POSSESSION



02

「シンジに……キスされちゃった」

桜色の唇をなぞりながらつぶやいた少女は、自分の声に驚いたようにキャッと爆発すると、ベッドに顔を埋めてしまった。
シーツと紅茶色の髪との間にちょこんと覗く耳が、ぷしゅうと湯気を立てて真っ赤に染まる。
女の子らしいパステルの色使いで揃えられたシーツと毛布とをじたばた巻き込みながら、パジャマ姿のアスカは枕を抱き締め身悶えした。

その日のシンジは、朝から何だか一味違っていたのだ。
いつも通り隣家のドアを開けて、キッチンのおばさまとおじさまに朝の挨拶を。まっすぐ階段を駆け上がって『朝よっ、いい加減おきなさ〜い!』と部屋に乗り込むと、なんともうシンジは起きていた。

「あ、おはようアスカ。今日もいい天気だねえ」

のほほんとシャツのボタンをはめながら、寝ボケの欠片も見せぬ明瞭な発音。
いつもは毛布にしがみついてふにゃふにゃと、あと5分だのとだらしの無いことを言うのだが。
信じられないことだわ。何か変なものでも食べたのかしら。―― 或いはおじ様が食べさせたとか。
驚くよりも、まず疑わしかった。

そのまま、普段の慌しさが嘘のように優雅な朝食タイムと登校ウォーキングを経て、居眠りと珍回答の二重苦に悩む筈の授業時間もそつなくクリア。
始終調子を外されっ放しのアスカは、気が付くと下校途中の公園でベンチに並んで座って夕日を眺めていたのである。
今日の給食おいしかったね―― 等とたわいもない話をしていたような気もするが、はっきりと覚えているのは、シンジがなんだか急に大人っぽくなったように感じたこと。
そして不意に見詰め合ったシンジに、その黒い瞳に吸い込まれるようにして口付けられたことだった。
夕日をバックに、彼女自身が少女マンガを片手に夢見ていたようなシチュエーションで。
アスカは、まるでそうすることは前もって決められていたかのようにごくごく自然に、ふっと力を抜いた身体をシンジに預け、そのファーストキスを受け入れていった。
静かに唇と唇の柔らかさだけを感じて、息苦しさの限界でようやく名残惜しくついたため息。
微笑んだシンジの顔が恥ずかしくって、とても正視出来なかった。
甘い、甘い―― ファーストキスだったと思う。



◆ ◆ ◆




幸福感に包まれて毛布に包まったアスカは、その夜、少しだけ大人に近付いた自分とシンジが裸で抱き合う夢を見た。
不思議な赤い色をした海が広がる砂浜で、どうしようもなく熱く感じる身体を絡め合い、キスを貪る。とても淫らな夢だった。

「あ、あたしって……」

なんてエッチなのかしらと、まだ朝には早い目覚めにドキドキと胸を喘がせながら、アスカは寝乱れた肌に奇妙なほど生々しく残った夢の感触に、自分を抑え難く感じていた。

「やだ……、ぁ、濡れちゃって……ん、んぁ……」

そっと確かめた下着の感触に羞恥を覚える。
それにも増して、触ってしまったそこはアスカに妖しい夢の続きを促し、揺らぎかけた自制心の回復をもう許してはくれなかった。

「ふぁ、あ……んぅ、ンッ、ン……」

静まり返った時間に、自分の淫らな息遣いが響いてしまう。
我慢しなきゃとシーツを噛んで押し殺しながら、それでもアスカは覚えはじめたばかりだった一人遊びを止められなかった。
下着の上から忍ばせた指を、大切なところに滑らせる。

「あっ、あっ、あっ……」

こしこし、こしこしと擦る。自分でも驚くほど敏感になっていた。
まだキスを一回しただけなのに、もうこんないやらしい事を考えてしまっている自分を見たら、シンジは何て思うだろう。
呆れるだろうか。そんな女の子だなんて思わなかったと嫌われてしまうだろうか。

「やぁ……あたしを嫌いにならないで、シンジぃ……」

震える一方で指はますます止められなく、激しく。シンジに触って貰っているのだと想像する。

(いけないの。こんなこと、いけないの……ぉ、ああーっ!)

これまで感じた事が無いほどの気持ち良さ。アスカはきつくシーツを噛み締めながら『フッ、フゥッ、フーッ』と鼻息を熱くさせてしまっていたのだった。



◆ ◆ ◆




次の日にはもう二度目のキスだった。
学校から帰ったまま、ランドセルを下ろしもしないでシンジがアスカの部屋に上がる。或いはその逆であるのは、幼馴染の二人の間では珍しい事ではなかったが、宿題をと言いつつベッドに並んで腰掛けて期待していたアスカを、シンジはやはり急に身に着けた落ち着きでどぎまぎとさせて、抱き締めた。

「んふ……ン、んむぅっ。―― し、シンジ?」
「驚いた?」
「これ……」
「そ、大人の……キス」
「ちょっ、待っ……っ、ふンン! ん、ああ……」

ちゅく、くちゅと舌を絡め取られてしまう。
思いも寄らぬ過激な行為にアスカは驚いた。だが、シンジの舌を噛みでもしたらと唇を震わせている内に、カッと頭が熱くなってしまった。
つんつんと怯え縮こまった舌をシンジが誘い、歯茎から下の裏の柔らかな部分をなぞられる。

「んン……ン! ンゥ! ン、ンフ! ンはぁああ……!」

―― んくっ、んくん。

抱きすくめられたまま逃がして貰えず、深く唇を貪られていては、流れ込むシンジの唾液も飲み下さずにはいられなかった。
喉がはしたない音を立ててしまうのが恥ずかしかったが、自分以外の人間に注がれたものでも嫌悪感は起きない。

(シンジのツバ……飲んじゃった。シンジの……、ああ……!)

寧ろ甘いとさえ思え、アスカはますます昂ぶった。
優しく撫ぜられている背中がぞくぞくとする。
合間合間に息継ぎは許してくれたが、パニックの収まらない心臓はドクンドクンと耳元にまで鼓動を響かせていて、眩暈にも似た意識の混濁は深まるばかり。

「んふっ、ン、ああむ……あふっ、あふぅうう」

繰り返される濃厚な絡め合いにいつしかアスカもおずおずと応え始めていた。

「ふふっ、アスカ♪」
「あっ」

押し倒されたアスカを、ベッドがスプリングを効かせて柔らかに受け止める。

「だ、ダメぇ……」

言いながら、スカートの下に忍び込む手への抵抗は弱かった。

「やだ……あ! シンジのえっち。だめよ、だめだったら……」
「そお?」

さすす……と弱々しく閉じた内腿を撫で上げられる。
瞼をぎゅっと瞑って、睫毛を震わせているアスカは、殆ど足に力なんて入っていないのだった。

「だめ、だめぇ……。ひぃん……!」
「エッチ? ……僕が?」

辿り着いた両脚の付け根をさすられて、アスカは啼き声を上げた。

「あっ、あ、触っちゃあ……」
「ふふ、アスカのえっち」

笑いを含んだ声。パンティの湿りを耳元に囁かれ、羞恥が極大にまで膨れ上がる。
うなじまで真っ赤になって顔を隠すと、敏感な場所への刺激に切れ切れとなりながら、少女は怯えた声にか細く喉を震わせた。

「ちがっ、違うのぉ……んっン! あたしっ、あっ……こんな、いやらしい女の子じゃ……じゃああ! あいッ、あーッ!」

少年の指がいちいち確かめるように縦長の窪みをいじって、ツンと硬くなった小さな粒の様子も伝えてくれるものだから、アスカにも自分の秘所がどんなにビショビショになっているかは分かっていたのだ。

「ヒッ、ぅ、……嫌いにっ、……ならないでぇ」

鋭い喘ぎに声を詰まらせても、泣き出す寸前に潤んだ瞳がシンジにひたすら取り縋る。

「シンジっ、くぁっ、ハ……! シンジぃ……」

ついと顎を摘まれ、間近に覗き込まれて。アスカは息を飲んだ。

「アスカのエッチ」
「ひぁ、や……」
「カワイイよ?」

ぴちゅと顔を寄せたシンジが目尻の涙を舐め取る。
続けて反対側も。

「シンジぃ」

ねっとりと、確実に淫らと感じさせる舌で涙の流れた頬も可愛がられて、そのシンジが優しかったら、アスカはああと息を緩ませた。

「エッチで、可愛いよ。アスカ」
「んぁぁ、シンジぃ……!」
「ん、キス?」
「うんっ、キスぅ……」

甘えて首に縋る。
ふうっ、ふぅーっと荒く喘ぎながら、今度はアスカの方から積極的に貪った。

「はっ!? あ、ああ……」

シンジが下着の底を横にずらしても、アスカは黙って足から力を抜いた。

「ひゃく、ひ……! いぅ、んーっ」

喜蜜に潤ったスリットを、くちくちと直接なぞられる。
思わず腰が浮かんで、叫びそうになってしまった。

(だ、ダメ……。ママに聞こえちゃう……)

母は一階のキッチンで夕食の準備をしている。余程の声でなければ伝わりはすまいと思えたが、シンジの指に淫靡な水音を立てつつかき混ぜられていると、アスカはその余程の声を出してしまいそうになるのだった。

「あくぅぅ……ふぁあ、あー」

ぴっちりと硬く閉じた蕾を、シンジは丹念に丹念にほぐしているようだった。
染み出す愛液が縦すじから零れて会陰部に流れるのを、勿体無いと掌にすくい止めては満遍無く幼い性器に塗りまぶす。

「あんっ……あああ……」

ドクンドクンと猛回転する心臓。あまりに胸が熱いと押さえようとしたアスカだったが、ほんのそれだけでも服の下で擦られた乳首が狂おしくて、慌ててシーツにしがみつくのだった。

「感じる? アスカ」
「そんな……ああ!」
「僕がシてあげるのじゃ、気持ち良くなれない?」

ほら、ほら……と、瑞々しく弾む恥部の盛り上がりで、スリットに這わせた中指をスライドさせる。

「ひゃ! ハ……! シンっ、だめぇ……それ、強いのぉ〜〜!」

浮き上がった腰をのたうたせて、シーツの上に悶えるアスカ。
幼いガールフレンドを意地悪く見下ろして、今や完全にスカートが捲れ上がり、丸見えになった秘裂をシンジの指が責め立てる。
まだまだ少ししか顔を見せない入り口粘膜への潤滑マッサージに熱を入れている様子だが、恥ずかしがるアスカに意地悪をする時は、最も敏感な薄紅色の肉芽にだった。
ぬめりを付けた指先でくりゅくりゅと。

「ッ!? ひぃ〜〜〜ん!」

堪らず細い喉首を反り返らせて、幼げな悲鳴が張り上げられた。

「あふっ、ひっ、ひゃふ……ひゃふふ!」
「どう、アスカ?」
「とめっ、とめれ……。そりぇ、いぅっ……フ! はっ、止めぇええ……!」
「気持ち良いでしょ、ねっ?」
「うんっ、ふぅううん! きもひ……、い、イイらぁっ。シンジ、おねが……あああ」

呂律も回らず、髪を必死に波打たせて頷く。
このままシンジが強くし続けたら、只でさえ気持ちが良過ぎてどうにかなりそうな頭が、パンクして吹き飛んでしまいそうだった。

「そっか、気持ち良いんだ」

息も絶え絶えにこくと頷くアスカに、シンジは罪の無い笑顔で嬉しいよとキスを与えた。

「じゃ、自分でするより?」
「え……?」
「自分でしたことあるんでしょう? ココ」

カーッと頬が燃え上がる。
そんな、恥ずかしいこと言えるわけ無いじゃない―― と喚きたくなったが、過敏すぎる秘核にまた指が添えられていては、声を詰まらせるしかなかった。

「シンジ……」

言わなきゃダメ? と上目遣いで。
にっこりと口元を吊り上げ、黒い瞳が勿論と返事を返す。だーめ。

「ああ……」

それは乙女の一番の恥ずかしい秘密だ。
まさか好きな男の子に言わなきゃならないなんてと、死んでしまいそうな羞恥に身を揉むアスカ。
『んっ?』とぬかるみに控えた指先で突っつかれてはついに観念するしかなく、おずおずと答えるのだった。

「し、してるわ……」
「毎日?」
「そっ、そんな……! あたし、そこまでエッチじゃ!」
「えっちなの、嫌? エッチなアスカも可愛いのに……」
「そんなこと言って……」

可愛かったよと、もう一度囁かれる。
悪い気はしないし、でも恥ずかしいしで、アスカはすっかり手玉に取られてしまっているわと、また頬を赤らめるのだ。
頼りない幼馴染を自分が引っ張ってやるのがいつもだったのにと。
それでも、急に男らしく見え始めたシンジに唯々と従うのも、何だか不思議に悪くないと思える。
良い奥さんは、旦那様の言いつけに何でも従うのよね……。
それは、封建的ぃとバカにしていた考え方だったのだけど、今は胸をときめかせる。

「それじゃさ、昨日は?」
「きのっ―― !?」

流石に答えられなかった。
それでも、ホカホカと湯気を立ててしまった顔が答えだと、自分でも分かってしまった。

「そっか……。うふふ」
「い、いやぁ……」
「恥ずかしがらなくて良いよ、アスカ。なら、ここも指、入れてるんだね?」
「えっ、あ……あーっ!」

うっすらと綻んできていた合わせ目に、シンジの細い指が侵入した。

「はぁうっ!」

止める間もなくつぷつぷと。アスカは自分でも触ったことの無いほど内側からかき混ぜられてしまった。

「そんっ、あたし……ぃ、いいぅーッ! くぅンン! くぁ……、あたしっ、ふかぁああ……あ、深いのーっ!」

まだ窮屈なそこだが、アスカ自身の漏らした淫らな蜜を潤滑に、ぢゅぬ、じゅっ、つるる―― と挿し込まれ、引き抜かれ、くすぐられては、甘い驚きを覚えずにはいられない。
その程度には、充分アスカも女へと成長していたのだ。

「ああっ! はああっ! こんなの……あ、あたし、したこと……あーっ、イイのぉ!」

まさぐられる深い部分から生まれる気持ちよさ。甘やかな快楽に腰砕けにされて、アスカの小さな身体がベッドの上で跳ね踊った。
くんっ、と奥をほじくられると、途端に背筋が突っ張って、舌足らずの嬌声が溢れ出す。

「もう少しかな。まだ早いような気もするけど……。でも、もう待てないんだよね」

幼馴染の少女を喘がせながら、少年は誰にとも知れず呟いた。

「ああっ、シンジぃ」

蕩けた声でアスカが呼んだ。
電流のように頭の中をしびれさせる愉悦で、羞恥心も焼き尽くされてしまったのか、あられもなく媚びる響きだった。

「もっと……。もっとして……」

余程良かったのか、自ら腰をせり上げ淫らにせがむ。

「シンジの指で、もっと……。あたしに、ねぇ……」
「そんなに良かったんだ?」
「うんっ、イイの。シンジのゆびっ、気持ち良かったからぁ」
「アスカのえっち」
「うんっ、うんっ! うんン〜〜!」

ちゅぐちゅぐと指先のピストンに可愛がられて、こくこくと首を縦に振っているアスカの可愛いお尻が踊りくねる。
仰け反った顔で毛布の端を噛み込んで、啼き声を悩ましく押し殺していた。
はじめ指一本でも厳しかった狭道も、心なしか閂の厳しさを緩めたように、シンジの指をツルツルと迎え入れ、悦ぶ。

「ふぅむ、ふぅむむ。むぅうう……!」

美声を漏らし、可愛らしく小鼻をひくひくとさせて悶えるアスカ。
一度薄目を開けて恐る恐ると覗き見たのだが、柔毛の一本も芽生えぬツルリとした股間にシンジの中指が突き刺さっている様は、とてつもなく淫らなものだった。
自分が腰を上げてしまっているだけに、見え易く全てが少女の脳裏に飛び込んでくる。実に生々しく、卑猥に。

(なんて……。なんて、いやらしいの……!?)

あたし―― っと、狂乱が増していく。

「イきそうなんだね、アスカ」
「んっ、んーっ! んぅンン……!」

幼いながら、快感を生む器官として充分に機能するクレヴァスをいじくり回され、アスカが背筋をしならせながらアクメにまで達するのに、さして時間は掛からなかった。

「んむっ、ん……んぁハッ、ハァアアアアアア〜〜〜!!」



◆ ◆ ◆




自分でも驚くほどの悲鳴を上げてしまったアスカは、暫くビクビクと下を伺っていた。
しかし、気にする様子も無くマイペースに後始末をしてくれるシンジに恥ずかしさ半分で膨れて見せている内に、やがて心地良い疲労に瞼が重くなっていったのだった。

ぐったりとしたまま、むき出しの股間をボーイフレンドに拭ってもらい、パンティを履き替えさせて貰う。
つい先日までの自分なら、羞恥のあまりの天邪鬼さで、後で最悪の自己嫌悪に落ち込むほどシンジに怒鳴っていたのかもしれないわと、ゆったりと眠りの境にたゆたいながらアスカは思う。

「ねぇ、シンジ……」
「なに?」
「すっごく、気持ち良かった」
「そ。じゃあ―― 、またスル?」
「……うん」

夢に落ちる前、素直に言えた。
瞼は閉じてしまったけど、この優しい―― ちょっと大人びた一面で驚かせてくれた幼馴染も、きっと微笑んでくれているのだと信じて。



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Original text:引き気味