Dating history

Original text:引き気味


『 09:GIRL MEETS GIRL 』


「――あのねぇ」
 お尻に引っ張り上げようとするショーツを太股の途中で止めたままのアスカ、痺れを切らしての一声だった。
「いい加減にしなさいよって、今更はっきり言ってやんなきゃいけないわけ?」
 朝から汗の浮いた裸同士で三人、一夜を明かしたケンスケの部屋。まだ大人ほど伸び切っていない体とはいえぎゅうぎゅう詰めで一つのベッドを分け合い、目を覚まして先に床へ這い出たのは彼女の方だった筈なのだが。
 雑多に散らばった下着を探して身支度をしようとしている無防備な格好に向かって、気が付けばしきりにズーム音とシャッター音を繰り返し、カメラを構えていたケンスケ。
「今更ねぇ」
 皮肉っぽい言い方である。
「惣流って、そういうとこあるよな」
「……なにがよ?」
 肩をすくめてみせたのだろう。
 いつもがそう。アスカが寝床の中で可愛いぜと囁かれてすら、そんなニュアンス含みに受け取らせてくるのがこの少年だった。
 そのケンスケに昨晩、脱がされただか自分で脱ぎ捨てたかだかしたショーツより先に雑多な床から拾えたのがブラジャーで。早くブラシをかけたい有様の髪を背中で払いながら着けていった、その辺りでもうパシャパシャと遠慮もなし。
 アスカがどんな苦々しい顔をしていたか。
 それが背中越しだったからといって、そろそろ自重しときなさいよと出してみせたサインが伝わっていなかったわけがない。
 それこそ今更の間柄だ。
 通じ合っているだのとポジティブに飲み込める経緯を経てだったのとは違うにせよ、昨日今日始まった関係ではないのだから。
 現状としてはこうしてもう一人の裸の女の子、綾波レイを交えてケンスケの家で夜を過ごし、朝を迎えてしまうぐらいの爛れた仲で。ヌード姿を撮られるのにしてみても、ここまでくれば嫌がってみせる理由を逆に問われた方が却って言葉に詰まってしまう。当たり前に中学生女子の羞恥心だと言ってみせたところで、失笑を返されるのが関の山。なにしろ程度の最悪なものになると、アスカ自身が秘部に深々と飲み込んでみせた牛乳瓶越し、透明なガラス底一枚向こうでヒクヒクと淫猥に痙攣する子宮口をばっちり写されてしまったことすらあった。
 ――そんなド変態写真を喜んで撮らせたようなやつが何でこの程度、裸のケツだのぐらいで?
 実際に聞かずとも、そんな厭らしく揶揄ってくる声がありありと思い浮かべられる。
 それぐらいあれこれ許してしまう迄に至っていれば、ため息に近い息の吐き方一つ、床に転がった自分のものではない下着を雑に足で払う仕草一つ、それだけで意図を汲みなさいよとやってみせる程度には、相互理解というやつも成立していた。
 アスカの方にしてみたところで、ケンスケがそういった全部を承知の上でニヤニヤしつこくレンズを向けてきていたのが、振り返ってみずとも分かっていたのだから。
 だが、『アンタとは体だけの付き合いなんだから』と一線の存在を日頃ことさら強調しているのがアスカだったのだ。
 認めないと繰り返しながら実のところ、ふとした場面では都合良く馴れ合いを要求しているというのは――自覚出来ている以上に馴染んでしまっているということだ。
 要は甘えなのだ。間違いなく。
 それを恋人であるあの優しい少年にではなく、良く言ってもセックスフレンドでしかないケンスケに向けている。

「いやぁ、可愛いと思うぜ?」
 大体のところを看破出来て、楽しんでしまえるケンスケだからだろう。まばゆい美貌に恵まれたのと裏腹に、その気の強さプライドの高さが折々で人間関係の妨げになってしまっているこのアスカを、掌で転がすようにしてしまえているのは。
「だから何がよ。また何かヘンな撮り方してるんじゃないわよね……?」
 不安を覚えさせられたのか、向けられたカメラの位置からだと自分の裸のどこがどう見えてしまっているのかを気にし始めたアスカに、ケンスケはわざとニヤニヤ、いやらしげな口元を作ってみせるのだった。
「や、惣流が朝から男の目の前でぷりぷりさせてるお尻がさ。ほら、一歩そこで右足外側にずらしてくれれば、丁度射し込んできてる朝日で浮かび上がるだろ? 惣流のマンコの、ちょんとハミ出したビラビラの輪郭が、ケツの間に」
 閉め切ったカーテンの隙間から一筋になった光。それが偶然にも、アスカが突き出しているつるりとしたヒップに位置を揃えている。
 丁度真ん中に向かって、もう少しまっすぐの角度に立ち方を合わせれば、アヌスの窄まりを狙い撃ったかの具合で照らすぐらい、図ったかのように。
「なんなら日が当たる方だけさ、惣流の指で開いて見せてくれてもいいぜ?」
「……はぁ?」
 まだアスカは振り返りもしていない。それでも、挑発に覿面、眉をピクリと吊り上げたのに違いない尖った声。
「別にいつものことじゃんよ。昨日も綾波と二人でしてたみたいに、股ごとおっ広げて両側からくぱぁって全開御開帳するよか全然ヌルい格好だろ〜?」
 さあっと、アスカの耳たぶが朱に染まった。
「ほらぁ。惣流のマンコのさ、綺麗なピンク色してるとこ、尻越しにちらっと見せる感じで。ほらほら、ほらぁ。朝日のせっかくのスポットライトだぜ。少しでも角度が変わったり雲が掛かったりしたらおじゃんになっちまう」
 自然現象である。
 偶然に条件が揃ったこの状況には、タイムリミットがある。
 だからというのはケンスケが口にする都合でしかなくて、アスカが急かされる謂れはないのだが。
「な、あ、アンタってば……!?」
 嫌よとにべもなくするでもなく、こんな感じのポーズで良いのかしらと開き直ってみせるでもなく。その中間めいた態度でぎくしゃくと煩悶してみせていたアスカの傍らを、その時、
「…………」
 ついと寝床から猫が降り立ったようにしなやかな仕草で、レイが横切ってみせた。
 自然とアスカたちの視線が注がれる前を何の躊躇もなく、綺麗な曲線で上向きになった乳房を隠しもしないで平然と、太股からつま先まで一点の染みもなく真っ白な両足を動かして。
 途中、
「いつもそう。言われたから仕方なく――。あなたはそういう言い訳を欲しがってばかり」
 冷ややかなぐらい淡々とした目つきで一瞥をくれていく。
「碇君にお願いできないくらいの、いやらしい事をしたい。理由があるのはあなたの方なのに。だからここに来ているのに」
 それなのに、人のせいにしようとする。
 そう言って。
 珍しいことにレイにしては分かりやすく、当てつけなのだと意図もはっきり。床から自分の下着を拾ってアスカと同じブラジャーをまず着けた格好になると、同じようにショーツを履きかけた途中で姿勢を止めて、ケンスケに声を掛けたのだった。
「カーテンを開けて」
 自分にも光が当たるようにと。
 言う間にも手をやった先は彼女の青白い尻肉に。年齢相応以上に肉付きが薄い尻たぶ片方を掴んで割り開いて、そこから伸ばした指先をアスカよりもまだ幼いつくりをした、まっすぐ縦溝の媚肉へと届かせる。
「私を撮ればいいわ」
 それこそためらいも無い。
 見るからに未成熟ながら既にたっぷりと男の味を覚えた女性器をくつろげ、花弁の片側に引っ掛けた指先を開いていって。
 そうしてカメラを意識した方向へ自分の手で、
「……こうすれば、良いのでしょう?」
 秘肉の内側に閉じていた花びらの薄白い桜色を、粘膜の色づきを、蕾を割るように淫らがましくさらけ出してみせる。

 もっと近い場所から覗き込まれたこともあるし、そもそもが恋人でもないその指を突っ込まれて散々にまさぐられたことも、録画を撮られている前で注ぎ込まれたばかりの精液が奥底から垂れ落ちてくるのを晒したこともある。
 綾波レイとて、他の誰とも変わらない思春期の女の子の一人。そこは羞じらいの極地たる場所だ。
 本来であれば恋人にだけ許すことが認められる、神聖な愛の儀式のための器官。
 またそこを、別の少年の見詰める前に差し出してしまう。
「んっ……」
 こんな媚びの売り方をどころか、フリでもにこりともしない鉄面皮娘を貫いているのが学校での彼女だ。
 機械じみたルーチンを回して日々を過ごしているようなものだったレイが、年頃らしい気持ちを育てるまでに変わった相手の少年、シンジですら、知っているのはもっと楚々とした恋人の姿に留まる。
 あんなものはセックスじゃなくておままごとじゃないかとケンスケが言い切ってみせる所以だ。
 この頃のレイやアスカはそこに反発こそ覚えはしても、はっきり否定してみせることは出来なくなっていた。
 なにしろケンスケが彼女達に教え込んだのは、ただセックスと呼ぶだけには収まらない度を越した行為の数々。許容限界を振り切って中学生少女の精神を変質させ、引き返すのも覚束ないと立ち竦ませる深い暗がりに似た、狂気のエクスタシーだったのだ。
 それも、おぞましい中毒性を持った。
「随分、前のめりで来るじゃん……」
 レイにそういったポルノ女優まがいの所作を仕込んだ張本人のケンスケであっても、思わずといった体で洩らす。
 常のポーカーフェイスめいた表情を崩していなかったわりに、レイのそこはもうじんわりと物欲しげな蜜を滲ませていた。
 ふぅ、ふぅっ――という、静まり返っているからこそ聞こえてきてしまう微かな呼吸の乱れも。
 それらこそ、この口数の少ない少女の、表面上の素っ気なさそのままで見てはならない今の真実を示すものだ。
 綾波レイの恋人を主張できるたった一人である筈の少年も知らない、男の劣情を羞恥の源泉に浴びることでゾクゾクと背筋を震わせてしまえる、今のレイの。
 隣で『うーわ』と首を振るアスカから見ると、微笑みにも近いそれが小さく口元に浮かんでいる――。

「……変われば変わるもんだよね」
「どの口で言うのかしらね」
「こういうのは男の方だけゴリゴリ押してったって、空回りするだけなんだよ。綾波の素質だよ、素質」
 三人で入り混じって交わっていた昨晩の格好そのままなのは、レンズ越し目線を気取っていた少年も同じだ。ベッドであぐらをかいていた股間が目に見えて力を漲らせていく。
 言われた通り、ケンスケはカーテンを開けてやった。
 指し示すような一筋の光ではなくなったが、窓から飛び込んできたのはこの日最初の爽やかな陽光。この年齢なら常識的に言って花も蕾のままであるべきだったイノセントな裸身を、まばゆく輝かせる。
 じっとりと浮かんだ扇状的な汗ばみさえ、燦めかせるように。
 白過ぎるくらい白い素肌なればこそ、まず目を引くのはそこ。ほっそりとした儚げなうなじに、さらに下って背筋を這っていくラインの上、順番に点々と刻まれている赤い鬱血の跡。数時間前のケンスケが強く吸って付けていった、キスマークだ。
 アスカの躰にも幾つも残されているのと同じ。
 そしてレイのアルビノに生まれついたが故の虚弱めいた青白さも、見ていれば次第に薄ピンク色へと、淫蕩な火照りを帯びつつある風であって。
「アンタ、なに朝からがっついてんのよ」
「…………」
 横から割って入られたという反感もある。アスカは唇を尖らせたが、レイはまったく意に介した様子を見せなかった。
 彼女のことは良いからと言わんばかり。さぁ撮ってと更に潤みを増しゆく場所を差し出して、双臀を揺らめかせる。
「大したもんよね。なによ、起きたと思ったらもう男に尻を振って欲しがって。サカリの付いたメス犬みたいじゃないの」
 面白くない顔をしたアスカは、ハンッと鼻を鳴らした。
 いかにも興が削がれたわという口ぶりを作ってみせた後はさっさとショーツを引き上げてしまい、我関知せずというポーズ。拾い上げたブラウスを羽織っていく。
 レイの痴態からもそっぽを向く。
 背中を見せたままボタンを留めていくのは、朝からおかしな熱気に当てられてブラの下で主張を強めはじめていた乳房の先端を、ツンと尖って疼きだした乳首を隠したかったからだった。
「この子のバージンを奪ったのはたしかにバカシンジだったかもしれないけど、上手いことオンナに目覚めさせてみせたのはアンタの方だったってわけよね」
 カメラを構える先をあっさりレイに変えてしまったケンスケへの嫌味も忘れない。
 もっとも、当て擦ってみせたつもりだろうと、
(それは褒め言葉になるんじゃないのかな?)
 と、当のケンスケからしてみても苦笑するしかないそれは、調子を狂わされたアスカの不貞腐れ以上のものではなかったし、
「あなたも同じだと、自覚があるからなの?」
 レイにも言い当てられてしまった彼女自身、履き直したばかりのショーツの中心に、小さく楕円の染みが浮かび始めるぐらいになっていたのである。


◆ ◆ ◆


 ――火が、着きやすくなっている。
 ことにこの相田ケンスケが作る淫らな空間であれば、驚くほどに気持ちの在り方の切り替わりが早くなってしまっているのは、さすがにこうなってしまった今になろうと直視し難い事実である。
 セフレだの調教されてるのよねだの、こういうシーンでなら冗談めかして口にしてしまえるぐらいになったアスカであっても、十四歳の少女としての気持ちを捨ててしまったつもりはない。
 いくら、昨日のアスカが後でレイもやって来て混ざるのだと分かっていて、それでも黙ってケンスケの家に連れ込まれるなどという真似をしていたにしても。
『……ほんとに来たのね。良かったのかしら?』
 半ば確信していたにせよ、シンジとの週末の逢瀬の順番を日も暮れ切らない早々の内で切り上げたその足でやって来るという真似をした、呆れるばかりのレイと、二人並んで代わる代わる尻から犯されるのを悦ぶような醜態を晒していたにしても。
 そのレイを、女同士の性愛でぐずぐずに泣き叫ばせてみせろと指示されて。嫌悪感と同じだけ以上に興奮して異形のペニスバンドを装着してみせたりもしていても。
『あっは、ははははは。なによ、レぇイ。アンタ、あたしにこの作り物のおちんちんで犯されてイッちゃってんの? お漏らししたみたいにビショビショじゃないのよ。こんなに乳首もカチカチにさせて!』
『……ンン゛ッ、あっ、あうっ。そんなに……乱暴に、なんて……!』
『良いわよ、呆れた淫乱女なんだから。おっぱいも揉んであげる。思いっきりよ! 嬉しいでしょう?』
『あう! っア、アッ、アアッ――』
 アスカにそのケは無い。同性愛への興味は無い。
 ケンスケに言われたから相手をしただけのことだったが、過去には「人形女」と罵ったこともある程度には嫌っていたレイを組み敷いて、男さながらに突き上げてやる度、これで随分強情な女が喉首を晒して喘ぐのを見下ろすのは痛快だった。
『止めてって? あはっ、嘘でしょう? 相田とヤッてる時は自分からグイグイ腰を持ち上げて、タコ踊りみたいに無茶苦茶になって悦がってみせてる癖に!』
 自分とは方向性の違う美少女なのだとは認めていた端整な顔立ちが歪み、悩ましげな愉悦の表情から悔しそうに涙目を寄越してくるのは、アスカの子宮を大いに熱くさせたものだ。
『ンッっ、凄い……じゃないの。シンジの前じゃカマトトぶってるくせに、こんないやらしい腰使い覚えさせられちゃって』
『っッ、っふッ、ふぅぅ゛ッ。ンンッ』
『それとも、あんたの大好きなアイツにも、もう披露してやったのかしら?』
 恋のライバルでもあった相手。それを思う様にベッドの上で追い詰め、シーツを掻き毟らせ、えも言われぬオンナの音色に彩られた啜り泣きを絞り出させてやれる、手応え。
 アスカをいつの間にか夢中にさせるのには十分だった。
『あなた、だって……! ッああっ』
『なに? なによホラ。女に責められてそんな必死の顔して、瞼がピクピクしてるわ。またイキそうになっちゃってるんじゃないのかしら?』
 元より、用意されていたレズ愛戯のためのそれはベルト固定式の双頭ディルドだ。ケンスケの調整しておいた両側の長さは、おおよそ二人の膣にずっぷり収めきってしまえるぐらい。だから少女たちは乳首を硬くさせた裸の胸をぴったり合わせて、互いで懸命に腰を揺って励んでしまうことが出来る。
 レイの足首を掴んで太股を開かせたそこに自分の同じ場所を擦り付けるようにする度、アスカの膣内に挿入された樹脂製の亀頭もまた、愛液でしとどになった敏感な部分を小突き上げるのである。
『あうっ! はぁあ――ッ、っ! やめ、やめて……っ。あああっ、ああンッ。もう、もう――っ!』
『イキなさいよ! 二度とアタシの見てる……前で、お高く止まった顔なんか……んンンっ、出来ない、くらいッ……。ンッ、ンッ、みっともなく悦がったまま、イッちゃいなさいよぉ……!』
 いつしかケンスケという観客を傍らに置いての、そのリクエストに応える為という意識は消えてしまっていた。
 淫らに苦悶するその美しい表情が見たいと顔を寄せてみれば、泣き濡れた赤い瞳の思いもしなかった弱々しさにドキリと胸を突かれ、
(……!? なによアタシ、やだっ)
 思わず、その赤くつやつやした唇に吸い付いてみたいと思わされていた。
 そして、ビクリとうち震えてのレイのアクメ声につられた、脳裏が痺れる絶頂。
 惣流アスカともあろう者が同性相手に、それもこともあろうに綾波レイに欲情したなどとはあってはならないことであるから。その後の彼女の攻めは、一気にサディスティンになりきっていた。
 レイの乳首に歯を立てて苛め、包皮から剥いたクリトリスを強く揉みこねて首をのたうたせる様を愉しみ、命じるのに従うように声を上げて追い詰められていく恨みがましい目つきに、大いに溜飲を下げたのだった。
 気に入らない筈の同級生に覚えた倒錯した欲望にではなく、屈服させた満足感によって興奮したのだと、自分を納得させるために。


◆ ◆ ◆


 ――その仮初の支配服従関係じみた感覚を、夜が明けての今もアスカは引きずっていたのかもしれない。
「……言ってくれるじゃない。えっ、何かしら。わたしも同じ? 同じってアンタ、どんな破廉恥な自分を思い浮かべてからアタシもそうだって言ったのかしら?」
 隠したい不都合があると目をそらして落ち着かなくなるのがレイだが、アスカの場合はこの喧嘩腰を作ってみせるところ。
 そして、今朝のレイにはそれに付き合ってやらなければならない理由は無い。
 高飛車に命じられるのに従って、まるでケンスケのような座り方で胡座をかくアスカの股ぐらに這わされ、濡れたシミだらけのベッドシーツに跪いたまま疑似フェラチオめいた奉仕までしてやったのは、ただただそうしろよと指示があったからなだけ。
 従っていたのはアスカにではない。ケンスケの言葉にだ。
 勿論、自分の口で清めたばかりの模造ペニスで喉が枯れそうになるまで散々悲鳴を上げさせられ、意識を失った昨晩を、忘れてもいない。
 だから、だ。彼女はアスカがもたもたしている内に、先にケンスケの関心を惹くよう大胆に振る舞った。
 時間を掛けた手管で今やすっかり言いなりになっていたにしても、それにしてもらしからぬぐらい積極的だったレイを、喜びつつケンスケが訝しそうにするのを待って、
「…………」
 レイはただ、じっと視線をそちらへやっただけの物言いたげな態度で、意図を伝えてみせたのだった。
(……ああ!)
 成程ね。ベッド近くに後始末もされないまま転がっていたペニスバンドに気付いたケンスケの理解は早かった。
 カメラポジションを変える振りに紛らせて彼が拾いにいったそれを、そっと受け取る。
 アスカはまだ壁の方を向いて、膨れっ面でジャンパースカートの肩に腕を通している途中。
「んンッ、ぁ……」
 潤いは既に充分だったから、じくじくと疼いていたレイの秘唇はすんなりディルドを受け入れた。
 そしてベルトの金具を締めながら、アスカの背中に近付く。
 レイには、親しい仲という距離感を少しばかり飛び越えてしまっていた友人がいた。転校していった霧島マナとの密やかで淫靡な戯れあいは、今や記憶を反芻するごとに甘やかなものへと美化されていっている。
 思えば彼女の残した置き土産が、レイとケンスケを近付けた。
 自らの友人であるシンジとの交際を承知しつつ、欲望のままレイを毒牙に掛けたケンスケ。助けが入る由もない学校の裏山にレイを誘い出し、レイプした時の小道具がそうだった。
 真偽は定かではないものの、やがてレイの肉体がケンスケに支配されていったことも、マナが望んだことだったという。
 そうした経緯を経て、この恋人を裏切り続ける日々に馴染んでいったレイは、だからアスカと違って躊躇はしない。抵抗感というものは存在しない。
「……! ンンんッ!? アンタっ――!!」
 背後からスカート越しに押し当てられた樹脂製ペニスにぎょっと振り返ろうとするのを、抱き竦めて。
「ンンっッ!? アッ、嫌っ、やめなさ……ッ、っ――んンンンン!」
 顔を斜めに傾けつつ近付けた唇で、下から掬い上げるように彼女のキスを奪ったレイは、
(ンッ、ン、ンン……)
 去っていった友人と交わしていたのよりも随分と濃厚な、そして今にしてみればあの時に覚えていたならと思うノックの舌遣いで、アスカの歯列の隙間へ踊り込ませたのだった。
 嫌がりながらもケンスケが叩くフラッシュを浴びせられているのに気付けば、アスカもやはり肉体を支配された少女。渋々と眉間に皺寄せながら応じる技巧は、同じ相手から仕込まれたもの。ボーイフレンドのシンジとでは披露できない、唇と唇でのセックスだった。
 二人の少女で左右からそれぞれの口腔に誘い、いっぱいに背伸びさせた舌を絡め合う。
 暖かな舌の腹同士を密着させて、ねちゃねちゃと舐め合わせる。
 顔と顔の隙間でふぅふぅと鼻だけの息をし、むせ返るような女の子同士の甘い体臭を吸い込んでいく。
「ンあっ、あっ、アンタ、なに本気になって……。むぅっ、んンむ――」
「はぁっ、はぁ……ぁあん。んむ、むぅっ、ンンぅ」
 互いの唾液でぬらつく口元。息継ぎの傍らに舌先に舐め拭わせれば、それはやはりほのかな甘い味だ。
 ねっとりと溢れた雫が少女たちの顎にも伝い落ちていった。
 上着を着けているところだったその腕ごと巻き付いてアスカを捕まえるレイの手が、強張った上半身を更にきつく抱き締める。
「はぅっ……」
 アスカの胸が大きく喘いだ。
 嫌悪――よりも隠せずにいるのは、まんまと昨晩の意趣返しに持ち込まれたことへの憤りだろうか。それと同じだけ彼女の躯も再びの熱を帯びつつあるのが、手にとるように伝わってくる。
 予感できてしまうからだろう。
(そうよ。あなたがしたいみたいに、今度はあなたがされるの)
 片腕だけを解き、大人しくなっている背中から這わせてヒップを撫ぜた。
「……っ」
 ぶるりという震えには、やはりまだ拭いきれない抵抗感によるものを窺える。
「っ、っッ……」
 そのままスカートをたくし上げていって、下着にふっくらと包まれた下腹部へ向かい、ディルドの切っ先を忍び込ませていく。
 クロッチを脇へのけさせた指に触れてくる、その場所を縁取るアスカのアンダーヘアのしなしなとした感触。いよいよを感じとって慄然とする気配。それらを愉しみながら押し殺された呻きを貪るレイは、一矢を報いるつもりになったのか荒々しい攻勢に出る舌技を迎え撃つ傍らに、ふと思ったのだった。
(こういう、キスの仕方……)
 相田ケンスケの好みに合うよう、彼を歓ばせるために仕込まれた末のこの自分たちのベーゼの技巧。
 どうして彼女は、霧島マナは、何度も自分と口付けを交わしていたあの頃、最後まで教えてはくれなかったのだろう。
 彼女にだってこんな淫らがましい限りのキスをすることは出来た筈なのだ。
 去っていった後になって、託されたような顔をした狡い少年に知らされるくらいなら、その前にマナ自身から教えてほしかった。
 たとえ裏切られていた痛みを知ることになったにしても、そうであったならきっと自分は彼女ともっと、もっと深い歓びで結び付き合うことが出来ていた――。
(そうではないの?)
 答えて欲しい相手はもうこの街には居ない。
 そしておそらくは、答えを出しておくべきなのはこれからのレイ自身。更にはアスカもまた同じ立場にある。
 そこまで考えていけば、顔を強張らせるてしまうのは今度はレイの方だった。
(いいえ、いいえ。今は……)
 一度強く瞼を瞑って脳裏を振り払ったレイは、眼前で長い睫毛を震わせている彼女を見詰めた。
 睨んできているかのその青い瞳の奥で、アスカが何を考えているのか。知りたいと今は切に思う。
(そう、そうなのね、惣流さん。私と、あなたは)
 同じなのだ。
 同じ立場。同じ裏切りを犯し、同じ痛みを抱え、同じ恐怖に怯えていて、同じ罪の味を知った――分かち合うことも出来る関係。
 胸の奥からこみ上げてきたものは、愛おしさだったろうか。
 ぐいと腰を押し付けて、
「惣流、さん」
「ンンッ、んぅーっ……!!」
 男の欲望のかたちを象った、血の通わぬその先端を一気に彼女の秘処に。入り口からずぶずぶと穿っていって、奥につっかえるまで。
「ンッ、ンッ……」
 つま先に力を込めて、尚も深く進ませようとする。
「なによっ、アンタそんなに……ッ。ンンッ、あうぅ……ッ!? アアンッ」
「はぁぅ、惣流さん……っッ!」
 届かせた刹那の反動をレイ自身の膣奥でも受け止めて、腰をくねらせるように喘いでしまう。
 アスカもまた、自分たちに丁度良く調整された太さと長さの逸物に子宮口を押し上げられ、ぶるぶると身震いしているのだ。
 その切なげな嬌声がどうにも嬉しくてたまらなくて、レイはまた彼女の唇に吸い付いていった。
 暴力的に犯し、犯されただけだった昨晩とはきっと違う。
 官能に狂わされる肉体だけでなく、心もまた酔いしれるような快楽が待っているのに違いない。
 じゅんと快美のぬるみがディルドを咥え込んだ秘部に満ちて、涎じみて溢れ出した分が内腿に伝ったのが分かった。
 期待を込めて腰を巡らせる。
「あぁぁあ!?」
 先に声を迸らせてしまったのはレイの方だった。
「ンンンッ! ンッ、ン――ッ!」
 アスカも快美の呻きは隠しきれない。
 それでも素直に認めまいと眉間に力を込めて頑張る意地っ張り具合。引き結んだままでいようとする唇だったが。
 ズッ、ズッと窮屈な媚肉への抜き差しを繰り返してやるごとに、じゅぶじゅぶスムーズさを増していく潤滑具合である。アスカのそこは、慎みもなにもあったものではない程度には雄弁だった。
「ハァッ、っッ、つぅッ……アアンンンッ!?」
 強情娘を壁際に追い詰めての、レイの膝のバネと腰のしなりの柔らかさ。小気味の良いサイクルでそのスカートの奥に向かって突進を繰り返している当人に対し、こうも赤裸々な反応をどう誤魔化していられるというのだろう。
 二人の内腿に伝っていくはしたない雫の量を説明するには、レイの側の淫らな泉だけでは収まるまい。
「ぁ、あっ、ああっ。惣流さん……声を、声を聴かせて……」
 制服姿のアスカを抱きしめる華奢な背中のレイは、いよいよ青白いヒップを揺らしてのリードを強めていく。
「あなたも、気持ち良い? わたし、上手に出来てる……?」
「馬鹿っ、ばかぁぁ……。なんで、アンタなんかにぃぃ」
「……可愛い。可愛いのね、あなた。あはぁぁ……っ」
 借り物のペニスだろうともっとアスカを愛してあげようと、レイは遮二無二に頑張ったのだ。
 もうアスカの手も、ひしとレイの背中に回されている。
 強く抱きしめあって交わり合う二人は、それから声を揃えて絶頂を遂げるまで、ああ、ああ……と震える喘ぎを唱和させながら、本当に仲睦まじく見えるキスを女同士で続けていたのだった。





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From:エロ文投下用、思いつきネタスレ(6)