BEAUTIFUL PARTY

第9話 中編



著者.ナーグル


















 正直、一杯一杯だとシンジは思っていた。
 ヒカリに続いてマユミに大量射精して、脱童貞を果たした直後のシンジは、あまりに強い刺激の連続にすっかり参っていた。いま二人にした射精の量だけで自慰行為10回に匹敵する量だと思った。

 3週間ばかり寝る間も惜しんでの探索の日々だったので、まだ余裕はあるはずだけれど。
 でもシンジの斜め前に座っている二人の美少女、レイとマナのコンビは手に余るんじゃないだろうかと思う。
 そもそもなんで二人同時に…。

 レイとマナをじっと見つめる。
 現金なことに、身体は疲れ切っていても股間の一物は早速ムクムクと硬くなっていくのを感じた。

(男って…)

 我が事ながら呆れかえらずにはいられない。
 あまりに女っ気がなくてホモとか不能とか思ったこともあったけど、それは間違いだった。

 それはともかく。

 二人は姉妹なんかじゃないはずだが、奇妙に似た雰囲気を持っているなと思った。

「なに、見てるの…?」
「あー、もしかして見とれてたのかな。シンジのエッチ♪」

 さっそく名前で呼ばれてることに、ちょっと違和感を覚え、少し苦笑する。

(え〜と、姉妹じゃ、ないんだよね)

 あまり喋らないのがレイ、お喋りなのがマナ。

 髪色はそれぞれ銀と栗色と違っている。縁を揃えないシャギーのショートヘアにしているところは共通だが、レイは頬にかかる髪を内ハネにして、マナは耳辺りの髪を外ハネにしている違いがあるので、シルエットでも見分けるのは容易だ。
 顔を見ればマナは愛嬌のある薄水色の垂れ目と太い眉、レイは赤くやや大きい瞳の吊り目で眉が細い。レイが神秘的でどこか人を寄せ付けないような雰囲気なら、マナは活発な性格の幼なじみのような気安さがある。他にもレイは肌の色が月の光のように白くて胸が大きい、マナはシンジと同じ肌色で胸は並と、外見だけならかなり違っている。

「…どうしたの、碇君」
「じっと私たちの顔見てるね。何かついてる?」

 似ているところを敢えて言うなら声が似ているが、語り口とか口調はまるで違う。
 やっぱり全然似てないはずだが、でもそっくりだとシンジは思った。
 なんでそう感じるのかはわからないけれど…と、息を整えるために二人の人物評をしていたシンジは、そこではたと気がついた。
 今、レイは自分のことを碇君と言ったような…。

「え、えーと。誰かと、間違え、てるの、かな」

 ははは、と強ばった顔で乾いた笑いをするけど、ポーカーフェイスとかそう言うのがまるで出来ない自分に絶望した。
 これじゃあ私は六分儀じゃなくて碇ですと、告白してるような物じゃないか。
 いや、待て。落ち着け。問題はそこじゃない。なんで彼女がいきなり「碇君」なんてNGワードを口にしているかだ。マユミと違って、彼女は過去の幼なじみじゃないはずだ。

「碇君」
「駄目だよ綾波さん。なんかその名前言ったらダメみたいだよ。マユミにそう言ってたもん。碇じゃなくて六分儀なんだよね」
「…碇君なのに」

 いや、だからストップ。ウェイト。ちょっと黙れ。
 引きつった笑みのまま、言葉でなく目で雄弁に語りあうレイとマナの目を交互に見つめた。
 キョトンとしているレイの瞳、明らかに面白がってるマナの瞳。
 マユミとの会話が聞かれたのだろうか。だが、マユミは声を聞かれるのが嫌だからと無音結界の魔法で囲っていたはずだ。
 問いたげな表情のシンジににっこりとマナは笑う。玩具を手に入れた猫っぽい顔だなとシンジは思った。そういえば色んなところが猫っぽい。

「ん、あー、私ね、読唇術が出来るから」

 なるほど、納得だ。いや、待て。待つんだ。唇の動きを全部見られていた…ってことは、マユミとしていたことも全部見られてたって事?
 目を逸らすなや。
 彼女の素知らぬ風を装うとする表情は、予想が正しいことを物語っていた。
 一番人の良さそうな顔してるのに…。

(…女の子って見た目と全然違って油断できないんだ)

 男にとって女は永遠の謎、とは加持の言葉だったが、今彼はその言葉を痛いほど実感している。
 さて、マナが自分を六分儀じゃなく碇シンジだと知っていた理由はわかった。じゃあ、レイはなぜだろう。

「霧島さんが知ってた理由は、まあわかったけど…」
「マナって呼んで♪」
「………マナが知ってた理由はわかったけど、じゃあ、綾波さんは…」

 シンジが問うと、なぜそんなことを聞くのかわからないとばかりに目を大きく開き、答えずにじっとシンジの顔を見つめる。瞬きもせず、じーっと猫がなにもないはずの空間を見るように。
 そういえばレイもタイプは違うけど猫みたいだ、とシンジは思った。
 個人的には加持に連れられていった大人の酒場で見たバニーな衣装が似合いそうで、猫よりウサギっぽいとも思ったけれど。ちなみに、その後加持はシンちゃんをそんなふしだらなところに! と怒髪天をつくミサトとリツコに半殺しにされていた。

 しばらくレイは無言のままだったが、視線を合わせていられなくなって胸元とかをちらちら覗き見するシンジにぼそぼそと呟く。

「碇君は4年前、私を助けてくれたわ」

 レイはそれ以上何も言わなかった。
 忘れるわけが、間違えるはずがない。
 どうしてそう言うことを聞くの?

「………4年前、あっ、まさか」

 本当に忘れていたっぽい言葉に、シンジを非難するようにレイは少し眉をひそめた。

「碇君は助けてくれた」

 それ以上言う必要はなかった。これは当事者なら当然知っていることだから。











 事は19年前にまで遡る。

 ネルフ王国では、王は男性だけと定められているため、直系であっても女性であるユイは女王となることは出来なかった。その為、ユイの選んだ優れた男性を執政として迎え、彼に政治を代行してもらう一方で、生まれた子が男子だった場合はその子を未来の王とする。
 美しく聡明であったユイが、よりにもよって10も年上のあんな陰気な男を執政にするとは…と、政略結婚をたくらんでいた周囲の王族達からは陰口を叩かれたりしたが、婿養子である執政のゲンドウは愛想はないが抜群の政治力を発揮していた。
 結婚してちょうど1年で待望の子供が、それも待望の男子が産まれたことでネルフは喜びに包まれていた。思えばこの時がネルフ王国の絶頂期だったかもしれない。
 王子が生まれて4年後、すなわち今より数えて14年前、碇ユイが死亡した。
 事故とも病死とも伝えられるが、真相は家族とごく一部の人間だけが知っている。
 執政である碇ゲンドウは全ての公務から手を引き、副執政の冬月コウゾウに全てを任せて魔導学者の赤木ナオコと共に、怪しげな研究にいそしむようになった。
 未来の王である幼子は市井に隠されその消息はようとして知れず、その頃から国の至る所で怪異が目撃されるようになった。


 ―――10年前。
 碇ゲンドウの側に親戚の子という少女が目撃されるようになった。その少女は蒼白な肌に赤い瞳に銀色の髪と違いはあったが、碇ユイに似ていたため、周囲の誰もその言葉を疑わなかった。
 冬月の専横は疑うべきもなかったが、ゲンドウが隠遁し、ナオコが『自殺』という形で退場してからは誰も止められなくなっていた。
 ネルフ全土を暗い不穏な影が覆っていく。


 ―――4年前。
 碇ゲンドウのユイに再会したいという願望を利用した冬月の計画は実行段階に移ろうとしていた。
 ネルフ地下深くに封じられた『リリス』と呼ばれる巨人の血肉を元にして作られた存在…碇ユイの似姿としてつくられたホムンクルスである綾波レイは、器として充分なまでに成長していた。
 無垢な彼女に碇ユイの魂を転写し、ネルフ王家の血をひく処女として復活させる。そしてヘブンズドアの前で彼女に破瓜の血を流させることで全ての封印を解き、使徒なる生物兵器を復活させる。それこそが、異次元からの侵略者『スペースブラックゴッド』の分身である冬月コウゾウの真の目的だった。
 使徒が全て復活したとき、そして隣国のタルテソスに封印されていた恒星間宇宙船が復活したとき、世界はスペースブラックゴッドの前に膝を屈することになるのだ。

 だが、計画実行の直前で自分が利用されていたことを悟ったゲンドウは、騙されたふりをし続けながらも反撃の手段を講じていた。
 よそに預けていた息子のシンジを呼び出してレイに接触させる。期待していた以上にレイはシンジに心を開き、ゲンドウの言葉よりもシンジを優先するようになった。
 その一方で正気を保てるほんの短い時間を使ってミサトやリツコ、加持達に連絡を付けて自分諸共、冬月を倒すように指令を出していた。
 運命の日、レイに突き刺さって彼女をユイと変えるはずのロンギヌスの槍は、彼女をかばったシンジの手の平を貫き、二人はミサトとリツコの手によって何処かへと逃がされた。
 そして加持は地下道を爆破し、冬月をゲンドウ諸共にネルフ地下に広がる空間『ジオフロント』に封じてしまったのだった。
 
 世界から切り離され、瓦礫に押しつぶされる寸前…。
 温厚な学者としての仮面を冬月はかなぐり捨て、必ず復活しておまえら全てを皆殺しにしてやると口汚く罵った。


 ―――2年前。
 ネルフ、タルテソスと呼ばれた国の廃墟の中から、それぞれ冬月、ガーゴイルと呼ばれた分身の亡骸を回収した『スペースブラックゴッド』は、彼らを吸収・融合した上で全世界に宣戦布告を行った。戦力は本来予定していた三分の一でしかなかったため、その侵攻は遅々としていた。だが円盤形使徒と空中要塞の力で確実に支配域は広がり続けている。
 遠からず…大陸の住人全ては彼の前に膝を屈することになるだろう。


 ―――現在。
 ミサトたちによって救出されたシンジとレイだったが、二人は4年前の時点で別々の道を歩んでいた。
 ゲンドウが死んだことを知ったレイは茫然自失状態となり、そしてシンジもまたロンギヌスの槍から注がれたユイの記憶に翻弄されて自分の名前すら忘れてしまい、それぞれリツコとミサトによって別々の場所で回復を図ることになる。











「綾波、レイ」
「思い出してくれた?」
「ああ、うん。思い出した。思い出したよ。どうして、こんな大切なこと忘れたりなんか…。ごめん、綾波」
「どうして謝るの?」
「だって君のこと…忘れてた」
「そう」

 レイは一目会っただけでシンジのことを思い出したのに、シンジは完全に忘れていたなんて。と、多少は恨みがましいことを言っても許される。だがレイは小さく頷き返しただけだった。

(忘れていてもいい。思い出してくれたなら、それでいい)

 また、助けてもらった。これで二度目。

「ありがとう。感謝の言葉」

 レイの目は潤んでいる。どうして彼女の深紅の瞳を忘れていたんだろう。
 大丈夫。忘れていたとしても、思い出してくれたから。仮に思い出せなかったとしても、また知り合いになればいい。私たちにはそれが出来るんだから。
 いま、ここでこうしているように。

「綾波…」
「碇、くん」

 でも、お互いのことを忘れずにいたら、最初から知り合いでいて、冒険者になるにしても一緒だったら…。
 目を閉じたレイはシンジに抱きしめられる。彼の手の温もりに身を委ねて、レイは幸せを感じていた。信頼できる仲間である、アスカ達と出会ったとき以上の安心と幸せを…。

「碇君…」

 じっとシンジの顔を見上げ、目を閉じて顎を突き出す。そっと頬に右手を添え、親指でレイの唇を優しく撫でる。トクン、トクンと心臓が音を立てているのが聞こえる。
 シンジはそっと口づけする。舌先でほんの少しだけ彼女の唇を押し割り、唇をなぞった。チュ…と小さな音を立てて唇を離した。
 赤い瞳が潤み、うっとりとした表情でレイはシンジの顔を見上げた。全身で寄りかかるレイを、シンジは堂々と受け止めている。
 ヒカリとマユミ、二人を相手にして経験を積んだおかげかもしれない。

「どうし、て? 碇君に触られると暖かいわ。よく、わからないけど、たぶん、私、嬉しいんだと、思う」
「綾波…」

 再び、シンジはレイにキスをする。先ほどよりも深く、舌先を絡めて唾液をたっぷりと交換する濃厚なディープキスだ。最初こそ驚いたように目を見開いたレイだったが、すぐにシンジを受け入れる。
 興奮で息が荒くなり、心臓が激しく高鳴る。肌は粟立ち、血が脈打つ。

(あ…凄いや)

 もう立たない。そう思っていたはずの股間が熱く滾り、一物が隆々とそそり立っていた。
 欲情と言うにはあまりに清廉な感情を剥き出しでシンジは慌ただしくレイの着衣を脱がしていく。されるがままのレイは、隠そうともしない。真っ白で大きなマシュマロのような胸と先端でそこだけ赤い乳首がまろびでる。ふわふわと柔らかな肩、腹部、太股…。
 脱がされながら、彼女はシンジの股間の尖塔をじっと見つめていた。
 オークの、ましてや族長のとはまったく違うずっと可愛らしくて、愛おしい…。

「わたし、感じてる…の」

 短くて飾り気のない言葉だがその奥に秘められた気持ちをシンジは感じ取った。
 口下手で物事の表現が苦手な彼女の込めた精一杯。下手に千の言葉を重ねるよりも、素っ気ないただの一言の方がより深く心に染みた。
 染み一つ、黒子一つないレイの裸体をまぶしそうに見つめ、やおら抱き寄せる。
 また唇を吸った。うっとりと目を閉じてレイは受け入れる。
 頭や身体を撫でられ、胸を揉まれるとゾクゾクとした快感が背筋を駆け抜けていく。顔を下げると、シンジは恭しくふくよかな胸をさすり、先端で震えるピンクの蕾を口に含んだ。

「ああ…いかり、くん…」

 ゆっくりと頭を仰け反らせ、レイは息を詰まらせる。
 生暖かい唇に包まれ、舌先で転がされ、軽くは先で噛まれたり吸われたりするのはとても気持ちが良いとレイは思った。

(どうし、て…?)

 オークが彼女にしたこととそう大差があるわけではないのに。
 でも、シンジにされるのなら少しも嫌じゃなかった。むしろ、嬉しくて気持ちよくて、身体がポカポカどころかヒリヒリと痛いくらいに熱くなった。

(でも、気持ちいい…)

 こんな気持ちをなんて言えばいいのかわからない。ポカポカ?
 違う、もっと直接的な言葉があるはずだ。
 マユミに次いで本を読んでいる彼女だが、あまり語彙が豊富ではない。いや、単語としては知っていても、それを現実の感情や事象と結びつけるのが苦手、と言うべきかもしれない。
 だから彼女は暇さえあれば、もとい暇になったら連想ゲームをして物事を理解しようとつとめている。

 恋愛小説にあった恋人同士が囁きあう言葉。
 今まで深く意味を考えたことはなかったけど、でも、今が最も相応しい言葉だと思う。

「好き…」

 ビクッ、と驚いた顔をして乳首にむしゃぶりついていたシンジが顔を上げる。驚くと言うより、むしろ怯えているようにも見える。レイの言葉の真意を測りかねているのか、それとも好意を露わにする言葉に警戒しているのか…。
 困らせるつもりはなかったので、レイはあからさまに戸惑い、おろおろとし始めた。答えを求めるようにせわしなく首を動かし、微妙にシンジと視線を合わせないように震える。

「あー、その。綾波…」
「…なに」
「ちょっと驚いた、だけだから。そんな怯えなくて良いよ」
「そう、なの?」
「良いんだ。その、ありがとう」

 安堵して肩の力を抜くレイの姿を可愛いな、と思いつつシンジは少し自嘲気味にほほえむ。
 今まで、父さんにも母さんにも好きなんて言ってもらったことはない。覚えていないだけかもしれないけど、少なくとも物心ついてからは誰からも。

「綾波…」
「いかり、くん…」

 抱きしめられ、押し倒される。レイは抵抗しない。抵抗どころか、喜んで受け入れる。
 雨のようにキスが顔に降り注ぐ。白磁のような白い胸にキスマークが付けられる。少し痛くて、くすぐったい。

「ああぁ…」

 胸を思う様に揉まれる。族長にされた時みたいに、パン生地をこねくるような少し乱暴な愛撫だ。柔らかい胸はシンジの手の動きに合わせて形を変える。

「んんっ……はぁ、はぁ、はっ………いかり、くん…」

 屹立した乳首をつままれ、指先でいじられるとピリピリと痺れるような快感が走り、レイの背筋を反り返らせた。

「あっ、ふぁああぁぁ……熱い、の。う、うっ、は、ふぅ」

 風邪を引いたときに感じる眩暈。それによく似た感覚を覚えながら、シンジは両腕でレイの両胸を握りしめ、乳首を擦り合わせるように愛撫する。

「んっ、んああぁぁっ! い、いかり、くんっ! あ、あぅ、いかり、くん…!」

 柔らかな乳房と違って、そこだけゴムのような弾力のある乳首がぶつかり、弾けたときの手応えにシンジは呻き声を漏らした。
 本で読んだみたいに、この胸で挟んで扱いてもらったらどんな感じがするんだろう。

「綾波…あの」

 言いかけてシンジは口をつぐんだ。頼めばレイは受け入れてくれるだろうけど、今回レイ達を抱くのは単に肉欲を満たさせるためではない。レイの無垢な顔や胸を、自分の精液で汚す。それは想像しただけで股間が痛くなるほどの背徳感と興奮を覚える行為だけど、今はダメだ。

「なに…?」

 ぼんやりとしたレイの返事に「なんでもない」と誤魔化すと、今度はレイの足の付け根に手を伸ばした。

「はぁっ、あっ、あうっ…」

 息を詰まらせるレイを落ち着かせるように、ゆっくりと太股を撫でさすり、膝裏を掴むと左右に押し開く。むわっと蒸れた汗の匂いが立ち上った。一分子も逃すまいと胸一杯に吸い込みながら、シンジは凝視する。
 M字型に開脚されて、恥ずかしい部分を全てシンジの前にさらけ出されている…。

「あぁ…碇くん…」

 他の娘達が感じるような羞恥とは違うが、シンジに全てを見られることに言葉に出来ない喜びと昂ぶりを感じる。
 色素の薄い肌の奥のピンク色の淫唇。ぱっくりと開き、息をするようにひくつくそれはヒカリやマユミの物とは違っていた。思わず、ゴクリと大きな音を立ててシンジは唾を飲み込んだ。

(生えて…ない)

 言いかけた言葉を慌てて飲み込み、改めて目を血走らせてレイの秘所を凝視する。
 やはり、ただの一本の陰毛も生えていなくて、こんもりとした膨らみと、そこからのぞく淫唇やクリトリスの膨らみまで、全て露わになっている。
 確かにレイは体毛が薄く、産毛もあまり生えていない。だが、まさか完全に何も生えていない子供のような恥丘を見るとは思っていなかった。たしかに、稀にそう言う人がいると加持から聞いたことはあったが。いざ、実物を見てしまうと反応に困ってしまう。
 ともあれ、不思議なものをシンジは感じた。
 庇護欲、それとも保護欲? 守らないといけない、と言う気持ちがどこまでも強くなり、胸が熱くなる。

「綾波…あ、愛してる」

 本当にそれが愛なのかはわからないけれど、胸を締め付ける思いがあるのは本当だ。いや、それにしても実際に愛してると口に出してみると、こんなに恥ずかしい言葉はない。耳まで真っ赤になるのをシンジは感じた。
 ともあれ、つっかえながら恥ずかしいセリフを小さく呟くと、鼻先を沈めるようにシンジはレイの股間にむしゃぶりついた。

「………はっ、…ああっ」

 のけぞり、反射的に逃れようとするレイを押さえ、なおもシンジはレイの弱いところを…たぶん、全てを攻め立てた。

「あっ、あっ、ああっ………いかり、くん。あ、はひ…………はぁ…はぁ…ああぁ。碇君、碇君……ひっ、はぅぅ」

 舌先を硬くして割れ目に沿って舐め、膨らんだクリトリスを突くように刺激し、じわりとあふれ出した愛液をシャベルで掬い上げるように舌で受け止め、啜りこむ。

「くはっ、はぅ、はっ、はぁっ! あ……………ああぁ……いかり、くん。いかりくん……あつい、の」

 おずおずとした、だが快楽に翻弄される愛する人の声にシンジは心臓が破れそうなほどに興奮していた。刺激に反応してビクビクと震える手足からすっかり力が抜け、何もかもシンジの為すがままだ。
 充血し、膨らんだレイの淫唇をじっと見据えながら、シンジはレイの準備が整ったことを悟った。
 そして自分も、亀頭が破裂しそうなくらいに膨らんでいるのを悟っていた。

「綾波…行くよ」

 仰向けになったレイにシンジは這うようにのし掛かり、全身でしがみついた。両腕でレイの上半身を抱きしめ、胸板で押さえられて双乳が潰れそうなくらい強く抱きしめると、レイの方でもシンジを両手両足を使ってしがみついてくる。

「少し、きつい…。でも、我慢、できるわ」
「ああ、綾波ぃ…」
「碇くん…」

 もじもじと腰を揺すり、どうにか亀頭を割れ目の中心に押し当てた。恥肉は愛液と唾液でぬめって亀頭に吸い付いてきた。長くため息のように長い息を吐き出すレイ。
 逆にシンジは空気を肺に溜め込み、ぐっと奥歯を噛みしめた。

「綾波……行くよ」
「あっ、ああ碇君………………んんんっ!!」

 シンジが腰を押し出した途端、ぬるりと一物はレイの胎内に沈み込んでいた。陰毛が生えてなくとも、柔らかで弾力あるレイの性器は他の娘…ヒカリやマユミに劣る物ではない。むしろ具合は他の娘達から頭一つ抜けて良いかもしれない。

「ぐっ、くぅ…綾波ぃ」
「あふっ、は、はうぅぅ! う…………くぅっ! あ、はっ……い……あ……はぁ…あっ、あっ、あっ、は、はぁっ」

 膨らんだ亀頭を受け入れることにこそ、最初は手こずったが亀頭が飲み込まれてしまえば後はスムーズだった。愛液で濡れそぼった膣はシンジを受け入れ、むしろ離さないと言わんばかりにきつく締め付ける。シンジの腰が上下し、激しく一物が出入りする濡れた水音が響く。

 ぐちゅ…ぐちゅ…じゅぶ…。

「あ、はぅ、はっ、はっ、あっ、ああっ、はっ、はっ、はっ」

 顔を赤く紅潮させ、全身を痺れさせる快感に手足を戦慄かせながらレイは小刻みに喘ぎ声を漏らしている。あまりにも刺激が強すぎ、息も満足に出来ない有様だった。シンジの動きを押しとどめようと、両手で背中に抱きつき、しがみつくが鍛えられたシンジの筋肉は波打つようにはねあがり、暴れ馬のロデオのようにレイを翻弄する。

「ひぁ、あう……くっ、ひっ………あぅっ…………く、ふぅ…」

 反った白い首筋に汗が浮かんでいる。シンジはそれを長い舌を伸ばして舐め取った。

「んんっ…!」

 M字型に広げられたままのレイの足が、太股の付け根から指先までが等しく快感に震えている。硬さを増したシンジの一物は、リズミカルに上下してレイの深奥を押し開き、穿ち、こそぎとっていく。

「はぁーっ、はぁーっ、はっ、はぁっ、はっ、はっ、はっ、はぁ、はぁ、はっ、いかり、く…っ」

 レイには何がどうなっているのか、もうさっぱりわからなくなっていた。血圧が上がりすぎたのか、まだ明るいはずなのに視界はぼやけて何も見えなくなっている。すぐそこにあるはずのシンジの顔もよく見えない。暗闇の奥に、チカチカと火の粉のような光が瞬いていることだけがわかった。
 耳も耳鳴りが酷くて、周囲の音がよく聞こえなかった。風が木立を揺する音も、シンジが自分の名前を呟く声もよく聞こえない。自分の心臓の高鳴りと荒い息の音だけが聞こえていた。

(わたし、どうなってるの?)

 なにもわからない。

(今、私は…犯されてる。誰に?)

 昨日までの私はオークの族長に、ご主人様に犯される奴隷妻だった。じゃあ、今自分を犯しているのも…オークのご主人様?
 濁った目、膨らんだ舌、変異したペニスのご主人様。

(違う、違うわ)

 抱いているのはシンジ。碇ゲンドウと碇ユイの息子。綾波レイを救い、守る定めにある人。
 霧が晴れるように視覚が戻り、耳に愛しいシンジが名前を呼ぶ声が聞こえる。シンジの鼓動と温もりを肌に感じた。

「いかり、くっ…ん!」
「綾波ぃ!」

 ぎゅっと硬く目を閉じ、射精を必死になって堪えていたが、シンジはもう限界だった。
 感極まったレイの声を耳にした瞬間、より一層肌を密着させ、今まで一番深くにまで一物を挿入する。レイとシンジ、二人の背骨を官能の電撃が貫いた。

「…………ぁぁぁぁっ」

 レイは手足を震わせ、絞り出すように長く切ない絶頂の喘ぎ声をあげた。
 シンジは必死になって声を飲み込み、膣の中の奥の奥へ子宮の入り口でホウセンカが爆ぜるようにシンジは白濁したマグマのような精液を放出していた。

「くっ、ふあぁぁっ!」

 熱い精液が膣に触れる感触に、レイはたまらず甲高い絶頂の声を上げる。射精されただけで2回もイってしまう。
 これは族長相手でもなかったことだった。
 汗みずくになったシンジの身体が、ぐったりと崩れ落ちて柔らかな肢体にのし掛かってくる。
 彼の重みが愛おしい。

「あぁ…碇君」

 愛しさを隠そうともせず ――― 隠す必要もないが ――― レイはシンジの身体を抱きしめた。心地よい疲労に包まれた身体を、マーキングでもするようにシンジに密着させた。
 できれば、ずっとこうしていられたら…。











「ふふーん良かったね、綾波さん」
「――っ!?」
「うわぁっ!?」

 その時、顔の真横でじーっと瞬きしない目をしたマナに話しかけられて、シンジとレイは揃ってビクリと竦み上がった。

「ちょ、ちょっとそんなに驚かないでよ。そんなにビックリしたの?」

 無言で抱き合ったまま、小さく二人は頷く。
 シンジはのろのろと身体を起こし、ゆっくりと一物を引き抜くと、そこでようやく肩の力を抜いた。
 いきなり行為後に間近で話しかけられて驚いた、というのもあったけどそれ以上に、マナのことを完全に失念して二人の世界に入り込んでいたことに対する申し訳なさと、油断しすぎていた自分たちを冒険者として恥ずかしく思っていたのだ。

「もしかして、本当に私のこと忘れてた?」

 同性のはずのマナから身体を隠そうとするようにレイはシンジにしがみつき、シンジも反射的にレイを守るように抱きしめる。
 なんか凄いむかついた。

(…言葉にするよりもはっきりとした答えだよね。でも誰から庇ってるつもりなんだろう?)

 私、だとすると失礼な話よね、とマナは思った。
 ちゃかしてるようで、さらに面白がっていたはずのマナの目の奥に、うっすらと剣呑な輝きが宿る。

(初対面のわたしと違って、二人の間には色々とあったのはわかるけど…)

 でも、いつまでも蚊帳の外に置かれるのは彼女のプライド、というより好奇心が許さない。アスカほどじゃないが目立ちたい、人の注目を浴びたい。何か人の役に立って必要とされたいという気持ちはマナの行動原理そのものだ。隠密としては致命的な性格かもしれないけれど。
 とりあえず、強引にでも割り込んでやる。とマナは考えた。
 元々そのつもりだったんだし、レイもシンジも強い主張にはあまり反対できない性格のだ。なにより、一時とはいえ私のことを失念していたってのは、万死に値することだよね。

「そうだ。綾波さん、それにシンジ」

 舌先で唇を舐めながらマナはニヤニヤと笑う。

「3Pしよっか」
「………意味がわからないわ」
「えっ? さ、さん?」
「シンジはわかるんだ♪ 言っとくけど、冗談じゃないから」

 悪戯っぽく肩をすくめ、刹那、雷鳴のごとき速さで右手をシンジの股間へ伸ばした。
 熱くて硬い感触に悪戯っぽく笑う。

「うあっ!」
「クスッ。元気…だよね。凄く」

 族長とは比べものにならないくらい貧相な人間の一物。だけど、熱くて硬くて心をざわつかせると言う点では同じかもしれない。

「気持ちよくして…あげる」
「ちょっと、あ…霧島、さん」

 レイは眉をひそめて怒った顔をし、シンジが鼻にかかった声で名前を囁くがマナは無視した。
 ギルドマスターと族長に仕込まれ、教えられたとおりに優しく愛撫していく。
 シンジとレイの間に割って入るようにすり寄ると、蠱惑的に舌を出してシンジの乳首にキスをする。

「マナって呼んで」
「ご、ごめん…! きり、ううぅっ、マナ…っ」

 ガクガクと糸の切れかけた人形のような動きで頷くシンジ。柔らかくなっていた一物は、再びゆっくりと堅さと大きさを取り戻していく。彼は怖い物でも見るような、それこそ魔法をはじめて見たゴブリンのような目をしてマナを、彼女の滑らかに蠢く右手を見つめる。指先だけが少し触っているだけなのに、信じられないほどに気持ちが良い。レイとの性行とはまた違う圧倒的な快感。

「気持ちいーでしょ? わたし、くノ一だから色んな事知ってるのよ。だから、もっと良くしてあげる」

 息を詰まらせるシンジを、猫のようにくるくると変化する瞳でマナは見つめた。
 このまま性戯を尽くして手玉に取ることだって出来るかも。でも、もし本気を出したら彼の人生変わってしまうかもしれない。手淫だけでこんなに反応しちゃってるから、かなり感じやすい人のようだし。

(変わると言うより、むしろ終わっちゃうかもね)

 マナのことしか考えられない、マナのためなら死ぬことだっていとわないようになるかも。
 それは今のマナに出来る精一杯のそして最大の恩返しの方法だが、レイやマユミとの関係や彼の今後を考えると、絶対にやっちゃいけないことだとわかっている。

(でもね。私はあなたのこと、綾波さんやマユミほど信頼できない)

 この最低最悪な秘密を知る人間は少ない方が良い。
 竿をしごくことをやめ、陰嚢をやわやわと揉みほぐしはじめる。唾液の跡を残しながら胸から鳩尾、腹筋、臍と舌を這わせていく。
 シンジの身体が大きく震え「あぁ」と女の子のように色っぽい声を漏らす。

「ちゅ、ちゅぷ…ん、ちゅっ、くちゅ、ちゅ。ふふ、天国見せてあげる」

 少しマユミとヒカリ、そしてレイの匂いのする亀頭を啄むようにキスし、先走りの滲む尿道口を舌先で舐め取る。蛇のように柔軟で、猫のようにざらついた舌先は亀頭全体を包み込むように絡んだ。舌先を立たせてカリを刺激し、唾液をたっぷりと絡ませる。愛らしい外見とは異なり、手慣れた舌遣いで一物全体を濡らしていく。

「んぐ、ぢゅ、ちゅ、ちゅぶ、ちゅぶ、ひゅば、んっ、んっ、んっ、んんっ」

 乱れた髪を直すと、マナは一物全体を飲み込むようにくわえ、舌と顎、喉など口腔全体で奉仕を始めた。

「ぐっ、あああぁ、ちょっ、す、すご…っ。マナの、口…。なんだよ、これぇ」
「んぐっ、ちゅ、ぢゅちゅ、ちゅ、ちゅぶ、ちゅぷ、じゅじゅしゅぶちゅ、えへへ、気持ち良いでしょ? あん、逃げちゃダメ。うん、ちゅ、じゅる、んあ、ちゅ…」

 シンジの様子に異様な物を感じ取ったのか、レイが不安そうな面持ちでシンジとマナを交互に見つめている。
 腹部に感じるオークの精をシンジの精が駆逐していく熱と痛みは無視できないほどだが、それでもシンジとマナのことが気になって仕方がないようだ。

「碇…くん」

(ちょっとだけ邪魔しないでね)

 マナは左手をレイの股間に伸ばし、今まで仲間には決して見せなかった本気の一端を味合わせる。レイは目を見開き、秘所を刺激する人の指とは思えない動きに言葉を失った。

「…ぁ、あっ」

 そう、そのまま少しだけじっとしていて。
 殺す訳じゃないから心配しないで。私の精一杯のご奉仕をしてあげるだけだから。

「ちゅぷ、ん、ちゅ、ちゅっ、ちゅぅ…。あ、あは、じゅぶ、ん、ぢゅる、んっ、んっ、はぁ、ちゅ、ちゅぷ、くちゅ、ちゅる、んんっ」

 唇の擦れる音、舌が唾液を跳ねる粘ついた音、荒い息、蚊の泣くようなシンジの呻き、押し殺したレイの喘ぎ。

「ちゅぶ、ちゅぢゅ、んぐっ! ちゅぢゅっ、じゅ、うぶぅ、うむぅぅ、ふぅ、はぶ、はぅぅ」

 さすがに呼吸が満足に出来ずに苦しいのか、上気した顔でマナは奉仕を続ける。すでにこぼれた唾液でシンジの股間は陰毛がべったりと張りつき、マナの胸元はいやらしく濡れ光っている。鼻で息をしながら、マナは懸命に舌を這わせていく。

(簡単に快楽に飲まれる人は信じられないの)

 肉体的にも精神的にもオークの虜にされかけてた自分が言えた言葉ではないけれど、これを機会に自分たちにつきまとったり、利用しようとしたりしないという保証が欲しい。

「んっ、はぁ、ふぁ…。あむ、んっ、んふぅ…ちゅぶ、ちゅ、ちゅむ、んんっ」
「あう、はっ、ううぅ」

(女の子みたいな声出して…。だらしないわね)

 綾波さんには悪いけど、こんな簡単に快楽に飲まれる人はやっぱり信用できないかも。
 本当に男なんて最低だ。こんな事で喜んで…。

「ぷぁっ。はっ、はぁ。はっふっ、はふぅぅ〜〜〜。
 ふふっ、まだまだ。これからだよ」

 大きく息継ぎすると、再びシンジの亀頭をくわえ込む。
 舌先で裏筋を舐め、陰嚢を揉みほぐしていく。じっと上目遣いでシンジの顔を見上げると、シンジが目を見開いて彼女の顔を見つめているのに気がついた。快楽に惚けている目ではなかった。
 シンジの視線はマナの目を見ている。いや、僅かに視線の中心を外した、目の端を見つめていた。

(あ、あれ? あれれ?)

 恐る恐る伸ばしたマナの指先が、目の端にたまっていた涙の滴に触れた。表面張力のバランスが崩れて、頬を伝って滴がこぼれ落ちた。

「あ、あれ、なんで私、泣いてる」

 自覚した瞬間、急に身体が熱くなって汗がじわじわと滲み出てきた。
 汗だけでなく、涙がぽろぽろとこぼれ落ち、マナの頬を濡らしていく。

「嘘、どうして私…違う、違うよ。泣いてない。泣いて、なんか…。だって、泣く理由ないもん。
 ううん。わたし、わたし、こんなこと、本当は…したく、ない」

 好きでもない人相手に身体を重ねる。それどころか強がって調子に乗って、口で奉仕するなんて嫌で嫌で堪らない。でもギルドマスターも族長も、嫌がるマナを無理矢理支配して、彼女に嫌なことを強いてきた。
 彼女にとって性行為とは他人から強いられてする、嫌なことにしかすぎなかった。それを、自分からするなんて。
 鼓動が早くなり、血が脳に集まってきたのか視界が真っ赤に染まっていく。耳鳴りがして、手足の指先が痺れて感覚が消えていった。

(わたし、わたし、わたし…)

 意識が、焼き切れる。

(私が、消える)











「大丈夫だよ。マナに意地悪する人はみんな僕がやっつけたから。落ち着いて、側にいるよ」

 清涼剤のように心に染みいってくる言葉が、急速にマナの意識を回復させた。
 澄んだ雪解け水が悪夢の残滓を押し流していく。
 マナが自分を再認識したとき、ギルドマスターと族長にしこまれた支配の金輪は消えていた。

「あ、わ、わたし…」

 気がつくと、マナは背後からシンジに抱きしめられていた。背中にシンジの胸板を感じる…意外に厚くてたくましい。
 うなじに混じりけのない心配で一杯のお人好しの視線を感じる。
 涙こそ流してないけど、マナの気持ちを感じ取って、一緒に泣いてくれているのを悟った。


 側にいる。


 言葉が何度もリフレインする。
 側にいてくれる。ムサシやケイタみたいに、どこかにいったりしない。両親みたいに捨てたりしない。
 それどころか、守ってもくれる?

(本当? 本当に? 信じて良いの?)

「うっ、うううぅっ、うううぅ」

 暴れるのをやめたマナのぼやけた目から、また涙がこぼれ落ちる。静かになったマナを心配そうにシンジとレイは見つめた。まだ興奮はしてるけど、これならきっと大丈夫。ちょっと引きつけを起こしたような物だ。大丈夫、大丈夫…。

「綾波…」
「ええ、そうだと思う」

 レイの肯定でシンジは確信した。マナはいつも無理していて、そして本音を隠す生活を続けていたんだろう。それが今回の騒動で露わにされて、混乱してしまったんだ。そうシンジは判断した。
 そう、加持が言うように相手を安心させること、敵意がないこと、むしろ、仲間であることを教えてやればいい。喩えは酷いが野生動物を手懐けるのと同じだ。

「落ち着いた?」
「う、うう、うん…。ご、ごめん、なさい。と、取り乱し、ちゃって。わたし、やっぱり、男の人って、苦手よ。今までは任務だから、仕事だからって誤魔化せたけど、自分の意志で自分からってのは、やっぱり、まだ無理みたい」

 しゃくり上げてるのでつっかえつっかえ返事するマナを、そっと抱きしめ、レイとはまるで違う手触りの髪の毛を撫でてやる。ビクッと震えたが、マナは逃げようとしなかった。

「その、さ」

 途切れ途切れ、小さい声でぼそぼそとシンジは呟いた。その気弱な態度に、今度はマナがよしよしとあやすようにシンジの髪を撫でてやる。

「嫌なのは、わかってるけど…」
「うん、凄く嫌…。でもシンジはあいつとは違う。あいつらに比べれば何億倍もマシ」

 それに、もしかしたら人をまた好きになることが出来るかもしれない。好きになった相手がシンジなら、嫌どころか凄く嬉しくなると思う。だから、ね、心配しないで。
 逆に慰められたことに気落ちしながらも、シンジはしっかりとマナの両肩を掴むと、静かに押し倒した。

「綾波さんみたいに前戯しないの?」

 うつぶせにされたマナが肩越しに振り返りながら、少しからかうように問いかける。
 シンジは返事代わりにマナの股間に指で触れ、ヌルリとした愛液の感触が二人に伝わってきた。

「必要ない…みたいね」

 小さく息を吐くと、マナは目を閉じた。
 精一杯、色っぽい声を出して…。

「良いよ。来て…」











「んっ、あっ、あっ、はっ、ああっ!」

 後背位で貫かれながら、マナは甘ったるい喘ぎ声を上げている。今回は仕方ないけど好きじゃない人に犯されるのは凄く嫌。と言っていたのが嘘のよう乱れっぷりだった。胎内の何かを突かれる強い快感から逃れようと、前に這いずったためシンジも彼女を追いかけていた。毛布の寝床を後方に残して、今彼女は草の上で身体をくねらせている。

「あっ、はぁぁ〜〜〜〜〜っ」

 マナの小柄な身体は徹底的にシンジに翻弄され、深く長い息を漏らしてビクビクと身体を震わせる。

「ま、また、イっちゃう。イっちゃう…」

 深く深く一物を挿入されて、さらに感じる部分を亀頭でゴリゴリと刺激されたことで身体を仰け反らせてマナが喘いだ。しかし、その声はどこか演技臭い。間近で聞いていたレイは少し眉をひそめ、ちらりとシンジの顔を見た。
 シンジは何も言わず、強くマナの脇腹を掴むとより深く挿入できるように腰を密着させる。

「あああぁぁぁ〜〜〜〜〜っ」

 長時間に及ぶ性行で全身の筋肉は疲労していたが、筋肉痛を忘れるほどシンジの執拗な責めに身体は反応してしまう。涎を垂らして悲鳴のような声を漏らしてマナは呻いた。

「はぅ、あ、はぅぅ。まだ、まだ、なの…? シンジ、タフすぎるよぉ」

 途切れ途切れにそれだけ言うのも一苦労だ。もう何度も射精したからか、シンジはなかなか射精しようとしない。対してマナは開発された体がとかく反応してしまうのか、それとも相性が良いのか5回は絶頂に達している。
 ハァハァ、ヒィヒィと身体全体を波打たせて息も絶え絶えだ。手淫でシンジを翻弄したのが嘘のようだ。
 恨めしげに、だが嬉しそうにマナは肩越しにシンジを振り仰いだ。きついけど気持ちいい。体中引きつって痛いけど、痛いのが良い。

「た、確かに…3Pしようって、言ったけど…」

 まさか本当にするなんて…!
 マナをバックからキツツキのように突き込みながら、シンジは左から抱きついてくるレイの背中を撫でながら引き寄せている。
 見せつけるようにレイの身体を愛撫して、一方でマナも翻弄している。さっきまで童貞だったはずなのに、憎らしいくらいに余裕を見せつけている。

「ん……いかりくん…」

 うっとりとした表情のレイの唇をシンジは堪能する。二の腕に当たる胸の感触を楽しみながら、一物を包み込むマナの温もりに口の端を歪めた。

「気持ちいいよ、マナ」
「あっ、あんっ、もう! んんっ、そんなこと、良いから、ああ、早く、イって…!」
「マナが、一緒にイってくれるならね」
「ん…え、ええっ? なに、ああ、んっ! 言って。私、さっきから…」

 トロトロにとろけた表情でマナはシンジの言わんとしていることがわからず問い返した。
 冷静に考える時間も余裕もない。

(ああ、奥まで届いてる…! 奥まで押し込められて、くちゅくちゅってイヤらしい音がしてる!)

 屋外でなければ籠もった香りがするほど汗を流し、マナは答えも待たず甲高い喘ぎ声を上げた。
 フッ、と笑うとシンジは左手をマナの肉の薄いヒップに伸ばした。脂肪が少ないと言うより、筋肉が発達している張りのある臀部を撫でさすり、柔らかさと言うよりもしなやかな弾力を楽しむ。そのまま割れ目を押し割るように指をこじ入れる。

「ふぁっ、あっ、ああああっ!」

 お尻はダメ。お尻は本当にダメ! 声にならない悲鳴を上げてマナは身体をより一層激しくくねらせる。シンジが言おうとしていたことを悟り、全身に鳥肌が立つのをマナは感じた。どういう訳かシンジは気がついている。
 秘所を犯されるだけでなく、肛門も一緒に犯されないと本当の意味で絶頂に達することが出来ないマナの性癖に気がついている。

「あ、はっ、ひぅっ! や、やぁぁぁぁ…」

 そのことはアスカとレイはもちろん、親友のマユミだって知るはずがない。
 心を開いたようでいて、実際はまだ壁を作っていた用心深いマナ。
 だが、シンジは気がついた。マナが狂気の海から救いあげただけでなく、二重底になっていたマナの心を気づいていた。

(本当に、私の全部を受け止めようって言うの?
 そんなこと、無理よ、出来るはずがないのに…。私は薄汚い人殺しで、大嫌いな人に犯されることで喜んじゃう変態なのよ。でも、まさか…もしかしたら…)

「うううぅ、ひぅっ、うっ、あぅ、はっ、くっ、ひぃぃぃっ!」

 嫌がりながらもマナは拒絶できないでいた。

(イヤだけど、気持ちいいよぉ)

 本来性的な器官でないはずのお尻を開発されてしまった屈辱。
 彼女を性的に開発したのは憎んでも憎み足らない、100回殺しても恨みが晴れない男達。
 アナルをいじられると犯されたとき以上に感じると同時に、開発されたときの記憶と男の顔が蘇る。
 今はギルドマスターの老人だけでなく、オークの族長の顔がセットで浮かび上がる。

「おおお、おああぁぁっ! だ、だからシンジっ! やめて、お願い、お尻はダメ、お尻はダメだってば!」

 指が肛門の窄まりにこじいれられ、きついがスムーズに出入りする指の動きにマナは息を詰まらせる。
 震えた声でマナは甘い悲鳴を上げた。
 嫌なのに、嫌なはずなのに…! 感じるはずのないお尻で無理矢理感じさせられてしまう。

(嫌だって言ってるのに! 確かに調子に乗ってたけど、でも、なんで!? 普通に抱いてくれればいいのに…! どうしてこんなことするのよ?)

 でも、優しい指の動きはギルドマスターやオークとは全く違う。愛撫の仕方が違うというより、相手の気持ちがまるで違っていた。
 愛撫されても瞼の裏に浮かぶのは、忌まわしい男達の顔ではなかった。

「あっ、あっ、ああぁっ。ひっ、ひぃああぁぁぁぁ…っ」
「忘れたい記憶が…あるんだよね」

 シンジは両手でしっかりとマナの脇腹を掴んだ。そのまま、息もつかせぬ動きで激しく腰を打ち付ける。太股とヒップがぶつかるペチペチという乾いた音が響き、凹凸の少ない膣が血管の浮き上がった一物で蹂躙される快感に、マナは目を白黒とさせる。

「あ、あっ、はっ、はぅぅ〜〜〜〜〜っ! 忘れ、たい…なにを」

 シンジは答えず、隣に控えていたレイの顔をじっと見つめた。小さく彼女が頷くとシンジもうなずき返した。

「任せてよ」

 音も立てずにレイはマナに近寄ると、おもむろに控えめな胸とさっきまでシンジがいじり回していた肛門へ指を伸ばした。

「ひっ、ひぃ!? 綾波さん、なにを!?」
「碇君と一緒に…」
「ええっ!?」
「大丈夫、力を抜いて」

 拒否する暇もなく、力を抜くどころではなかった。
 レイの右手がマナの胸を撫でさすり、左手の指が二本…人差し指と中指が柔らかな菊座をこじ開け、容赦なく潜り込んでくる。悲鳴を上げるため開けた唇を、素早くレイは奪った。

「心を開かないと、貴方は救われないわ」
「んんっ! んっ、んんっ!?」

 舌が絡み、唇を塞がれ、肺の空気を吸い取られる。
 シンジにされたのと同じように積極的に舌を伸ばし、マナの口をレイは犯していく。最初こそは抵抗していたが、アナルをいじられながら犯される快感に翻弄されたマナは、すぐにレイの舌を受け入れていく。

「んんーっ! んっ、ひゅぶ、ちゅっ! ぶはっ、はぁっ、ああああっ!」

 シンジのピストン運動はより一層激しさを増していく。
 アナルと性器を同時に刺激されて、族長との性行以上の快感をマナは感じていた。

「ああっ! はぅ、はっ、ひぁっ! やぁぁぁぁっ! すご、凄いよぉ! 綾波さん、シンジっ」

 恋愛感情を持っていないはずなのに、シンジの名前を叫ぶほどに彼の存在が心の中で大きくなるのを感じた。犯されているのに、脳裏にギルドマスターも族長の顔も浮かんでこない。
 代わりに浮かんでくるのは、人の良い顔をしたどこか頼りない少年の顔だった。

(嘘っ。嘘…まさか、本当に、あいつらのことを、忘れられる?)

 何か、熱くてどろりとした物が内側からこみ上げてきた。
 さっきまでの絶頂と勘違いしていた、少しばかり強い官能とは全く違う本当の絶頂の予感にマナは震えた。まるで、族長に犯されてイかされたときのような…。いや、違う。もう、オークに犯されたときのことは思い出せない。

「あっ、ああ、はぁっ! い、イき…そう。し、シンジ、シンジ…! 綾波さん、わたし、わたし、イきそう! 本当にイっちゃう!」

 マナのせっぱ詰まった告白と同時に、レイは根本まで指をアナルにねじ込み、シンジは全身の筋肉を鋼鉄のように硬くさせながらマナの中に一物を挿入した。マナの膣が波打つように収縮し、一物を締め付けると同時に亀頭が膨れあがる。

「あっ、あうっ、マナ!」
「イっ…くぅぅ〜〜〜〜〜っ!!」

 だいぶ薄くなっていたけど、それでも大量の精液がマナの胎内に迸った。人間の精液が染みこんでくる熱い疼きがマナの子宮一杯に広がっていく。

「はぅぅぅ…」

 ぶる、ぶるっ。と小刻みに痙攣していたマナの身体から急に力が抜けた。身体を支えることも出来なくなり、グッタリとマナは崩れ落ちた。

「もう、動けない。一歩も、動けない。はぁ、はぁ、はぁ…」

 フルマラソンを走り終えた直後のように、息も絶え絶えに喋ることも辛そうだ。
 でも、満ち足りた顔をしているとレイは思った。彼女のこんな顔を見たのは、初めてかもしれない。
 呻きながらシンジが一物を引き抜くと、精液と愛液が混じった濃い匂いのする蜜が溢れた。淫裂はシンジの一物の形に合わせて広がりきって、口を開けた割れ目は呼吸するようにひくついている。

「う、あうぅぅぅ…」

 急速に熱と鈍い痛みを覚える腹に顔をしかめつつも、マナは肩で顔を青ざめさせてお腹を押さえるレイをじっと見つめた。
 そう言えば、レイもとっくにお腹痛くなってるはずなのに無理させて悪い事したな、と思った。そうだ、レイと一緒の毛布にくるまって寝ると、もっと仲良くなれるかもしれない。色々、私の知らないシンジのことを話してくれるかもしれない…そう思った。
 それからシンジ。
 マナがこんなに疲れてるんだから、当然シンジも疲れてるに決まっている。目の下にクマを作り、肩で息をして全身汗で濡らしている。よく見れば頬も少しこけているように見えた。無理、したんだろうな…。

(頼んだわけでもないのに余計な事して…。だから男の人って嫌い)

 助けてくれた責任…絶対に取らせてやるんだから。








初出2010/10/24 改訂2011/05/24

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