは居るまい」
軍人上がりらしいと呼ぶものなのか。ともすればスレッタを粗略に扱うかの「嫁の味」などという野卑な物言いをしてみせる。
これを普段からいやらしい下心ばかりが目立つ老人が言い放ったのなら、スレッタにも嫌悪感が立っただろうし。間違ってもこうして義理の父親である男に諾々と躯を開いてみせることなどあり得なかったわけだが。あえて露悪的に振る舞ってみせた理由がスレッタのミオリネに対する罪悪感への気遣いだとするならばと、そう彼女に感じさせるだけの関係を築けているからこそなのだった。
「その内刺されるのかもしれんが、男なら文句など出んよ」
「わたしも……後悔はしません」
きっと、と。そう告げるスレッタの目は潤んでいて、まっすぐにデリングの顔を見上げていた。
「……人生とはそういうものだな。折々で、夢見もしなかったような場面が開けている。考える筈もなかったような選択を、選び取っていることがある」
思うところは色々だが、悪い気はしていない。
そう言って。日頃は見せない薄っすらとした笑みを浮かべたデリングがまた彼女の唇にキスを落としていったせいで、『ひゃ〜っ!?』と妙な声を上げて、スレッタは身をよじらせてしまったのだった。
(それに、美しい、美しいって三度も。お義父さんが私に……!?)
学園に通っていた頃は名前を知るだけの雲の上の存在だったデリングである。辿ってきた道をどう評価するべきかはともかく、人生の先達として深く尊敬もしている人物にこうあけすけに称賛されれば、スレッタは弱いのだった。
そして、このレンブラン家の新妻については法の認める良人たるミオリネにも遜色ない度合いで理解を得るまでになっているのが、共に暮らす中でただ一人の男との現状。
性格や物事を判断する時の傾向。病状と、その現在の回復具合から家族として留意してやるべき日々のポイント。食事に対する嗜好に加え――挙げ句は、その若い肢体のどこをどう刺激されるのを好むのか。
「あっ、あっ、んあぁっ。気持ちいいです、お義父さん……ン」
老いても未だ見るからに剛健そうな肉体を維持しているデリングが、そのがっしりとした胸に抱き寄せ、支えてやり。うって変わって優しく丁寧にバストを撫ぜ回してやりはじめると。
たちまちスレッタは安心しきった顔で身を預け、蕩けるように喘ぎを洩らすのだった。
「ぁあ――っ。はぁっ、ぁああンン」
大好きな食べ物は後に残しておくタイプの義娘は、舅の太い指の腹にくりくりと乳首を転がされるほどに細い首を、華奢な顎先を、左右あちこちの方向へ揺らがせた。
「なんだか……っ、っッ。お話に聞いてたより全然……女の扱いに慣れてるみたいなっていうか。ぁあ、あっ、若い……頃、すっごくモテてたんじゃ……ないですか?」
おっとりと微笑んでいても周囲を和ませる娘だが、困りきった顔で眉尻を垂れ下げさせていてさえ愛嬌がある。
それに似ていたが、今の彼女は甘美な官能に切なさが募る一方だという、そこに追い詰められているだけだ。
「お義母様が……生きてらっしゃったら、そのあたり是非聞かせて欲しかったような――。でも私、絶対怒られちゃうし。あンっ!? やぁンン……ンッ」
長く伸ばしてもまだ癖っ毛が跳ねる赤い髪を、ざわざわと。いよいよ悩ましくスレッタは身を捩った。
発情しきって尖る勃起乳首を指の腹で潰し、時には犬歯を立てるようにして甘くきつく吸いたててもやり始めたデリングは、もう一気呵成に追い上げることにした風である。
「そもそも私なんか……っ、お義父……さんに、相手にも……ぉ、ンンッ!? されてなかったと思う、ん、ンンッ! ンンッ!? ンぁアアァァッ。やだお義父さん、そこぉ〜!!」
見逃してもらっていた下腹部の先にもその攻めは及んで。
髪と同じ色をした叢を掻き分けられてまさぐられた若嫁は、舌を突き出して大きく叫んだのだった。
◆ ◆ ◆
「――どうだったろうな。今からでも墓の下から生き返ってきてくれて……私のこの度し難さを知ったとしたなら」
あっけなくビクッ、ビクッと女の悦びを極めて、寝室とリビングを突き抜けて響いていそうな嬌声を張り上げたスレッタの、荒い息遣い。
それが収まるまでを、額に張り付いた髪をよけてやりながら見守るデリングは、苦い呟きをこぼす。
「それはそもそも、あれであっても同じことか。こうやって家を空けがちなのも私を信頼してくれるようになったからだと――最初から分かっていたことなのだがな」
「……ごめんなさい」
喜悦の涙を滲ませるどこかぼんやりとした瞳で見上げて、スレッタは老いた横顔に手を伸ばしてやるのだった。
「思い出させてしまうようなこと、言うべきじゃありませんでした。なんだか、頭が変になってて」
「いつであっても忘れるべきではない事だろう。私は罪を犯している。妻を、娘を、そして君を裏切ったのだ」
「いいえ……。私、浮かれてしまってたんです。……お義父さんが――デリングさんが」
言い直し、泣き笑いめいて顔をくしゃりとさせて、スレッタは続けた。
――素敵なひとだから。
それは告白だったのか、それとも懺悔のつもりだったのか。
デリングの頬に添えられているスレッタの左の手のひらには、銀のリングが薬指でにぶく輝いている。
おずおずと慰めてきているのだろうその温かい手のひらに、自らのそれを重ねて。デリングは暫し瞼を閉じ、そして微笑んだ。
「悪い娘だ」
「わたしも、そう思います」
義理の娘と見詰めあった顔は幾らか安らいで――今日まで年輪を重ねてきた以上に背負い込んでいた重くのしかかるものから、解き放たれた風でもあった。
あくまでも幾らか。幾らかではあるが、スレッタの目に映ったところ、確かに。
「……やっぱりお義父さん、若い頃は女の人が放っておかなかったんじゃないかなって思うんですよね」
互いの息が届く距離でじっと見つめ合っているのに照れた感じに、先に目を逸したのはスレッタの方で。
彼女は力の入らない手でデリングの胸を押し、一旦体を離してもらうと、改めて舅である男の前に一糸まとわぬ全身を寝そべらせてみせた。
太腿の付け根を隠そうとするのも止めている。
いっそ軽く下肢を開いて、膝も少し持ち上げるように姿勢を整えて。
どうぞとシーツの上に広げた両腕で、男を招こうというサインまで示す。
もはやデリングの視線を遮ろうという一切が取り除かれている若い秘処には、先程とうとう外側にまでたっぷり溢れさせられてしまった愛蜜に、しっとり濡れた赤いヘア。そして、その下でそれこそ普段は固く閉ざされている秘唇までもが、淫靡にぬらつく割れ目の部分を覗かせていて。
陽に良く焼けたような肌色が更に濃くなった媚肉は、乳首と同じザクロの果実めいた色艶。白い肌をしていたデリングの妻とはまた趣が異なるのだけれども、やはりそこは歳若い娘である。初々しさも残った清楚な佇まいの女の花びら、そっと息を潜めている風でさえある無垢な膣口を目の当たりにすれば、今度は気が逸るのはデリングの番だった。
「……そうか」
「はい」
男としての獣欲を漲らせる気配を見せたデリングに、スレッタは嬉しそうに顔を綻ばせた。
人付き合いの仕方が不器用な辺境育ちで、飾らない笑顔が似合う娘だが、自らも服を捨てて覆い被さろうとする大柄な体躯を受け止めた表情は、こぼれ落ちんばかりの淫蕩な期待に満ち満ちていて。
「あっ、ン……」
念の為の前戯で既に十分に潤み切っているのを確認したデリングは、間を置かずに自らの屹立の先端を押し当ててきた。
「行くぞ」
「はい……っ、ッぅンンン!」
窮屈な膣道をデリングの豪壮さに抉り抜かれる時、スレッタはいつも悲鳴じみた声で身悶える。
(やっぱり、お義父さん大っきい……ぃ。ああーっ……!)
男性相手の経験でこそ無かったが、別にセックスに不慣れだったというわけでもない。
ただ、ミオリネとの普段の行為は器具を使ってで。それはまだ二人が少女との境目の時期に居た頃から使用している――あくまでお互いの体に無理のないサイズを選んだ物だったから。
その意味であまり負荷の掛かるものでも無かった、さして拡げられてもいなかったスレッタの膣を、ぐいぐいとデリングが押し開いていく。
これこそが本当に“犯される”ということなのだなと感じさせるのだった。
夫婦の誓いを裏切り、仮にも父親である男性と密かに行う、この二重に背徳的な肉体関係。それが何回目になろうと。いつもいつも最初に挿し貫かれる瞬間は、はっきりと違いを思い知らされるその衝撃で、目を見開かされる気分なのである。
そしてデリングとの性交で教えられるのは男性のその逞しさだけでもない。
「むっ……、うっ、うむっ――」
「ああん、あっ、ぁあああッ。ああんンン……! お義父さんっ、お義父さんッ。わたし、わたしの……っ、気持ちイイがいっぱい、いっぱいになって……!」
義理の娘の汗まみれになった裸身を完全に組み敷いて、デリングは荒々しく抽送を繰り返す。
愛らしい喘ぎ声で繰り返し繰り返し父と呼ばれながらのこの交わりは、デリングほどの男にも、ともすれば妖しく本物の近親相姦であるかのような錯覚を覚えさせる。
そんな倒錯した快感があった。
「おおっ……!」
それがどの種類の愛情なのか判然としない熱情が込み上げて、年甲斐もなく夢中になってしまうのだ。
老境に手の届こうという男からすればほんの小娘でしかない若嫁と、貪欲の勢いで唇を吸い合って舌を絡め、いよいよ力が漲っていく屹立で女の体内のやわらかな肉を抉り続けるのだった。
「お義父さん、お義父さんっッ。わたしっ……私は、カラダは、気持ち良い……ですか?」
スレッタはあられない開脚ポーズでそれを受け止め、細腰を藻掻かせる。
「なにを、今更……っ。これだけ私を、溺れさせておいて……!」
吠える大声で返された言葉があまりに誇らしくて。スレッタは両足をデリングの腰に絡めさせ、尻尾を振るようにヒップをくねり踊らせた。
「あん、ああン! お義父さんッッ!! 好きです。大好きです……!」
濡れ濡れになった媚唇に義父のペニスを懸命に懸命に食い締めさせている、その内側奥深く。子宮にズンズンと届く滅多打ちのお陰で肉体は灼熱を増し、歓喜、喜悦の愛蜜は垂れ流しになる一方。
昨晩のミオリネとの交歓でも、ここまでシーツを汚してしまっていただろうかというぐらいだ。
そして力いっぱいに抱きしめてきて、一心にスレッタの躯を貪ってくれている舅への愛おしさ。
気持ちと肉欲とが両方幸せにないまぜになって、渾然一体の巨大な官能へと爆発していく。
遂にはスレッタの脳裏が真っ白なハレーションに塗り潰された。
「ダメっ、もうダメです……! わたしイクっ、イッちゃいます……っ! ンあっ、アッ、アアアッッッ!!」
きゅっと縮まった瞳孔には見えない筈の火花でも飛び散っていたのか。『お義父さん……ンン――ッ』と男を呼んで背を仰け反らせた若い肢体の、その膣肉の甘美な収縮に絞り出されるようにして、デリングも思う存分に精を放ったのだった。
「おぉ、おおおっ、スレッタ……!!」
実の娘が大切にしている、女同士の結婚をした相手。その膣内を、白濁のエキスに溺れさせんばかり大量に、とめどもなく。深々と突き刺した牡の器官からの噴出をこれでもかこれでもかと、何度も腰を押し付けて。
「ぁ、ぁああ……ぁ――。きもち、いい……」
そうして、スレッタは可憐な顔を絶頂後の虚脱にトロンと揺蕩せつつ。ミオリネの使う器具では幾ら抉ってもらっても与えられることのない、赤ん坊だって彼女に宿らせることができる熱情そのものの暖かさというものを、デリングの注ぎ込んだ射精によって、うっとり噛み締めていたのである。
From:エロ文投下用、思いつきネタスレ(7)