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(焦ったらまずいことになるだろう)

 そう判断した君は、もう少し情報を集めることにした。なにしろ今の君が持っている情報と言えば、マユミがこのマンションの住人であること、シンジと結婚して1ヶ月だということ、シンジは現在アメリカに仕事で行っている、帰ってくるのは少し先になるだろうと言うことだけだ。
 つまり、1週間ほど変質者よろしくこの辺りを彷徨って、何も情報を仕入れられなかったに等しい。

 情報は貴重だ。
 曲がりなりにも、ジャーナリストになりたいと考えていたこともある君だ。
 情報の重要さは良く知っている。

 マンションのセキュリティ、住人構成、それよりなにより目標の情報。
 何階に住んでいるのか。他に同居人はいるのか。

(だが、まだ引っ越して間もないあいつらは、周囲にそれほど知れているわけじゃない)

 管理人に聞くならともかく、周囲の人間に対する聞き込みは限界だ。それでなくとも怪しまれているのだから、これ以上不自然な聞き込みはしない方が良いと君は考える。
 となると、どこかで監視することになるのだが…。
 今の君の手元には、学生の頃の遺産とも言うべき望遠レンズ付きのカメラがある。事を成したとき、脅迫の材料を作るために用意した物だ。いささか古くなったが望遠鏡の代わりくらいにはなるはずだ。

 さて…。

 年代物ではあるが、このカメラは100m以上離れたところからでも、まるですぐ隣にいるように写真を撮ることが出来る。さすがに、昨今の最新式に比べるべくもないが。それでも、マユミの着替え中の姿や、人に知られたらマズイ脅迫できそうなネタが拾えるかも知れない。そうならなくても、なにがしかの情報は手にはいるはずだ。

(着替え…いや、独り寝の寂しさを紛らわせるための自慰行為でも撮れたら最高なんだが)

 服の上からでもわかる豊満で柔らかそうなマユミの胸を想像し、君は股間の分身をいきり立たせた。はやくマユミの泣き顔や、胸の谷間に欲望の毒液を吐き散らしたい。そして絶望のすすり泣きを堪能するのだ。
 そしてそのすすり泣きが官能の喘ぎ声になることを想像する。



 白く肉付きの良い腰を抱え、とろけるような快楽の中、ケンスケは無言で腰を振る。ぐちゅぐちゅと淫靡な水音が響き、痺れる刺激が背筋を貫くと共に体と心両方の満たされない物が解消されていく。
 マユミの白い体が淫らにくねった。

『や…あっはぁっ、はくっ』
「おいおい、最初の頃泣きわめいていたのが嘘みたいじゃないか」
『あ、あああっ、あああっ……い、言わないで』
「くくくくっ」





 中も外もケンスケ色に染め上げる。全てを俺で満たしてやる。
 想像だけで射精どころか逝ってしまいそうだ。君は暴走しそうになる思考を落ち着かせ、これからどうするか考える。

(情報が必要だ。もっともっと…な)

 ある程度下調べをしていた君は、最善と思われる監視ポイント三つに絞った。
 すなわち

 公園の茂みの中
 マンション正面の緑地帯の木の上
 ビル建設途中の工事現場



 最も距離が近く、監視に向いているのは木の上だ。
 だが、さすがに大胆すぎる嫌いがある。誰かに見とがめられたら、言い訳しようもないだろう。
 工事現場はなにか理由があって工事が中断しているようだが、人気が全くなく、身を隠す場所も豊富そうだ。しかし距離が些か遠い。
 公園の茂みはその中間だ。





 さて…。






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