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君はその場に座り込み、男の持っていた機材を奪うとファインダーをのぞき込んだ。 君が持っていた旧式の機材とは比べ物にならない高性能のカメラは、くっきりと遠くのマンションの様子を捕らえている。君は技術革新の素晴らしさに舌を巻いた。 これならきっと良い絵が撮れることだろう。 男の言葉と写真から、だいたいマユミの住んでいる階はわかっている。 あとは獲物を待つウツボのように、じっくりと待てばいい。 君の背後で、ごそごそと男が部屋から逃げ出す音が聞こえるが、男にも後ろめたいことはあるのだから、警察に駆け込むようなことはしないだろう。 君は安心して覗きを続行した。 数時間後。 君は全く姿を見せない、もとい窓際に近寄らないらしい獲物に焦れ始めていた。 確かに動く影があることから、室内にマユミがいることは確かなのだが、一向に窓際に近寄ろうとしないのだ。いや、近寄ることはあっても蛭からカーテンを閉めっぱなしでは中を覗くことなど出来ないだろう。 (くそ、なんなんだあの女は) まさか覗いているのがばれている? なにがしか怪しい視線を感じたとしても、だからといってそこまで考えたりする物なのか。 (まあ良い。いずれ窓を開けるときも来るだろうし、その内警戒も薄れるだろう) 君は長期戦をする覚悟を堅め、これから毎日通おうと心に誓った。 しかし、残念ながら君の目的は果たされることはない。 君がファインダーをのぞき込んでいる丁度その時、怪しい光が見えるという住人からの通報でパトロールをしている警官が階段を上っているところなのだから。 痺れるほど座り続けていた足ではすぐに応戦することも逃げることも出来ず、君は抵抗空しく捕まるしかない。 さらにもし、君が拳銃を持っていたりしたら…。 ポンと肩を叩かれる。 |