Dating history

Original text:引き気味


『 08:描く、将来展望』


 碇シンジとしてはどうにか隠しおおせていたつもりだったのだろう。
 ――二股はどうかと思うぜ? という忠告めかした一言。ぽつりと漏らすようにしてそれを世間話の切れ目に差し込まれたのは、路が別々になるまでの下校中のことだ。
「…………」
 アスカから、それと綾波レイの側からすれば二人で共有しているという形になっていたボーイフレンドの少年は、明らかに動揺を取り繕うのに失敗していた。
 その時、オレンジ色になった夕方の日差しで照らされた道の先を歩いていた別の生徒とも距離は離れていたし、大抵の場合は三人でつるんでいたもう一人も居合わせてはいなかった。
「いや、その……」
 シンジが口籠っていた間、横を歩いている相田ケンスケはあえて追求を重ねるような真似も無し。ごくごく平和な内容の、取り留めもない会話を、普段と変わらない調子で続けていたさっきまでと同じ表情でいるままだった。
 クラスの中でも特にシンジが親しくしている友人である。その敏さ、察しの良さが伝わってくる場面はこれまででも何度もあったことだった。
 誤魔化そうとしたところで、何を言えばそれらしく聞こえるだろう。
 十四歳という年齢で友人相手にそんな咄嗟の腹芸をしてしまえるほど碌でなしではなかったのだから、つまりは口籠ってしまった時点で認めていたも同然なのだった。
「まぁ、気付かないやつは気付かないままでいるかもしれないけど。お前ら、――がっつき過ぎ」
「…………。……うぇ、ええっ?」
 何のことを指摘されたのか。一拍置いて理解してしまった哀れな少年は、耳まで真っ赤になっていた。
 大きく見開いた目をそちらに向けて、おろおろとした声で『なんで……!?』と。
「そりゃ、気付くよ。経験の無いやつらはピンと来ないにしたってさ。あいつらの方も最近はもうすっかりオンナの貌してやがるし、お前だってそういう目で惣流とか綾波のこと見てるもんな」
「それ……、えええ? 目つきでって、そんなので分かるものなの? いや、それに待ってよ!?」
 まさかと、いかにも信じられないといった態度を抑えることも出来ず、思わずシンジは訊き返していたものだった。
「ケンスケも、経験……あったの?」
「お前、大概失礼なんじゃないの?」
 事の本当の事情を知っているアスカたちからすると噴飯物な事に、ケンスケはさも傷付いたなと冗談めかした仕草でもって、シンジに肩をすくめてみせたのだ。
「俺にだってそういう相手ぐらい居たさ。……まぁ、今はフリーなんだけどな」
 これもまた、アスカたち二人からすれば呆れ返るばかりの言い草である。
 たしかにフリーだろう。フリーと言ってはしまえるのだろう。
 相田ケンスケぐらい、面の皮が分厚ければ。

 さっきからシンジが二股を掛けているその相手として話に上がる惣流アスカや綾波レイ。知れ渡ったなら学校中の男子生徒が嫉妬を滾らせるような美少女たちであるこの二人自身が、そもそも実はシンジにばかり不誠実を言い立てることの出来る立場ではない。
 少年一人に少女二人の変則的なものながら、ややもすれば初々しいとさえ言えるような恐る恐るの交際をシンジと続けている、その裏で。あろうことか同時進行で今現在も、何食わぬ顔のこの相田ケンスケと肉体関係を持っている。
『無理矢理……されてしまったから……』
 言い訳をすることを覚えた綾波レイは、視線を俯けながらそう口にするのかも知れない。
 シンジに向かっての場面ではなかったが、彼を争っている最中だという以上に普段から折り合いの悪いアスカに事が露見していたのだと、そう知らされた時がこれだった。
『あー、最初はそうだったかもね。いや、はじめの内はね。俺もほら、綾波ぐらい綺麗な女の子をモノに出来たってなったら自重なんか出来るわけないし』
『今はもう全然違うわけでしょ? 誘われたらシッポでも振ってる感じの嬉しそうな顔して、ほいほい股開いてるんだから』
『惣流と一緒じゃん』
『……そうね、アタシと一緒だわね』
 恋敵を一気に蹴落とすことの可能な、そしてライバルであるからこそ許せない筈の醜い裏切りを知って尚、レイを責めなかった彼女。彼女もまたいつの間にか籠絡され、シンジに隠れて行うケンスケとのセックスに溺れていた。
 なにしろケンスケとの関係は、シンジとのそれとは違った。
 楽だったのだ。
 幾ら経ってもきちんと定まった形になれない不安定な恋心だの、お互いの距離感を計りあぐねる臆病さだの、そんな気持ちの機微はケンスケとの浮気行為では一切抜き。ただ、年齢からすれば早過ぎるとしか言いようのない剥き出しの性欲を、互いの未成熟な肉体で貪りあう。
 激しく濃厚な、そして大人顔負けの行為を次々と覚えていって、時や場所を問わずエスカレートさせていく。
 それでもまだ満足できないとばかりに、ネットから様々な知識や道具を仕入れてくるケンスケに引き摺られ、変態的なとしか言えないプレイにまで手を出していっていた。
 シンジの前では自分ひとりを選んでくれない不満に頬を膨らませてみせもしつつ、共に初体験を迎えた恋人同士として焦れったいようなデートを重ね。
 シンジの居ない場所ではケンスケの望むまま校内であってもスカートを捲り上げて秘所を晒し、時には卑猥な器具を迎え入れる様をすらカメラに撮らせて。背徳的なスリルと恍惚で、背筋をゾクゾクとさせていたりもする。

 その日、レイが呼び出されたケンスケの部屋。
 そこでは、レイ自身がほんの数日前に撮らせたばかりのあられもない痴態が音声付きでPC画面に再生されていて、
『すっご……。アンタってば、お人形みたいなお澄まし顔以外も出来たのね。相田がビンビンにさせてるのちろちろ横目で眺めて、なによとんでもない物欲しそうな貌……!』
『綾波はやっぱり控えめだけどさ。でも案外協力的だから、俺が服を脱がせてやる時も上手い具合に体動かして手伝ってくれるんだぜ? ブラジャーだけにした所で胸を揉んでやったら、可愛い声出してくれるし』
『ほんっと。ア……ッ、とか言っちゃってプルプル震えて、あっという間にうっとりし始めちゃってるじゃない』
『乳首ビンビンに固くなってたしな』
 それを肴にしながら抱かれて興奮していたアスカと共に、はじめての3Pプレイに参加させられたのだ。
 顔を合わせる場面は多くとも、そんな欲情に塗れた眼差しを彼女の青い瞳から向けられることになろうとは。以前であれば想像することも出来なかった筈だった。
 女同士でありながら、服を脱いで晒していく裸に注がれた生々しい欲望。全身縛り上げられた上で受けさせられたスパンキングプレイで真っ赤に腫らした跡の残るヒップを目撃しての軽蔑と、そして共感の気配。
 そうして二人が汗みずくになって待ち構えるベッドに上がっていって、恋人とは違う少年の前で全裸になったお互い同士顔を間近にした時の、惨めな理解。それが故の同族嫌悪じみた反発。
 直視し続けるのを耐え難く感じたからこそ、ケンスケのくれる快感に逃げ込むしかなかった。
 二人で争って挿入をねだり、自分たちから股を広げてしとどに濡れた性器を差し出す、より過激なポーズでの誘惑を競ったのだ。

 ――そんな、中学生の少年少女にしてはドロドロの愛欲に塗れた裏切りを友人に黙って繰り返しているにせよ。それは別に、ケンスケとしてはだ。
 アスカやレイに拘束されているわけではないし、ボーイフレンドだとかの義理があるわけでもない。
 彼女たちとはあくまで体だけ。恋人として付き合っているのではないのだから。
 だから平然と、友人に向かって自分は今別に誰と付き合っているわけでもないと言ってしまえるのだった。

「ああっと、いや……うん、深くは聞かないけれど」
 そう仕向けられた通りの表面的な理解の仕方で済ませてしまうシンジは幸せなものだ。
 深い傷を心に受けず、済んでいる。
 そんな相手居たことあったんだと素直に受け取って、驚いている。
 承知している限りでは女子に甚だ受けの悪い友人のことであるから、自分までそんな目で見てしまうのは悪いな等とお人好しな自制心を働かせつつも。意外だ、誰だろう知ってる子だろうか、どんな子とだったんたろうか、といったお気楽な好奇心を顔に浮かべていて。
 知らぬはただ、自分のことを申し訳ないぐらいの幸せ者だと思っているこの少年ばかり。

「ま、信じられないってのも分かるけどさ。別にいいぜ? だったら、ちょっとした証拠ぐらい見せてやるから」
 そういってスマホを取り出したケンスケがちょこちょこと親指を動かして、保存していた画像ファイルの中から『ほら』と一枚を向けてくる。
「うわ……」
 液晶パネルから画像の一部がはみ出てしまうぐらいにわざと拡大させた写真だった。
「ほら、俺だろ?」
 写っているのは同い年ぐらいの少年と少女。二人とも素裸で――まだ日も残っている外の往来で見せられるには気恥ずかしくすらある――片方は間違いなくケンスケであった。
 シンジも何度か上がらせてもらった彼の部屋は壁という壁がスチールラックの棚で覆われて、カメラ用の機材らしいゴチャゴチャとした荷物が詰め込まれているから、分かりやすい。それを背景にして、顔が画面外に隠れてしまった少女とベッドで寝そべっているところ。
 得意げに少女を抱き寄せ、さすがに恥ずかしいのか剥き出しの乳房を腕で抱えて庇っている彼女と頬をくっつけて並べたらしい表情の、見事なドヤぁっぷりと来たら。
 ガールフレンドとのベッドインという甘酢っぱい青春めいたシチュエーションだろうに、それがいかにもこの友人らしくて。
 なんだかおかしいやと笑ってしまうべきなのか、こんな場所でいきなり見せないでよと慌てるべきなのか。
「言っとくけど、ウリとかそういうのやってる子じゃないからな? 街の方の高校とかならともかく、うちみたいな半分田舎の中学にそんな進み過ぎの女子とか居ないし」
 なんなら壱中女子の制服着てるところの、それでヤってる写真見せてやるよとまた親指で操作しはじめたのを『い、良いってば。別にそこまでしなくても疑ったりしないから』と引き止めて。
 いろいろな意味でドキドキとさせられつつ、顔の分からなかった少女の抜けるように白かったその肌が、シンジにはやけに印象に残った一枚だった。

 そうやって予想外過ぎた上にインパクトの強い写真を見せられ、すっかり最初の動揺を忘れてしまっていたシンジに、あくまでまた何気ない口ぶりを続けながらケンスケは繰り返したのだ。
 いい加減、どっちかを選んでやったらどうなんだ、と。
「……こんなままじゃ良くないって、二人に悪いって、僕だって分かってるよ。でも……」
「分かる分かる。あいつら二人とも性格はともかく、見てくれは最高に美少女だもんな。二人とも食べちゃったら、もう手放したくないってなるよな」
「――そんなんじゃないよ!」
 近くに他に歩いている人間は居ないからといって、それでもぎょっとする声の大きさでシンジは反論してしまっていた。
「二人とは……そんなことだけじゃないんだ。もっと大事な、大切にしたいことがあって……」
「自分がやってることは分かってるよな? 周りからだと、全然褒められたもんじゃないんだぜ? 今は気付いてるやつなんて他に居ないかもしれないから、別にそのままで良いのかもしれないけどさ」
「…………」
「まぁ、女の子の気持ちを踏み躙って平気だってヤツじゃないのは、俺とかは知ってるよ」
「ゴメン、ケンスケ。心配してくれて」
「良いって、良いって。別に俺が気にしてるのはアイツらの方じゃないんだし。お前が好きに考えて、お前の良いように決断すればいいさ」
 ――手遅れにならない内にさ、と。こればかりはわざとらしいぐらいに冗談めかして。
「じゃないとお前の代わりに俺がどっちか決めてやって、片方取ってっちまうぞ?」
「……あはは。ケンスケ気遣い上手いし、意外とモテそうだから怖いな」

 そんな、互いに少し踏み込んだ会話をしたからこそ、いっそうシンジは気を許したようだった。
 体育の授業中、グランドを走っていく女子達のブルマ姿を遠巻きにしながらも、男子の全員が思春期の少年らしい関心を抑えられない中。こっそりと『彼氏としてはどうなんだ?』と耳打ちしてくるケンスケに、『あの太もも、あの尻、あの胸。独り占めにしてる優越感とかさ。実は感触を知ってる男としては、眺めてまた改めて思い出しちゃったりムラムラしちゃったりとか?』などとからかわれたり。
 『学校の中じゃやめとけよ? いつかバレるにしたって、バレ方ってのがあるからさ。なんだったら裏山のいい感じの隠れスポットがある茂み、教えてやろうか?』と際どい冗談を飛ばされたり。
 たまにはケンスケの言葉を真面目に受け取ったような乗り気を見せて、慌てさせてみたり。
 そんな友情を楽しんでいるようではあった。

 ――それら全てが隠し撮りの動画なり音声なりでアスカとレイにも披露されているなど、想像も出来ていなかっただろう。


◆ ◆ ◆


 いっそ無邪気なと言って良いだろうこの少年を、ひどい裏切り方をしている。その自嘲をすら悪趣味なエッセンスに、裏で過激化させていっている浮気セックスのダシにして。
「シンジのやつにさ、この場所が周りからバレずにヤれる絶好の隠れスポットだって教えてやったんだよ。ひょっとしたら綾波を連れてやってくるかもしれないぜ?」
 校舎から少し裏山を登った茂みの中の、そこだけ平地になった狭い場所で。アスカは、木の肌に横顔を押し付けながら制服スカートから差し出したヒップを、背後からのピストンの腰遣いに揺さぶられていて。ああん、ああん――と半ば抑えることも放棄した喘ぎ声を上げている最中。
 睦言ならぬ禄でも無い企みごとを聞かされつつの少女の膣腔は、ケンスケの遠慮のない獣欲を漲らせたペニスの動きを、火照らせた体温そのものである熱いぬめりに包み込んでいた。
「はぁっ、っぁッ、アッ、あぁぁッ」
 西洋由来の血が流れていてこそのたわわな隆起に持ち上げられたブラウスの胸元が、荒い息で忙しなく上下し続ける。
 べらべらと並べられた中身が欲情にのぼせていた頭蓋に染み渡って行く頃には、彼女がケンスケの自由にさせている場所はもう、ぶじゅぶちゅと普段より派手な愛液を飛び散らせはじめていた。
「――!? ヒッ、はひッッ」
「なんだよ、いきなりもうイッちまったのかよ? マンコの締め付けすげーじゃん」
 膣口にずっぷり嵌まり込んだまま小刻みに前後させてみせるケンスケの男根に掻き出され、おびただしい量がガクガクと生まれたての子鹿のように震える太腿を伝い落ちていく。
 ねっとりとした雫が垂れ流れていった先端は、白いソックスのところまで到達していた。
「ぁぁふ、ぁ、ぁああ……ぁ」
 膨らみきったペニスの幹で、普段の様子からは見違えるほど卑猥に割り拡げられたアスカのそこはもはや、肉花弁の大輪咲き。そうさせている牡の欲望そのものの器官との隙間からボタボタと、精液を注ぎ込まれる前からもう本気も本気の白濁したラブジュースを溢れさせていたのだ。
 じりじりと黒のローファーが足元の剥き出しの地面をずり動いて、力の抜けかけた右足左足の位置が広がっていく。その間の地面にも後から後からポタポタと、熱い蜜の雫は滴った。
「そんなにシンジに見られたいのかよ?」
「ぁ、アンタ……。あいつに教えてやったって……本気なの……?」
 薔薇色に火照る頬をぐいと掴まえられて振り向かせられた、欧風美少女の整った顔立ちは、気の早いアクメで半ば脳裏を真っ白に洗われているのが丸わかりの、歪んだ引き攣りに支配されている。
「んぁっ、アッ、ァ、待って、止めてよ。一旦、止めてって……ぁ、あああ……。こんな、嘘っ、いつもよりずっとアソコ、感じちゃってる……!?」
 見方によっては蕩けた笑顔なのだろう。ここで喜ぶような顔を浮かべてしまってはいけないと、必死に堪らえようとしたからこそ――余計に鮮烈なエクスタシーを味わうことの出来たアスカの、自らの肉の欲望に屈服してしまった貌の無残な恍惚だ。
 そこに重ねて、まだ満足を迎えていないケンスケに奥深くを突き上げられ、
「ンぉぅ、ンンン――ッッッ!」
 学園一、二の誉れ高い学業スポーツ万能の美少女は、可憐さや気高さとは程遠いみっともなさの、喉で潰れた悦がり声を迸らせたのだった。
「よっし、決めた。脱げよ、惣流」
「……ぇ?」
「いざとなったらすぐ逃げられるようにとか、誤魔化せるようにとかヌルいこと言ってんなよ。シンジが来るかもれない、とうとうバレちまうかもしれない。その時はその時だろ? 言い訳効かないくらいの真っ裸でさ、俺にマンコほじくり返されてアヘアヘ言ってるとこ、見せ付けてやりゃいいじゃん」
「ちょっと――!」
 幾ら校舎側からの視界は遮られているとは言え、まだ下校していない生徒達や部活中のグラウンドからの喧騒は届く場所だ。
 生徒達の気配を間近にしながらのスリリングなセックスを楽しんではいたが、ここにシンジがやってくるとなれば、(見られちゃう? ――シンジに!?)と、凍えるような危機感の方がそれを上回る。
 危なすぎるとは常々承知の火遊びでも、いざ本当に口を開けた破滅に飛び込んでしまおうかと言われれば。急にそんな覚悟なんて、出来るはずが無い。
「ほら、全部脱いじまえって」
「ぁ、ぁ……。ダメよ、そんな。アンタ、ほ、本気で……?」
 あの高慢なボス猿気質のアスカが、怯えた風ですらある揺れる瞳でケンスケの顔を覗って。
 それでも体から制服を剥いでいく彼の手を止めることは出来ないまま、ジャンパースカートにブラウス、ブラジャーと、次から次に地面に衣服を脱ぎ落としていったのだった。
 足元のソックスとローファーだけは残して。授業中の間からショーツは脱がされていたから、一枚を剥ぎ取られる分だけ手間が省けて――思えばいとも簡単に。それですっかりオールヌードにされてしまった金髪碧眼の白人美少女が、そうして放課後の生徒達の声が響いてくる木立の中の一本、濃い褐色の幹に、直に素肌の背中を預けさせられたのだった。
「安心して良いぜ? ちょっぴりだけ言い訳がきくようにさ、縛ってヤってやるから。ほら、手を出せって」
「それ……かえってアタシ、ぁ、あいつに見られちゃったら……」
「SMプレイのエロ写真とか、最近シンジのやつにも見せてやってるもんな。変態だったんだって余計驚かれるだけで終わったりして?」
 赤い制服リボンを使って手首をひとつに縛られ、それで木々の間に青ざめて立ち尽くすアスカの姿を、ケンスケは手早くシャッターに収めていった。
「……ぷふっ、惣流のケツ穴プラグ嵌めたとこの写真とか混ぜてたってのに。アイツ、お前のそっくりに見える赤毛のマン毛生やした丸出し下半身でコーフンするだけしといて、本人だとかは全然気付いてなかったもんなァ」
「趣味、悪すぎよ……」
 さて本腰を入れてと近付いたケンスケにまず胸からをまさぐられて。『ンンッ』と顔を背けるアスカではあっても、既に固く尖った乳首はツンっとした感触を少年の掌に伝えるばかりだ。
 総毛立つように敏感になった乳輪の部分からのピンクに色濃くなったそこを、ふっくら盛り上がった双丘の丸みごと揉みしだかれていけば、竦んだ気持ちも他所に、甘えた鼻声が漏れ出てしまう。
 ケンスケの責めにすっかり馴染んでしまっていたアスカの躰だ。
「ぁ、あぁっ。あンン……」
 それを、今この瞬間にもシンジに見られてしまうかもしれない。
 そうと怯えていながらも、キスを迫られたアスカが拒もうという素振りを見せることは無かったのである。
 手慣れたキスに息が詰められ、すぐに互いの咥内で愛撫を絡め合う淫らな舌遣いの音が立てられていく。
「ンン……。ンゥン――ン、んむぅ……ッ、ンッ。んちゅ――……ああふ! あふっ! ンぁ、やぁん、アアアッ!」
 再び、今度は真正面からずぶりとケンスケのペニスを迎え入れさせられたアスカは、やがて片脚を抱え上げられて一本立ちになり、浮気セックスで繋がりあった性器の部分をまるで周囲に見せびらかすかの、あられのない姿勢となって喘ぎだしたのだった。
「アぉ、ぉぉぉ……ぅ、奥ぅ、奥に届いちゃうのよ、コレぇ……っ。ヒィッ、ヒッ、ヒィィ――っ。ダメっ、ダメだわ。我慢、出来ないのッ。アタシっ、アタシっ」
 少年が持ち上げて支えるのに任せるだけでなく、その片脚を結局は自分からケンスケの体に巻き付けるようにしていって。
 自分からも懸命に腰を振り、全身のバネを使い、汗にまみれた十四歳の肢体をくねらせる。
 ズボズボと勢い良く抜き差しをされる股ぐらから炸裂している、下半身すべてが溶け出していくかの錯覚。えも言われぬ快感なのだ。もっと膣奥に、もっともっと力強いストロークを送り込んで貰おうとして、
「相変わらず、ヤバい真似させる方が興奮しはじめる変態女だよな、惣流ぅ。美人な顔してんのに、ドロッドロのだらしないアヘ貌しちまってさぁ」
「ひぐっ、ンぃぃぃ――イイのっ。アソコ、アタシのアソコが……奥までチンポの嵌ってくる、ズンズンってされるのが……。ぃ、ぃ悦いぃッ、イイんだもん! あんたが、アンタが教えこんだのよ……!」
 だらりと突き出した舌でひぃひぃと涎すら垂らし、焦点の合わなくなったサファイアの目が細められる。いかにも恍惚として、こみ上げてくる絶頂感、飛び切りのアクメの予感に、飢えた野良犬同然に飛び付こうとしているのだ。
「ハ、ヒッ――!」
「うぉっ」
 強烈な締め上げがケンスケの射精を促した。
 コンドームを装着してなどいなかったが、二人ともが構う様子を見せなかった。
「ぁおっ!? オっ、ぉ、ォおお……。ぁ、あいだ……ッ、相田ぁっ」
「出る、出る出る、出ちまうからなっ……!」
 揃って痙攣を起こしたのかというビクリビクリという身震いを纏いながら。
 ケンスケは今度こそ堰を切って、思いっきりに噴出させた。
 アスカも、意識することなく全力でケンスケと繋がり合っている部分の媚肉を蠢かしていた。牡に対して最高の快感を与えるその雌の本能そのものの反射によって、彼の精液を一滴残らず子宮口で飲み干させるようにしていた。
「ぉ、おおっ、おっ、おおーッ! 惣流ぅッ!」
「イクっ。イク、イク、イっちゃう――ンァアアアア〜ッ!!」
 自分などからすれば本来高嶺の花そのものでしかありえない極上の美少女の膣内に、遠慮のない煮えたぎった精液を注ぎ込む、目もくらむような放出感。
 オタク気質が祟ってひたすら女子受けの悪かったケンスケが、そもそもであれば手を出してはならない他人の恋人である筈のこの眩い裸身を腕の中に抱きしめて、運が悪ければ十四歳同士で妊娠させかねない生セックス――膣内射精をやらかしている。腹の底から笑いが爆発しそうな達成感が、牡の獣欲器官をここで尚も灼熱、膨張させていく。
「ああっ、ぁっ、あっ、中でっ……い、いっぱぃぃ……っ、ァ、ああっッ……」
 日頃であればお高く止まってツンと高慢なクラスメイトが、そうやってひしとしがみ付いて来て。耳元で、悦美に意識をのたうち回らせているのが手に取るように伝わってくる不格好な悦がり声を、これでもかと張り上げているのだ。
 竿も、ぶら下がった袋の部分も全てを存分に脈打たせて、中身が空っぽになるまで――。その衝動にあかせ、少年はたっぷりと注ぎ込んでいった。
「ンぁ、ぁ、ア……。死んじゃい、そぉ……」
「へ、へへっ、可愛いぜぇ。なぁ、惣流?」
 ぜいぜいと荒くなった呼吸を整えつつ、情熱的に抱きしめあったケンスケとアスカはそのままで暫く、山の斜面を吹き抜けていく涼しい風を、汗ばんだ頬を寄せ合ったそこで感じていたのである。


◆ ◆ ◆


 この時も、真実その通り、シンジが現れなかったのはただ運でしかなかった。
 シンジの臆病さ、或いは大胆になれない常識の強さを、ケンスケが読み勝ったという程のことでもない。
 そうなった時はそれで構わないと思ってシンジを唆していたし、実際にシンジも頭の端に過ぎらせはしたのだ。
 ムラムラと落ち着かない気持ちを抱え、最後の授業中からじっと何時の間にか見詰めていたレイの横顔。
 ふとそれに気付いた彼女が、なんだろうかと不思議そうに小首を傾げて振り返ってくれた、その愛らしい姿にどれだけ胸が高鳴ったことか。
 こころなしか頬を赤らめているような、色っぽい瞳になっているような。
 教室から皆が居なくなるのが待ち遠しい。皆がそれぞれの部活に行って、家に帰ってしまって、そうして誰も居なくなったらすぐに声を掛けて。一度別々に下校してから落ち合う場所を約束しよう。
 そうドキマギとしている胸の内を、レイにこそ見破られているとは思いも寄らないまま。

『お膳立てをしてやるよ』
 アスカを誘って裏山に行く。最後の授業はサボる。つまりは一時間以上をとってライバルのあの子と楽しんでくると、そう告げられて無意識に唇を尖らせていたレイに向かい、ケンスケは言い含めていた。
 シンジを唆しておいてやるから、チャンスだと思ってお前もデート楽しんでこいよ、と。
 そしてイメージを高めておくと良いだの何だのと理由を付けて、レイのスマートフォンに転送してきた何枚かのケンスケ秘蔵画像。
 レイは言われた通りに目を通していたそれを思い出して、その時こっそりと子宮を疼かせていたのである。
 どれもこれもがレイを撮った、そして破廉恥な場面のものだった。
 ラブホテルの一室でシャワーを浴びているところをガラス張りになった外から撮ったもの。よく連れて行かれる裏山で立ったままセックスをしている所。週末をケンスケの部屋で過ごして、激しい行為続きで空腹になったのを裸のままベッド傍で食事して済ませている風景。
 そしてケンスケが特に選んで寄越した理由でもある全ての共通点が、どれも顔が分からないようトリミングするなりして、一度はシンジに披露されたものばかりということだった。
 その中には、ケンスケが“そういう間柄”だった女子と一緒に撮った証拠だと、あの夕方の帰り路で披露した一枚も含まれていたのである。
 あの時は画面サイズ以上に拡大することで隠されていた、ケンスケと頬を寄せ合ってベッドに入っている白い肌の女の子。その顔こそは間違いなくレイのもので。ぎこちなくもまんざらでもない気分でいる時の笑顔なのだと、写し取られているうっすらとした表情からそうと見て取れる者であれば分かってしまう。
 当たり前ながら、シンジはその僅かな人間の一人だ。
 いかにも直前の情事の名残を留めるような、ほつれた髪の様子。
 折れそうに華奢で優美な鎖骨の周辺に残っている、キスの跡。
 腕で庇って隠しながらも、その儚い印象とは裏腹にクラスの中でも特に発育に恵まれた膨らみであるからこそ、僅かに腕の影から覗いてしまったピンク色の先端部分。この寡黙な少女の、思いがけない積極的な性的興奮が如実な程、エロティックに膨らんでいる乳輪、ぷっくり勃ち上がった乳首の様子。
 シンジは想像すらしていない。
 その、幻想的な程に白い肌に意識を引かれながら、まさかという先入観があったからこそ、二つを結びつけるなど思いもよらないままでいる。
 レイには自分から告げても良いと、ケンスケは言っていた。
 その写真を好きに扱って良いと。
『見せちまって、これは私なのよってバラすのも面白いんじゃない? それはとんでもないにしたってさ、想像してみるだけなら問題ないわけだし。今の綾波だったらそういう空想、愉しめるんじゃないかな?』

(ああ……)
 ケンスケの言葉を、レイは認めていた。
 少年はひどく傷付くだろう。
 目の当たりにするだけでも痛々しい、この胸が切り裂かれるぐらいの悲しいを目をするのに違いない。
 彼が傷付くことのないように守ってあげたいと願っていたのに、その自分こそが大きな傷みを与えてしまうのだと思えば、想像であってすら涙が溢れだしそうになる。
 だが、そんな傷付いた彼に裏切りと欲望に穢れきった本性を、
(今の、ありのままのわたしを……)
 それを打ち明け、自分でもどうにもならない、この辛くて飢えていて狂ってしまっている毎日を、終わりにしてしまったなら。
 彼の悲しみを贖うことの出来るものは何も持ってはいないけれども。代わりに、その悲しみを凍えさせるくらいの怒りと軽蔑を呼び込んで、決別を決心して貰えたなら。
 どうなのだろう? どうなるのだろう?
 つらい。自分で自分の存在を消してしまいたくなる。この世界のどこにも居ないようになってしまいたい。
 ――けれども、けれどもだ。
 すっかり汚れきってしまった自分を曝け出し、何もかも嘘のなくなった本当の自分のままに振る舞えるようになるのは、解き放たれるという事と同じではないのか。
 或いはそれは、新生――生まれ変わるのと同じで。
 そうして少年の立ち尽くす前で、彼に蹂躙して貰えたのなら……。
(わたしが、違う私になってしまうということ。違うわたしになって、悲しいこと、辛いことのなくなった世界に生きていくということ――)
 紅玉を思わせる透き通った赤い瞳を揺らめかし、レイは幻視してしまう。
 裏切り続ける苦しみから開放され、彼の暖かな眼差しを喪失した後に遺される、きっと凍てつくように寒々しいのだろう空洞に。代わりにいくらでもいくらでも注ぎ込んで貰える、ドロドロに煮え滾った肉の快楽。
 欲望のまま、浅ましい願いのまま、獣と何も区別のつかない自分になって過ごして、声を押し殺す必要も無く嬌声を上げ続ける毎日。
(あぁぁ……、ぁ。――欲しい、欲しいわ……)
 無垢だった少女の瞳の中にちらちらと揺らめく、もはや何時だって消えきれぬ熾り火のような影。
 相田ケンスケが植え付け、レイの中に根付いた欲望だ。
 レイの胸の奥に、お腹の下の方からいつも湧き上がってきては、ままならない淫らさで支配してくる、その衝動の呪わしさを。恨めしさを。もう自分自身に向かって募らせる必要はなくなるのだ。
 悲しみと一緒に、つらさと一緒に、なにかも焼き尽くして。きっと。
 ――そんなことも、胸の中で思い巡らせるだけならきっと許してもらえる。

 ふとレイは気付く。
 少年が見詰めてくれていた。
 彼に撮られた写真の中の自分や、一緒に彼に組み敷かれて男性の器官で挿し貫かれている時の彼女がしているのと、同じ目をして。
 今にも情動のままに突き動かされそうな猛々しい瞳で自分を見詰めてくれているのだから。それはつまりということなのだろう。
 思わず唇の端が綻んだ。
 こんなにも薄汚い裏切り者になってしまった自分でも、“その日”が来るまでは少年に愛して貰える。
 お膳立てしてくれたとは、これのことだったのに違いない。
 きっと少年は、彼のようにくたくたになって果ててしまうまで乱暴にしてはくれないだろうけれども。それでもだ。
 疼いている。
 お腹の奥の方が。どうしようもなく。
(ああ、碇君……)
 もうすぐだと、それをうっとりと待ち望みながら、レイは膝の上に置いたスマートフォンの液晶を、何度も何度も指先で撫で回していたのだった。





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From:エロ文投下用、思いつきネタスレ(6)