籠の中の子兎

Original text:引き気味


『 引きこもりなレイが色々いらんこと教えられる話 』


「碇君……」
 おずおずと。『あ、あの……』とでもの、物問いたげな顔で。ラップトップを置いた机に向かう少女はまた、肩越しで振り返った。
「彼女――アスカさん、ほんとうにこれを?」
「そうさ。だから言ったじゃない、綾波。こんなこと、なんってことないんだって」
 彼女が実のところ、本当に確認を取りたがっているのは何なのか。それをよく理解できていた背後の少年、シンジは、だから二の句も返せないように満面の笑みで断言してやるのだった。
 後ろから華奢な肩に手を置き、色々な意味で個性的だとシンジが気に入っている一つ、白ウサギを思わせる赤に透き通った瞳を、じっと見つめて。
 彼女、シンジの家の以前からの居候である綾波レイは、その笑顔に弱い。
 強気に出られても拒絶できない。

「そ、そうなの……」
 まともに目を合わせていられなくなったらしく俯いてしまうと、レイはそそくさとモニターへ向き直った。
 夜半。他の家族は寝静まっている頃合いだ。
 こっそりとシンジが訪ねたレイの部屋は明かりが落とされたまま。
 頼りない常夜灯の他、唯一の光源である机のモニターからの光にぼうっと浮かび上がる、まっ白いアルビノ少女の横顔。
 そこがしっかりと羞じらいの色に染まっているのを認めて、可愛いよと、シンジは肩にやっていた手で頬を愛撫してやった。
「んんっ」
 くすぐったがったる風情で身じろぎしても、決して嫌がっているわけではない。
 生まれつき色素に欠けた髪のショートボブは、頬に掛かるくらいの長さ。サラサラと指先でかき分けるようにして隠された耳たぶを暴いてやると、火照りはいよいよそこにまで及んでいるのだった。
 照れているのだ。レイは既に告白をしていた通り、シンジのことが大好きなのだから。
 それにもう一つ。シンジの笑顔から逃げてはみたものの、また直視してしまえばモニターの中の光景はあまりに刺激が強すぎるのだろう。
 四角いモニターフレームの中には、レイ達と同い年程度と覚しき一人の少女が、黄色い帽子を被った他は何も体を隠さないヌード姿で映っているのだから。

『…それじゃ、その……』
 ボリュームを絞った音声は、ただでさえ雑音が酷い。
 かろうじて、映っている彼女が『……フェラチオ、は、はじめるわね』と言ったのが聞き取れた。
 卑猥な言葉を口にしようとする、半ばが隠された羞じらいの貌。カメラはそれと、対称的に見事すべて曝け出された胸や腰周り、跪いた全身を、順繰りに映していく。
「このひと……」
 レイが思わずといった様子で呟く。
 素晴らしく魅力的な躰をした少女だった。
 あとほんの一、二年。高校生にもなれば大人と殆ど変わらない体つきになるだろう裸身は、まぶしく白い。
 手足はまだ伸びきっていないが、無駄な肉は一切付いていない。すらりとしたシルエット。
 レイもスレンダーな方だが、まったく外出をしない生活から、ややもすれば痩せすぎと見られるきらいがある。
 彼女と比べたなら、健康的なその肢体の方に興奮を覚えるのが一般的な反応だろうか。
 黄色の帽子の少女の、布切れ一枚身に付けない均整の取れた肢体。それが日本人離れしたモデル体型であるのは一目瞭然。その上で、男を誘ういかにも柔らかそうな起伏を帯びてもいる。
 まず真っ先に揉みしだきたくなるだろう乳房。
 ニプルの色は透き通るピンク。バスト自体が品良く上を向いていて、瑞々しい肌の張りと共にそれは、少女期を卒業した女性達が振り返って羨む貴重な若さだ。
 すでに将来が楽しみな発育ぶりを見せており、成熟の暁には極上の豊満さを得るのだろうと、想像出来る。
 それでいてウエストは折れそうなほどに細く、腰位置の高さ自体がもうそこらの少女とは違うのである。
 要するに。彼女は同性の中でも選ばれた一握りしか持たない天性の色香と、少女と大人の女性との境目に立つこの年頃だけの可憐さというものを、この時両方同時に、そして気前良くすべて隠さず、カメラに収めさせていたのだった。

「素人の撮影だしね。ケンスケみたいに――ああ。僕のクラスメートで、カメラとかパソコンとか詳しいやつなんだけどさ。そいつみたいには上手くは撮れないよ。でも、この場合はこれで良いんじゃないかな」
 シンジは被写体の匿名性について口にした。
 そして繰り返し、こんな映像を撮るぐらい何ってことないのだと、安全性をレイに請け合った。
「ほら、分かんないものだろ? そりゃ、綾波はアスカだって知ってるから、疑って見れば分かるだろうけど」
「え、ええ……」
 レイはこくりと頷いた。
 本来ならば声も出ないほどに羞じらっていたのだけれども、シンジが同意を求めていたのが分かったからだった。
 シンジが言い切る通り、映る彼女は黄色いつば広の帽子を目深に被り、顔の殆どを隠している。
 映像から顔を確かめようとしても、赤いリボンが巻かれた帽子ばかりが印象に残るだけだろう。
 更には、シンジと共に収まるスナップ写真などでレイが見知っている普段の姿とは違い、あの彼女の特徴的な紅茶色をしたロングヘアーが見あたらない。
 モニターの中の彼女はあからさまに脱色して作った感じの金髪で、レイに似たショートボブスタイルになっている。
 元々の髪を帽子の中にしまって、ウィッグで装った髪だけを外に見せているのだとシンジは説明した。

「……顎のかたちは、あの人だわ」
「まあね。でも、目が隠れたくらいで結構顔って分からなくなるみたいだから、それだけじゃバレたりしないよ」
 モニターの中では、レイが複雑な顔をして『……アスカさん』と呼んだその少女からカメラが引かれていく。
 バストアップの構図に口淫の宣言を捉えたのに続いて、回り込む形で横からの撮影にアングルを移す。と、モニターには第二の人物が映し出された。
 映し出されたといっても下半身だけだ。
 こちらもパンツ一枚履かずに、既に隆々とそそり立った股間を剥き出しにした男性のもの。いや、少年のものだろう。
 跪いている帽子の少女へと、その若いペニスを突き付ける。
「碇君……」
「当り。もちろんだけどね。僕が撮ったんだから」
 しかしそれは、レイが顔に発火を覚えながら即座に言い当てた理由の一つでしかない。
「僕のは綾波もよく知ってるものね。それとも、僕のしか知らないから、ああいう形のモノぶら下げてたら、全部僕だって思いこんでたりして」
「そんな。そこまで、物知らずなわけじゃ」
「どうだろうね。いっぺん、試してみよっか? どれが――というか、誰が、ほんとうの僕だか当てられるかなって」
「……っ、それは!?」
「怖い? 僕や、父さん以外の人に会うのが。綾波もいいかげん長いもんね。もう何年だったっけ?」
 シンジは、父親が連れてきて以来、そのまま一歩も家の敷地から出ずに今日まで来てしまったレイの日々を数えるかのように、はてと首を傾げた。
「ずっとうちに閉じこもりっ放しで、誰にも会おうとしないし。全然お日様に当たらないからって理由もあるんじゃないかな。綾波がこんなに白い肌してるわけって」
 線の細い顎から首にと、その白い肌を愛撫しながら続ける。
 いくらなんでもこれは不健康。だけど、気に入っているんだよね、と。

「実際に会う人間は僕ぐらい。……父さんは偶にだしねぇ。やっとビデオチャットぐらないなら人と話せるようになったのは、進歩だと思うけど。どうかな? 実際」
 シンジの問いかけに、レイは眉根を困らせて、ふるふると首を振った。
「ふふふ。それが僕の他のやつには会いたくもない、そいつのアレなんて見たくも知りたくもないってなら、嬉しいんだけど」
「わたしは、碇くんが……」
 そして、『碇くんだから』と。
 全てをシンジに許し、捧げた女の子なのだ。この、長いこと引き篭もってしまっている綾波レイは。
 だから、直向きな目で少年を見上げる。
 見つめ合うシンジがやわらかい笑みを返すのに、それだけであっさりと安堵を取り戻していく。

「……冗談だよ。それに、本気で綾波がそこまで物知らずだとか、僕も馬鹿にしてるわけじゃないし」
 『勉強熱心だもんね』と、学校に通っているシンジより余程自由になる時間を持っている彼女の、この頃の日課を口にした。
 レイの私室にも充分なネット環境は整えられているのだから、たとえ実際に血肉になるかは疑わしい回線越しの知識でも、収集する分には何の不自由もないだろう。
 耳元に口を寄せて、囁くように言うのだった。
「チャットなら話せるのに。アスカがうちに来た時でも部屋から出てこないんだって思ってたけど、ひょっとしたらその時も“勉強”はしてたのかな? 廊下くらいまで、こっそり出てきて」
「――!?」
 かあっ、と。いよいよアルビノ少女のまっ白い頬は朱の羞じらいを濃くしていた。
 彼女の横顔に添えられて、少年が親愛を伝えるようにしていた――まるで愛玩動物にするかの手付きに似ていたが――手のひらが、そんなレイにもっとよく思い出させてやるべく、可愛い唇へと指先を移す。
 ちょん、ちょん、と。にわかに血行を良くしたサクランボ色の唇を突っついて、震える隙間を軽くこじ開ける。
 (……入れてくれるよね?)という、仕草の意図がすぐに分かってしまうレイは、わけもなく視線をあちらへこちらへ忙しなくさせた挙げ句、結局すこしも嫌がったりはしてみせなかった。
「……んぁ、ん、ンンッ……」
 唇のわななく隙間へと、悪戯者を受け入れさせる。
 すぐに清潔な歯列を爪がノックした。
 レイは今度もやはり、促されるままだ。更に奥へと迎え入れていく。
 少年はレイの顎を上げさせ、引っ込み思案に逃げていた舌を指の味がたっぷり確かめられるぐらいまで突き出させて。つまるところ、指先をペニスに見立てた疑似行為を成立させたのだった。

「んぁ、ぁ……あむ、ああむ、むぅン」
 先を軽く丸めた手のひらは、レイの口元を塞ぐ形。
 モニターに再生している映像自体、発覚を許されない類の物証そのものであったから、この格好は声を上げるなよと口を封じるものにも見えたが――。
 しかし、わざわざ無理強いする必要などカケラも無いのは明白なのだった。
 ぴちゅり、ぴちゅりと、開始された舌遣いの音。それが証明である。
 極めつけの人見知りを絵に書いたようにして数年過ごしているこの少女は、どこまでも少年に従順なのだった。

『……ッっ!?』
 モニターの中では、宣言したものの一向に踏ん切れないでいた様子の彼女が、小さく呻き声を上げていた。
 焦れたらしい少年が丁度、その顔のすぐ間近で若茎をしごきだしたところなのだった。
 ひどく動揺した気配が、帽子のふちから覗く顔の下半分だけで伝わってくる。

「アスカったら、口だけはいつも勇ましいんだけどね」
 どちらかと言えばシンジが逸ったと解釈される構図に、弁解するように言い添える。
 しかしレイは、反応する余裕もなさそうだった。真ん丸にしたルビーの瞳で、動揺を抑えきれない気配をモニターに注ぎ続けていた。
 片方では『んっ、んっ』と淫らがましく、舌の上に押し込まれた細長い人差し指をしゃぶるのに鼻息洩らすのも、忘れることなく。

『ひ――』
 無防備に帽子だけで跪かせた可憐なヌードを前にしていれば、オカズには充分だったのだろう。録画の中で自涜にふけりだしたシンジのペニスは、もたげた鎌首から一しごきするごとに威嚇の液を飛ばし、少女を居竦ませている。
『っあ、あ、ああっ、や……っ』
 粘性の飛沫は、間違いなく突き付けた先へも届いていた。
 男の下半身を口で舐めてみせるのだと、破廉恥な宣言をカメラに向かって言って聞かせたばかりではあったが。彼女はどう見てもその手の非行に、淫売同然の嗜みに馴染んでいる風には見えない。
 形よく尖った顎に繋がる、気品ある雰囲気の口元に浮かんでいた表情の種類は、そのまま見て取れた通りの育ちをしたお嬢さんらしいもので。だから逃げ腰になってしまうのも当然のことだったろう。
 黄色いつば広帽子が大きく傾いでいた。
 頬やその周辺に点々と飛び散らされる獣欲の先走りに見事狼狽して、仰け反りかけては――はたと思い直すかの仕草。
 きっと、被写体を務めるに当たっての心構えだとかいったものを、事前に言い含められていたのに違いない。
 我が身を真っ先に庇うべき手のひらは、行儀良く膝に置いたままだ。
 それでそうやって躊躇うたび、彼女の綺麗な胸がふるふると揺さぶられる様がいやらしく、そして良い見せ物になっているのだった。
 間違いなくこの映像は、見る者に男の視点を想定している。
『――ッ、――!』
「んちゅっ、ちゅ、んぁむ……むむ、っあ、ぁ……?」
 雑音はあいかわらず酷い。今度のやり取りはレイには聞き取れなかった。
 映し出されている情景の変化から推察するのなら、シンジが命じ、彼女はそれを聞き入れたと言うことか。
『やるわ、やってみせるわよ。……ん、んぁ……ぁ、ぁ、ああ……』
 おずおずと口を開いて小さく舌を突き出すと、すかさずその先へシンジのペニスが擦り付けられていった。
 自分から舐めるには至らず、卑猥にぬめる亀頭との接触に耐えるのが精一杯。そんな様子ではある。
 けれども、しごかれていれば始終位置をぶれさせるペニスである。先端への舌先の接触を保ち続けるということは、つまり少女の側にもいくらかは積極性が要求されるということだ。
『ふぅっ、ふっ、うっ、ううっ、っッ』
 首を細かく前後させ、顎を上下に踊らせて。首をふりたくるペニスの先を、伸ばした舌で健気に追いかけ続ける。
 ぴちゃぴちゃと舐め取っているようでもあり、伸ばしきった先で突っつくようでもあり。おっかなびっくりで始められていても、少女の懸命さには懸命であればあるほど当然のように、次第の慣れが追い着きだすものだった。
 片手で帽子を押さえつつ、最初よりは舌の伸ばしも口の開き方も大胆なものへ変わっていく。
 今のレイの口元のように「夢中」と呼べる淫らがましさよりは、「必死」という痛々しさの方が漂って見える横顔ではあったが。
 しかし、その哀れな頑張りぶりに、かえって欲情を駆り立てられる性向きの者がいることも事実。
 まして、そうして遂にはシャワーよろしく白濁を吹き上げるまでに至った屹立に『うあっ、にがっ……ッあっ、ヒッ、ッァア――!?』と慄きながらも、最後まで言いつけに忠実に、彼女なりの『フェラチオ』を果たして見せた一途さが加わるとあれば。

「見てなよ、綾波」
 射精の締めくくり。屹立はぶくぶくと泡になった残りを滴らせる亀頭を黄色い帽子にたっぷりと擦り付け、拭き取らせて、そして一連のショウに幕を下ろした。
 後始末が為されている最中、べっとりと汚された口元を辛そうに歪めつつも、彼女は最後まで辱めを受けた顔をカメラから逃そうとはしなかった。
 濃い、ゼリーじみた精液がたっぷりとその上に乗ってしまった舌も、ついと突き出したまま、約束の姿勢を保ち続けていた。
 おしゃれなリボンで飾られた上等そうなつば広帽子が、男のペニスが次々と吐いた粘液でシミを付けられていっても、甘んじて受け容れていた。

「これが四つ目の帽子だったかな?」
 もう捨てるしかないほど台無しになった帽子を、シンジがコンコンとモニターに指した。
「最初は顔を隠す工夫程度のつもりだったんだけど、そのせいかすっかり目印にされちゃってね。おかげで『帽子のJC』、なんてことになってるのさ」
 「帽子の女子中学生」を意味する隠語。そんな渾名のおかげで、今ではと。
「逆にね、今度はこんな帽子を汚してやってくれって、リクエストがあったりするくらいなんだ」
 面白いよねえと笑う。
 少年の笑い声は、明かりも落とし、息を潜めるようにしている部屋の中では、不似合いに朗らかだった。
「だから楽しみだよ。レイがうんって言ってくれて。それで今度は、どんな渾名が付くようになるのかな――って」
 シンジが続けた声色は、明らかに興奮を増していた。
 片手では人差し指を使ってフェラチオ練習をさせているのに飽きたらず、もう片手も動員して、更にモニタの中の彼女を見習わせようと蠢かせるのだ。
 肩を抱く位置にあった左の手のひらが、すすっと撫ぜていくようにしてレイの鎖骨のあたりを移動。どこかの学校の制服だと言って通じそうな無地の半袖ブラウスは、自室に居るくつろぎでか随分と襟元を緩くしていたから――そのまま、するりと潜り込んでしまうのは簡単だった。
 着慣れた生地は洗いざらしにすっかり柔らかくなっている。内側でじかにまさぐるのにも、何の支障も無かった。

「ふぁ……、ぁ」
 ブラをつけない胸が揉まれた。
 挨拶程度に軽く乳首も弄られて、それだけで固くなりだしたのをレイが恥ずかしく自覚していると――。淡泊なくらい、あっさりと引いていく。
 一旦ブラウスから抜け出した手が次に戻ってくるまでで、レイの胸元を守っていたボタンは全てプツッ、プツッと外されてしまっていた。
 裾の方も、スカートが締め付ける腰のところから引っ張り出される。
「あっ……」
 液晶モニタからの冷めた明かりを浴びて、余計に青白く、取り出された乳房が浮かび上がっていた。
 動画の中に記録されていた発育豊かな少女に羨望を向けていたようだが、レイの胸とて別に劣っているわけではない。
 まさに純白と言って良い表面に、うっすらと青い静脈が透けて見える。格別の儚さ。
 少年の手のひらがすっぽりと覆って弄ぶのに丁度良いぐらいの優美な曲線が、繊細でありつつ、同時にまろやかな膨らみを双つ並んで形作っている。
 宝石のように慎重に扱わねば壊してしまいそうでありながら、しかし力任せに揉みしだけばどれだけの感触が味わえるだろうかと、思わせずにはいられない――。
「あぁ、ぁ」
 落ち着かない恥ずかしさはあるが、シンジが求めているのなら是非はない。レイは背もたれから浮かせた肩を揺すって、引っ掛かっていたブラウスを背中へと落とした。
 続けて腕を抜こうとするのは制止された。
 中途半端に肘でわだかまったブラウスは、素肌を守る役目を失って一転、腰の後ろに渡された肘同士を結ぶ拘束具と化す。
「…………」
 レイの頬に覚える熱さが増した。
 少年はレイに不自由を強いるのも好む。シンジのすることへ何か抗うなど考えもしなかった彼女は最初、自分の想いを疑うのかと悲しくなったが、別の意味だと教えられてよりはただ――強く羞じらいを抱かされる儀式だと、苦手さをのみ残していた。

「ンンっ……。今日、も……?」
 ちゅぷと、名残惜しさが糸を引かせる。唇から人差し指が引き抜かれてしまうと、無意識にその指先を追った目を次に、レイは愛しい顔へと振り向かせた。
 上目遣いに小さく尋ねる。今日も縛るのかと。
「あはっ。今日もそのつもりなんだ、綾波は」
 シンジの返事は、彼女の頬にいっそう濃く、薔薇のような色付きを与えるものだった。
「縛ってあげないと怪我するかもって位、激しく暴れちゃうセックスがして欲しいの?」
「い、碇くん……」
 レイは激しいから。そう囁かれれば、自覚がある少女は、なんて自分は淫らな女の子なのだろうかと身を捩る思いだった。
 それでも求めてしまう浅ましさが恥ずかしい。
 恥ずかしいが、やはり求めてしまうのだ。愛しい少年の、確かな温もり、頼もしい逞しさを。
「……ぁ、ぁ、あぁ――」
 とっくにもう、女である場所の中心にはしたない潤みが生まれだしているのを、もじもじと落ち着かない腰が知っていた。





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