淫獄昼夜 〜惣流家、ある朝〜

Original text:引き気味


『 アスカとムサシ、その転機 』


「私、ちょっと」
 登校を急ぐ壱中の生徒たちで道が溢れかえらんばかりになっている中から、朝の日差しにも華やかな金色の髪をした少女が早足に離れていく。
 シンジたちと連れだって歩いていた幼馴染みのアスカだった。
 普段ならば、シンジだったらまだ眠くて眠くてベッドにUターンしたくてたまらないようなこんな時間からも元気いっぱい、溌剌としていて、仕草の一つ一つが小気味良いくらい律動的な彼女だったのだが。
 今朝は違うようだった。
 汗ばんだ顔。くっと眉根を寄せて唇を引き結んだ、優れない様子の表情。急いでいるらしい足取りもどこかぎこちなく、痛みをこらえるかのようにお腹の辺りを押さえている。
 そもそも、今朝はいつもの時間になってもシンジを起こしには来なかった。これはかなり珍しい。
 そして、彼が慌しく朝食を済ませている間に母のユイに頼まれた親戚の少女、レイが様子を見に行って連れてくると、もうそんな具合だった。
 アスカが危なっかしくよろよろと歩いて行ったあの方向には公園があって、そこには比較的最近に立て替えられた公衆トイレが設置されている。
 『先行ってて』と濁すように言っていた理由はと、察しをつけるならそこらだろうか。
 花も恥じらう思春期の女の子が登校中に公衆トイレを使おうとするくらいなのだから、よっぽどなのに違いない。
 触れないでいてやるのがマナーだとは、唐変木のシンジでも分かる。
 しかし、躊躇いつつもシンジは隣を行くレイに尋ねたのだった。
「ねえ、綾波。ひょっとしてだけど――



◆ ◆ ◆

 碇シンジはレイと同じ十四歳で、同じ第壱中学に通っている少年だ。
 念願叶ってレイが“はじめて”を捧げた相手であり、親戚でもある。
 二人で並んで撮った写真などをじっくり見ていると確かにそうなのだなと信じられる顔立ち。それは、レイと同じ血筋の母方から引き継いだものの筈だ。
 これで自分の髪の色や瞳が普通だったなら、もっと……とレイは思うのだが。
 今朝のそのシンジは、レイとはまた別種の理由で日本人とは違った髪の色、瞳の色をしている幼馴染みのことをしきりに気にしているようだった。

「ねえ、綾波。ひっとしてだけど」
 少年は少しだけお互いの肩と肩の間の距離を狭めてから、躊躇ったように口ごもり、そして小声で続けた。
「今、母さんから何か言いつけられてたりするの? その……『レッスン』関係で」
 わずかに頬を赤らめたシンジは、秘密の関係を結んだ間柄だけで通じる符号を口にするのと同時に、ちらりとレイの胸や腰の辺りに目を走らせたようだった。
 もしやとシンジが考えたのだろう内容は容易に察せられた。その目線の意味も。
 壱中の女子制服はジャンパースカートスタイルであり、朝からこんな陽気の日であっても胸部分はブラウスの上からベスト状の上着で更に一枚覆われる。
 年頃の女子生徒のバスト形状をなど窺うべくもないが、そこは想像力がものを言う。
 仮に想像するための材料が豊富だとすれば、ますます話は別のものとなろう。
 そしてシンジの場合、彼は特にレイとは親密な仲だと言えた。
 少年の母親であるユイから、レイやアスカが受けている淫らな秘密指導。シンジと結ばれるために。シンジを満足させられるいやらしい躯の持ち主に、自らを磨き上げるために。キスの仕方から少年の性器のしゃぶり方、ベッドの中で繋がり合った時のお尻の振り方まで事細かに教えを受ける。それを称しての『レッスン』。
 その中で、レイはこの想いを寄せる少年に幾たびとなく裸の胸を見せ、ショーツをも脱ぎ捨てたありのままを晒してきた。
 ―― それを思い出してくれたのだろう。
 そして、記憶にあるレイの乳房や性器を制服の上から重ねて見ながら、あの金髪の少女の不調について、もしや今、彼女のそこは指導による言い付けで卑猥な状態に置かれているのでは―― と考えたのだろう。
 実際、これまでに何度も行われてきたことなのだから。

「……下着、ちゃんと付けてるわ」
「え?」
「普通の。それに、変なおもちゃなんて」
 今朝は、付けていない。使われていない。
 言って、レイは自分の体をシンジにすり寄せさせた。 
 びくりとシンジがうろたえる。
 逃がさず抱きかかえこんだ腕への感触で、少なくとも胸については言葉の通りだとシンジに伝わった筈。
「あなたのお母様からはなにも言われていないもの。……あの人も」
 ―― 安心した?
 そう口にさせたのは、レイの妬心だった。
「……でも、碇君が望むならしても良い。今からする? “レッスン”」
「ええっ、や、いやでも、ほら授業もあるし」
「下着、碇君が脱がせてくれればいいわ。そうしたら、休み時間のたびにチェックするの。わたしが……碇君のいやらしい雌奴隷、綾波レイが、授業中ずっと下着無しでご主人様を想ってびしょびしょにしている、スカートの中を」
 ずっとポーカーフェイスでふざけたている風には見えないレイの唇から突然に、その手の漫画か18禁指定のゲームキャラかという、卑猥極まりない台詞が飛び出す。
 覿面顔を真っ赤にし、周りに聞こえたんじゃと慌てるシンジ。
 こんな口上をレイがすらすらと諳んじることが出来たのも、『レッスン』の成果だろう。
 しかし、それは“碇ユイによるレッスン”だけを意味はしない。
「どうする? 碇君」
 レイとアスカ、同時にユイに弟子入りしたシンジを巡るライバル同士の二人。『レッスン』を受けるのはいつも一緒。レイが何もされていないことに安心したシンジは、アスカもそうだろうと素直に思い込んでいる。 
 アスカの調子の悪さは単純に体調によるものだろうと。
 そして、アスカを心配する気持ちもまだあるのだろうが、意識の多くがレイの誘惑に傾きつつある。そう分かる。
 これでシンジを独り占めに出来る。
 ほくそ笑む気持ちのレイは、彼にあえて誤解するように伝えた―― 伝えなかった、今朝のアスカが受けている『レッスン』を仕組んだコーチ役の少年に感謝したのだった。



◆ ◆ ◆

 ―― その、一時間ほど前のことである。

『あなた……』
『し、静かにして』
 今朝、レイが鳴らしたチャイムに応じてアスカが―― というか、惣流家の家人が現われるまでの時間の長さ。
 よろめくようにしてドアを開け、顔を見せたアスカは、まだパジャマも着替えていなかった。
 その、慌てて前を閉じ合わせたらしい着乱れ方。覗く胸元の白い肌が朱に火照っている様子。櫛も通していなさそうなぼさぼさの髪と、なによりはっきりと鼻につく性臭から、レイはアスカの直前までの状態を正確に把握した。
 目をやれば、玄関には女所帯のこの家にそぐわない男物の靴が二足。
 とは言っても、まだ大人用ではないサイズのスポーツシューズなのだが、それが並べて置いてある。
 しかも、レイにも見覚えのある運動靴だった。
 かかとを踏み潰した履き方をしている片方はたしか、
『……鈴原トウジ、それに相田ケンスケ。そう、そうなのね……』
 『あなた……』と、驚いたとばかりまじまじ恋敵の顔を見詰めたレイに慌てて詰め寄り、アスカは違うのだと言い募った。
『ママよ。ママなの。あいつら、昨日わたしが帰った時から家にいて……。もう、最悪っ。ずっとママと裸で一緒にいて、ご飯も寝室で食べるし、お風呂にも三人で入ってるのよ!』

 レイ達の同級生である鈴原トウジと相田ケンスケ。
 この二人の少年はシンジとは三馬鹿トリオと称される仲でありながら、『レッスン』の教え子としてユイと、つまり友人の母親と肉体関係を結んでいる連中だ。
 のみならず、アスカの母親であるキョウコとも、愛人契約を交わしているのだった。
 図らずも、三馬鹿トリオにレイとアスカと、壱中2−Aのクラスメイトが五人もユイの表沙汰に出来ない淫靡な授業の生徒となっている。
 そうであっても以前は、トウジやケンスケには、アスカたちも同様にユイより性の手ほどきを受けているという事実は告げられず、ユイの配慮によって露見の危険性からは慎重に遠ざけられていた。
 ムサシとケイタも、たまにこれをアスカに対する火遊びめいたいやらしい悪戯の種にしつつ、よく協力していた。
 そのため、トウジとケンスケの方も自分たちの秘密をばらすまいと務め、キョウコとの関係がアスカの目に入らないようにしていたのだけれども。
 しかし一部であっても事が明らかになってた今では、事態は随分と様変わりした。
 トウジたちはおおっぴらに惣流家を訪れるようになり、そして母親の豊満な肢体を抱きながらアスカに対しても欲望を隠そうとしない。露骨な目を向けるようになっていた。
 ―― この……! エッチ、バカ、変態! 信じらんないッ。学校にそんな雑誌持ってくるなんて……!!
 たかが店先で普通に売っているグラビア誌程度のヌード写真に過剰に反応して、トウジたちを悪し様に罵っていた剣幕ももう過去の話だ。
 この潔癖で男勝りの同級生の前でたとえエロ心を剥き出ししたところで、もうアスカ自身にそれを非難してくる資格が無い。そうと知って今や恐れることもなくなり、なんとも堂々としたものなのである。
 もっとも、いまだにあくまでアスカたちのレッスンの相手はシンジだという認識であり、まさかムサシやケイタなどという小学生たちからも調教を受けている等とは考えもしていないだろうが。
 そして、アスカ自身、高名な研究者として自慢であった自分の母親をああも良いように屈服させ、喘がせてみせる同級生達に対して、実はそのシンジの物ともムサシやケイタたちとも異なるペニスに無視できない気持ちを膨らませつつある。
 それを、レイは薄々ながら感付いていたのだった。
 だからこその思わずの台詞、(とうとう……)という思いなのだった。
『それで、あなたも一緒に……?』
 とうとう、あの二人ともしてしまったのねと。
『違うわよっ!』
 思わず声を荒げて、そして焦ったように声をひそめて。腫れぼったい風の寝不足の目をしているくせ、アスカは違うのだと早口に説明を連ね、レイの誤解を否定した。
『誰が、あいつらなんかと!』
『でも、あなたもしてはいたのでしょう? セックス』
 それもさっきまで。
 指摘すると、アスカは疲れの滲んだ顔を一気に紅潮させて、口籠もったのだった。
『……っッッ』
 それもやがて、いかにも渋々といった体で白状する。
『……ムサシよ』
 ムサシ・リー・ストラスバーグ。あの性悪小学生コンビの片割れも、実は来ているのだと。

 手早く服を直し、サンダルを突っかけて玄関の外まで出ると、アスカは後ろ手でドアを閉めた。
 説明するにしても、聞かれたくない相手が家の中にこそいるということなのだろう。
 ガチャリと音を立ててドアがしっかり閉まり、悩ましい声が響く家の中の空気から自分たちを隔離するかのようにしてから、彼女ははあっと溜息をこぼしたのだった。
『最悪よ。なんでこんな時に来るのかしら』
『彼を部屋に入れたの? あなたが』
 レイにしてみれば、軽い驚きだった。
 確かにムサシやケイタとはレッスンを通じての特別な関係であり、赤の他人というわけではないが、だが身体の結びつきの深さがそのまま彼らとの親しさの度合いを意味しているわけではないのだ。
 少なくとも、レイなら決して許さない。自分の部屋に彼らが我が物顔で上がり込むなど。
 しかしアスカは違うのか。もう違うのか。いつの間に、そこまで気を許していたのか。
 問うように目を向ければ、アスカは違うわ冗談じゃないわと首を振った。
『あのジャージ馬鹿たちに気付かれたらどうすんの。あのしつこいガキがちょっと騒ぎでもしたらおしまいじゃない』
 だから仕方無く、と。
 疲れた顔の少女は俯く。
 肩に掛かっていた長い後ろ髪がざわりと体の前に流れた。
 その紅茶色がかったブロンドの艶も、朝まで躯を貪られていたせいなのだろう、常よりもくすんで輝きを失っているようだった。
 同じ家の中にいる母親、そしてその母親と同衾している同級生達。きっと彼らに悟られないよう必死に努めながら、あの浅黒い肌をした小学生の獣欲を受け止めていたのだ。
 それはそれはたしかに、スポーツ万能の体力自慢でもある少女だとて、疲弊もするわけだ。
 レイは本当に滅多に抱かないこのライバルに対する同情の念を込めて、『……そう』とだけ返した。

 そうやって言葉が途切れ、少女たちの間に沈黙が降りてからいくらも経っていなかっただろう。
―― ッ!?』
 やにわにアスカが声を詰まらせ、崩れ落ちるようにパジャマの太腿をよじり合わせた。
『あっ、やっ、動か……ああっ』
 びくびくと喘がされた喉から溢れ出したのは、紛れもない官能の悲鳴。十四歳にして日々ますます敏感にいやらしく、性感を豊かに開発されつつあるアスカの、自分ではままならない嬌声だった。
『……っ、ッツ。ッア、っ―― ッ! あいつ……ッ。大人しくしてなさいって、言っておいたのに、ぃ、っッンンン……!!』
 同時にレイの耳に届いたのは、ヴーッというくぐもったモーター音だ。
 アスカは倒れこんだも同然の勢いで背をドアに預け、口元を押さえている。
 すぐにレイは事態を悟った。ぎょっとして恋敵の少女の顔を見る。
『あなた……!?』
『そうよっ。入れられてんのよ! あのガキ、調子に乗って……なにが絶対強くしないから、よぉ……!!』
 もうやけっぱちになっていたのか、日頃勝ち気な少女は簡単に認めてしまうと、目の端に涙を浮かべて歯ぎしりするのだった。
『……とりあえず、中に』
『ンンっ、ンーッ?』
『ここだと、人に見られるかも』
『でも、家の中だとママやあいつらが――
『大丈夫』
 きっと、大丈夫だから。
 言葉が表わす意味合いとは裏腹の腹立たしい気分で言ってやって、レイはアスカを立たせ、身体を支えた。
 そうだ。大丈夫に決まっているのだ。遠隔操作によってアスカに突然の悪戯をしかけてきた犯人、ムサシ・リーという少年。彼は小学生のくせ見かけほどの考え無しではないし、なによりユイの言い付けを破ることは絶対にしない。
 アスカとの関係を鈴原トウジたちに知られてはいけないと言い含められている以上、どんなに危険で大胆な振る舞いであっても、一応はそこら辺を見極めているはずである。
 あの少年なりに、だが。
 だからレイが念のために警戒しながら家の中にアスカを連れ込んでみれば、果たしてそこにあったのは予測の通り、“アスカが心配しなくて良い”状況なのだった。

 ―― ン、ンぁぁ……ァ。あんっ、ンァァァ〜ンンン……!!
 ―― ええで、ええでっ。キョウコはんっ。マンコ……ぐねぐね言うてて、ワシのをまだ搾り取りとぅて堪らんのやないか!
 ―― ほんと、底なしのドスケベだよね。最初の頃とかあんなに下手だったのに、今じゃこんなに……っっ、上手におしゃぶりするようになってさ。
 
 廊下の奥からは、キッチン、リビンクと間に二つも部屋を置いて尚響き渡ってくるほどの大声で、アスカの母親が悦がり泣いている。
 トウジとケンスケも、この調子では他のことに注意を向ける余裕などあるまい。
 そして、
『おはよう。レイ姉ちゃん』
 片手にアスカの下腹部に使っているものと思しきリモコンを持って、ムサシがそこに立っていた。
『すごいよな。起きだしてきたかなと思ったら、あっという間にこれだぜ。昨日は何時までヤってたのかしらないけど、トウジ兄ちゃんたち遅刻は平気なのかよってさ』
 アスカが応対に出ている間に身に付けたのか、それとも一晩中着たままで年上の美少女との行為に耽っていたのか、彼の通っている小学校の制服である半ズボン姿。そして、もう片手には自分の靴を携えていた。
『ムサ、シぃぃ……』
 何かを言いかけたアスカの目の前で、リモコンの目盛りがくくっとMAXに引き上げられる。
『ヒィ―― ンッッ!』
 大声でだけはと歯を噛みしめたのがアスカの精一杯。即座にこの敏感過ぎる躯をした少女の背筋は『くんっ』と反り返った。
『ふぐ……っ、フッ、ふ、フぅむムムーッ!』
 全身のわななきが、喘ぎ散らす以上の明瞭さでもって与えられた快感の程を訴える。
『アスカ……』
 聞いているだけでまざまざ、レッスンの最中のようなあやうい気分が胸に蘇り、レイですら内心たじろがざるをえない。
 ムサシはといえばもっとあからさまで、たちまち半ズボンの前をテントよろしくの勃起状態にさせてしまっていた。
 それも納得の艶めかしさが、うずくまるアスカが中腰に持ち上げて狂おしげによじらせる、パジャマの双臀にはあったのだ。
『ひんっ、ッ、ンンンん……!』
 忙しない身悶えに、見る間にだらしなくずり落ちていくパジャマズボン。
 ずり落ちたぶんだけ上着の裾からちらちらと上の方を露出させたアスカの生尻は、彼女が下着を履かずにいることを示している。
 そうでなくても、やわらかい生地にぴっちり浮かび上がった発育の良い桃尻ぶりだ。
 ムサシの目などにはふりふりといかにも美味しそうに振りたくられ、自分を誘って見えていることだろう。
『ぁンあ、あ、アッ……はうっ、ああん、ああぅンン! くぅンンンーッ、っーッ』
 たかがスイッチ一つで。そしてあまりにも鮮烈で、扇情的な反応だった。
 アスカに使われているのは男性器を模したバイブレーターか、そこまで大げさなボリュームを持たないピンクローターの類か。アスカの躯の―― そしてレイの躯のもだが―― 急所を熟知するムサシの仕業だとしても、これだけいきなりの悦がりっぷりを引き出すには相応の手管、道具、仕込みが必要なはずだ。
 目付き険しくレイがムサシの手にあるリモコンを確かめれば、それは彼女にも見覚えがあった。
(あれは……)
 自分も使われているのだ。見分けが付くのは当たり前。あれはムサシたちに与えられている淫具の中ではまだしも大人しめの部類、ごく普通の―― 別にトゲだの枝だの触手だのが生やされているわけではない、ただつるっとした表面の卵形をしたピンクローターのリモコンだ。
 なら、“それを使われたぐらい”で、こうもアスカが身悶えしてしまっているということは、
(……よっぽど、朝までが酷かったのね)
 なにか切っ掛けがあれば容易にまた火が燃えさかり始める。それぐらいにトロトロに、一晩掛けて犯し抜かれてしまっていたのだろう。その“仕込み”が効いていて、あっさりアスカは官能の炎にまともな意識を焼き払われそうになってしまっている。
『やめ……て……。奥に、奥にいるのに……気付かれ、ちゃう……』
『大丈夫。大丈夫だって。トウジ兄ちゃんもケンスケ兄ちゃんも、アス姉のママのおまんこに思いっきり気持ち良く朝イチのをドピュッってするまで、何にも耳に入らないって』
『あんた、わぁ……』
 フッ、フッ、フゥゥゥ……とふいごのように荒い息を口元にあてがった両手の隙間から漏らし、玄関のタイルにへたり込んでいるアスカに代わって、レイは少年を難詰せねばならなかった。
『なにを考えているの? あなたももう、学校に行かなければならない時間のはず』
『まぁね』
 ムサシはにやにやとしながら肩を竦めた。
『アスカも支度をしなければいけないわ。あのひとに呼ばれてきたのだもの』
『だから、もう止めとけって?』
『奥の彼らにも、いつ気付かれるか分からない。……それに』
 今日、アスカの家にムサシ少年が泊まりこんでいるとは聞かされていない。
 レイは冷ややかに言って、確かめた。
『言っていないのでしょう? なら、これはあなたの独断ということだわ』
『まーねー』
 ムサシは悪びれもせず頷く。
『たしかにユイ先生に言われて来たのとは違うけどさ。だけど別に、課題が出されなきゃアス姉とレッスンしちゃいけないってわけじゃないじゃん?』
 言ってみれば、“自主練”だよと。
 不貞不貞しい態度のムサシは玄関の上がり口に立っているため、三和土にいるレイ達とは今は顔のある高さに差が無くなっている。
 同じ目線の高さでレイに応じ返してくるこの時の目付きは、いかにも余裕綽々といったものだった。
『あ、ヒミツのトレーニングって言った方がカッコ良いかな? ほら、レイ姉ばっかりレベルアップしてシンジ兄ちゃんに気に入られちゃったら、アス姉としちゃ危機感ばりばりになって当然じゃん』
『アスカも同意してのことだと言うの?』
『そーそー。別に俺が無理言ったとかじゃなくてさ、アス姉もジシュレンするってOKしてくれたわけだし。だからこうやってアス姉の家で、アス姉のベッドでもって猛特訓とか、俺的に今日は記念日! っていう素敵展開になってたわけだし』
 そう言って、いかにも嬉しそうにふんぞり返るのだ。
『そう……』
 レイは、いまだに声を殺して身悶えするばかりで、ムサシの言い分に反論しようとしないアスカをちらりと見やった。
 おそらく―― ムサシが言っているのは昨晩の事情の全てではあるまい。
 しかし、一応の流れとしてはあながち嘘ばかりというわけでもないのだろう。
 たしかにアスカはムサシの訪問を受け入れ、そして自分の部屋に入れたのだ。拒むという選択をせず。
 そうして同意の上で、朝までずっとセックスをしていたのである。
 シンジを奪うための、隠れての特訓。そうわざわざムサシが口にしたのは、レイからアスカに味方しようという気持ちを無くさせるためだと察しは付いていたが、
(……けれど、あなたが言っていたように仕方無くというわけだけでは、無かった)
 後ろめたそうにしている。レイは、何も言わず、顔をこちらに向けようともしないアスカのそぶりを、そう読み取ったのであった。
 であっても、レイの役目はアスカをシンジとの登校に間に合わせることだ。
『いずれにしても、もう時間だわ』
 ―― 楽しく“玩具”で遊ぶのは終わり。あなたももう学校に行く準備をするべき。
 アスカのことは頼まれていると、レイはユイの名前を持ちだし釘を刺した。
 最低限、キョウコの寝乱れた肢体に起床早々溺れたトウジやケンスケが我に返る前には、ムサシはこの家から痕跡を残さずに立ち去っていなければならない。アスカにもシャワーを浴びて全てを誤魔化す時間が必要だろう。
 タイムリミットである。
『あー。そっか、アス姉は女の子だもんなぁ……。髪乾かすとか、手間かかるんだっけ』
 ちょっと時間読み違えちゃったかなと、ムサシは頭をかいた。
 けれども、そこで反省したまま素直に事を納めるほどムサシは可愛げのある性格をしてはいない。
『しゃーないか。じゃ、良いよ。アス姉は』
 そう言って、鷹揚そうに頷いて許しを出す。完全な上から目線。
 でも代わりに、と。
 ムサシはレイに要求したのだった。
『俺もほら、これどうにかしないとガッコー行けないし。それに折角レイ姉も来てくれたんだし、ひとつ“朝のアイサツ”ってやつしていってよ』
『…………』
 レイの唇による奉仕を、アスカに対する欲情によってそそり立った己の勃起へと『頼むって』と、気軽な口調で強請ったのだった。
『ほらほら、アス姉は早く準備しなくちゃ。ローターはシャワーの後でまた入れといてくれれば良いからさ』
『あんた……。まだアタシをおもちゃにしようっての……?』
 ようやくOFFにされたローターの責め苦から解放されたアスカが、恨めしそうにしながらなんとか立ち上がる。
『違う、違う。自主練だって、自主練。特訓しなきゃさぁ、優等生のレイ姉には勝てないかもなんだろー?』
 レイの見ている前で、アスカは更になにやら登校中の時間をつかってムサシに付き合うよう言い含められたようだった。
 ふんぞり返るムサシは、アスカがこれを断るかもしれないという可能性については微塵も考えていないという態度を始終とり続けている。
 ―― 何かがあったのか。
 レイはかすかに目を細め、アスカとムサシのやり取りの様子を観察した。
 アスカが、万事につけムサシに頷かされている。
 いちいち口答えをし、悪態をついてはるが、否とは言わずに要求されるすべてに『分かったわよ』と返している姿は、いっそあの勝ち気な惣流・アスカ・ラングレーにしては殊勝だと言ってすら良い。
 本来、ユイの後押しがない場所でのムサシの要求にはアスカは従う理由が無いのだ。
 ムサシたちの傍若無人は、全てはユイの『レッスン』においてであるからこそアスカやレイは従ってきた。
 で、あるはずなのに。
 アスカとムサシの間で、力関係が逆転するようななにかがあったというのか。

『……いいわ』
 レイは頷きを返した。
『レイ……?』
『あなたは早く支度をしてきて』
『え、ええ……』
 こんな場面でムサシの要求にレイが頷くというのも、これまでであれば無かった話である。
 アスカもまた、レイのらしくない返事に戸惑ったようだった。
『まさか、レイも……』
 などと口籠もりつつ、気にしながらの様子で自分の部屋に引き上げていく。
 そしてレイは、こちらもこうも簡単に自分の言うことを聞いてくれるとは思っていなかったらしいムサシがほくほくとして半ズボンのファスナーを下ろした前に、
『あまり、時間はかけられないわ』
 そう断って、跪いたのだった。





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From:【母子相姦】淫乱美母ユイ3【寝取られ風味】