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 正面から乗り込むのは監視の目がある。
 だが、人気の少ない駐車場からならどうだろう?
 君は搦め手で中に入れないか確かめることにした。あまり期待はしてないが、うまく行けば万々歳だ。
 しかし、ざっと見たところ監視の目が行き届いていることがわかる。
 駐車場の入り口付近で微かに動くものが見える。

(やっぱり監視カメラがあるか)

 当然と言えば当然だ。
 ここのような高級マンションに限らず、いまや普通のマンションにも常備されているくらいだ。ない方がおかしい。

 しかし…。

 ぺっ。

 忌々しげに君は泡で白くなった唾を吐き、値段相応に鉄壁の守りを持つマンションを睨んだ。

(あるとわかってれば避けることは出来るのさ)

 君はまるで影になったかのように密やかに駐車場に近づいた。
 偶然か、それとも幸運か。
 君の姿は誰にも見とがめられなかった。植え込みを利用して体を隠しながら、稼働域の少ないカメラの死角をすり抜けていく。君の五体は易々と駐車場内に入り込んでいた。

(ざっとこんなものさ)

 学生時代、女生徒に変態と罵られながらも磨き上げた技術はまだ曇ってはいなかった。
 とは言うものの。
 駐車場からマンションに通じる通用口の所には、鉄壁とも言える角度で監視カメラが設置されていた。
 それだけではない。通用口の扉は頑丈な鉄製で、しかもIDカードにより施錠されている。マンションの住人以外はお通りご遠慮願います、と言うわけだ。持っているだけで罪となるピッキングの工具があったとて、今の君ではどうすることもできない。

(だろうな。だが予想はしていた)

 だから君はあまりガッカリとはしていなかった。
 いずれ堂々とこの場を通り過ぎることも出来るようになるだろう。
 その時こそ、何の罪もないのにただそこにいたと言うだけで、神の名の下にモーゼ達に虐殺されたカナーン人のように、彼女は君の下で這い蹲るのだ。

(…待ってろよ)

 君は不気味な笑みを浮かべた。楽しみは待つ時間が長いほどいい。
 その時が来たとき、よりいっそう楽しめる。君は邪悪で淫靡な期待と共に舌なめずりした。

 さて、君のとった行動は?



 もう少しこの場を調べる

 監視カメラに手を振ってみる

 今は様子見だ。この場を立ち去る





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