Beautiful Party 第6話
著者.ナーグル
アスカがオーク達の虜囚となったその時、最後の希望は潰えた。 黄金の戦乙女は唇を噛みしめ、恐れを隠そうと気丈にも震えを押さえこんでいる。怒りのあまり蜂蜜の様な金髪はふわりと浮き上がり、白い肌は炎熱を帯びて紅潮している。普段の快活で朗らかな彼女からはとても想像出来ない憎悪の有様だった。青い瞳は凛と輝き、今もなお猛々しい。だが奇跡が起こりでもしなければ、彼女は醜く歪んだオークの餌食と成り果てる―――。揉まれ、剥がれ、しゃぶられ、徹底的に蹂躙される。 『ブヒヒヒ、すぐに気持ち良くしてやるオーク』 族長は無様に壁から突き出たアスカの上半身を見下ろしている。ベチャリ、ニチャリと湿った音を立てて唇を嘗め回した。膨れあがった腹部がぶよぶよと彼の動きに合わせて揺れている。垢と汗、その他色々な分泌物と汚物の腐敗臭、かすかに女の匂いが混じった悪臭がアスカの周囲に濃密に立ちこめた。 『ほれ、よく見ろオーク』 「…………ひっ。や、いやよ! なにキモイもの見せてんのよあんたはっ」 彼女の眼前に突きつけられた、混沌の変異でねじり狂った二本のペニスにアスカは悪態と諸共に息をのむ。気丈な彼女もさすがにおののく異様な形をしていた。マユミの処女を奪った時点から異形をしていたのだが、混沌の汚染が進みでもしたのか更に異様にねじくれている。蛇腹の様に節のある本体は赤子の腕ほどもあり、紫色と白の斑色をした粘膜の表面には、イクラ粒ほどの大きさをしたプリプリとした肉芽がみっしり密生している。さながら岩礁に群がるフジツボか落ち葉の下のダンゴムシのごとくだ。 「う、そ。くぅっ…」 暑さにも関わらず、一斉に鳥肌が立ち寒気をアスカは覚える。歯の根がカチカチと音を立て、幻惑された血走った目をペニスから反らすことが出来ない。二本生えているうち、下に生えた太い方のペニスがゆらゆらと揺れている。 『くわえろオーク』 戦乙女から性奴へとクラスチェンジ寸前のアスカに対する族長の言葉はシンプルな命令だ。「そんなこと出来るわけない」そう言いかけたアスカだったが、その瞬間、胃の腑に拳を叩きつける圧力と共に、鳩尾の辺りを掻き回される不安が彼女の中で嵐となって猛り狂った。 勝てない、敵うわけがない、勝負にもならない。 相手は絶対的な強者。簒奪者。蹂躙する者。既に滅んだ古代遺跡の支配者。 殺伐とした真理の具現者。力ある者こそが正義であり、他社に理不尽な要求を貫くことができる。 常々アスカがそうなりたいと思って努力してきた目標である征服者だ。 侵入者であるアスカ達は負けたのだ。つまり、彼女たちの生殺与奪の権利は彼にあり、アスカは彼の決定に従うことしか許されない。 突然、そんな考えがアスカの脳内を支配した。そしてその考えを受け入れようとしている自分に愕然とする。 (なに、なによ、なんなのよ今の馬鹿げた考えは? なに諦めてるの!? 相手はオークなのに、ううん、オークじゃなくてもこんなこと許されるわけ無いわ!) 一瞬で正気付くアスカだったが、族長の小さな目で見ろされてることに気がつくと、再び気弱な考えに支配される。いや、さっきよりも深刻な恐怖と諦観という鎖で束縛され、そして嫌悪と拒絶、怒りが煮えた鉛となってアスカの心を沸き上がらせる。 冗談じゃないわ、このアスカ様がこんなところでオークなんかに! 怖い怖い怖い怖い。オーク怖い。 ちょっと、今私何を考えたの? 怖い? オークを怖いって…。 オークは人間の天敵、きっと酷いことされる。レイやマユミたちがされてるようにきっと私もそうなる。 イヤイヤイヤイヤイヤイヤ嫌嫌嫌嫌いや嫌嫌嫌いやイヤ嫌嫌いや嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌いやいやいやいや嫌いやい嫌やいやいやイヤイヤいやいやいや。 助けないといけないのよ! みんなを巻き込んだのは私だから! だから、私がどうなっても! 他のみんながどんな目にあっても、私がそうなるのは嫌。だって私は家を再興しないと、ママを喜ばせないといけないから、こんなところで終われないのよ。 だからお願い、嫌な事しないで。酷いことは嫌。いじめないで。イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ。酷いことしないで、言うこと聞くから酷い事しないで。 (嘘、私、怖がってる、え、なんで、私今何を考えたの? まさか) 自分が何を考えたのか、何を口走ったのか気づいたアスカは息をのむ。見開いた目が族長の片眼と交錯し視線と視線が絡み合う。 『くわえろオーク』 アスカの頭を左右からつかむと、族長は冷たく言い放った。冗談じゃないと言いかけた矢先、鼻先に突きつけられたペニスからの悪臭をわずかに吸い込んだ。咽せるほどの悪臭にアスカは言葉を失い、そして人間の女性を特に幻惑させるオークの体臭がアスカの心を責め苛む。歯を食いしばって拒絶するつもりが、自由のきかない体は空気を求めて口を開いた。いや、空気を求めていることを言い訳にして身体は勝手に反応してしまったのだ。 「はっ…は、あ、ん」 言われるがママにアスカは口を開けてしまう。自分が何をしたのか自覚することも出来ないアスカの、緩く開いたピンクの唇を押し広げ、まともにペニスが突き入れられる。 にゅぷっ 「あむ………ん、ちゅ、くちゅ ん、んんっ!?」 堅く張りつめた肉の塊が控えめに開いた口をさらに割り開き、歯をこじあけ喉奥まで押し入ってくる。忘我の表情で当然の様に異形を口に含んだアスカだったが、気道を塞がれる寸前に正気に返り、手足をむちゃくちゃに振り回して暴れた。 「んんっ、んむぅっ! うっ、うう、ううぅ―――っ!」 口一杯に広がるペニスの感触にアスカは反射的に口を閉じようとするが、みっちりとした圧力は歯を寄せ付けず、舌を押し返してしまう。そのままアスカは歯には鉄の圧力を、頬と舌には灼熱の熱を、唇にブヨブヨした粘膜を味あわされる。目尻に涙を浮かべ、こみ上げる嘔吐感にアスカは呻き声を上げる。 「ふんむ、ん、んっんっんっ、んちゅ、ふぶぅっ! ……………ちゅる、ぶっ、ひゅぶううぅぅっ」 (なに、これ、これが、男の、オークの生殖器…なんて、気持ち、悪い…。ああ、私が、この惣流・アスカ・ラングレーがこんな無様なことを…) 口腔内をぐちゅぐちゅと音を立てて掻き回され、気味が悪いとか嫌悪するという当たり前の感情ではなかった。想像以上に堅く、熱く、ぬるぬるとして不味い。生き物の体が骨と歯以外でこんなに堅くなることがあるなんて、アスカにはとても信じられなかった。必死に吐き出そうとしても暴れる舌はぐいぐいと喉奥まで押し込まれ、亀頭は苦しょっぱい先走りを噴き出しながら顎の裏をごりごりと押し上げてくる。逆に舌は肉芽に捕らわれ、チュブチュブと泡が爆ぜる音を立てている。 「んっ、ふっ、ふぅ、う、ううっ、ううぅぅぅ〜〜〜〜〜」 精液混ざりの涎を啜り込むなど出来るはずもなく、口の端からドロドロとこぼして首を伝わせ胸まで濡らしていく。涙でにじむ瞳で族長の顔を見上げると、族長はアスカの顔を見下ろし、緩く口を半開きにして浅く早い息を吐きながら一心に腰を前後に揺すり続けている。 「ふぅ、あん、ちゅ、ちゅぶぶっ、くちゅ、ちゅぷ、う……あぅ、ちゅ、ぷあ、ちゅく、んんっ、んっ、んっ……んっ……んっ、ちゅく、ちゅぶぅぅ」 吐き出そうと口をすぼめたり、舌で押し返そうとしても、息をしようとわずかにでも体から力を抜いた瞬間、唇を擦りながらまたペニスが押し込まれていく。その繰り返し。何度同じ事を繰り返しているのか、アスカにはわからない。憑かれた様に無駄な抵抗を繰り返して、初めての口腔性交にも関わらず熟練の娼婦さながらに淫靡な音を立てて族長を喜ばせてしまう。 『ヤーム、ヤーム…。おまえ、上手いオーク。気に入った……オーク』 「ちゅ、ちゅ、ちゅく、んん、うんん、あふぅ、ううぅぅぅっ! きゅ、いゃう、あううぅ〜〜〜」 これほどまでの恥辱を彼女は覚えたことはなかった。没落した実家やかつての領民たちの口さがない噂を耳にしたときでも、これほどの恥ではなかった。為す術もなくオークに全てを支配されてしまうなんて。 (…………抵抗できないまま………………………………………く、悔しい) 「ん、んっ、ひっ…んん、んっ」 少しでも息苦しさと圧力から逃れようと、右に左に舌を動かして空間を作ろうとするアスカだがそれが族長を喜ばせていることに思い至らない。なぜか族長のペニスがひくりとビクつくたびに、アスカの腰も浮き上がりそうになる。 次から次へと涙がこぼれ落ちていく。そして今の自分をレイやマユミ、マナ、ヒカリが目にしていると思うと、屈辱以上に自分自身とオークに対する怒りがこみ上げてくる。その怒りだけが、かろうじてオークオーラの影響で溶けかけていた意識を土壇場で踏みとどまらせていた。 (く、畜生…! なにわたし、諦めようとしてるのよ…! 負ける、もん、ですかっ) 食いちぎってやる! 起死回生の手段に気がついたアスカの目に光が戻った。凶悪な感情に支配されながらもなんとか呼吸を整え、せめてもの抵抗にペニスを噛み千切ってやろうとする。顎に力を込め、歯を立て、食いちぎる。鼻で息をしつつ、萎えきった顎の筋肉を叱咤した。細胞全てから絞り出さんと所在なく垂れ下がっていた両手に力を込め、きつくオークの腰を抱きしめた。 『急に舌が、おお、いいぐあいオーク』 「おごっ、うぐっ……もごぉぉっ。うっ、ひっ、うぅ、ひゅ、く、ぶふ、ふぅぅぅ」 族長の緊張感のない呟きを耳に、アスカは喜んでいられるのも今のうちよ、と心の底で叫びながらぬるぬると滑るペニスに歯を立てる。このまま、力を込めれば…! 「ふぅ、ん、んんぉぉう、う、ん、んっ、んく……うぅぅぅ…」 『ブヒ、ブヒ、ブヒ、ブヒヒヒ、ブヒヒィ』 だが。 アスカの幻視した光景は幻と消えた。 「ちゅ、んく、うっ……んんっ。あ、ちゅく、ちゅっ…………ちゅちゅる」 (な、わたし、なんで、なにしてるの!? 噛むの、噛み千切るのよっ! 私、どうして!?) アスカは愕然とした。どうしても力を込めることの出来ないまま、それまで以上に積極的な動きでペニスをしゃぶり続けていた。族長は金色の髪の毛を手綱にし、彼女の舌技に合わせて腰を突き出して口を犯していく。 「ふゅうううぅっ、うっ、うう、う―――っ」 アスカの決心は遅すぎたのだ。顎から喉まで緊張と疲労ですっかりと痺れていた。強引な突き込みで満足に息も出来ず、酸素不足で朦朧としていることも追い打ちをかけている。なによりオークオーラは、良質の骨柄スープを作るための下ごしらえのように、アスカの抵抗の意志をそぎ落とせるだけそぎ落としていた。 アスカの必殺の行動は減衰し、歯で竿を擦り、肉芽をこそぎとろうとする様に刺激をくわえていく口腔愛撫に落ちてしまっていた。アスカの舌技にゾクンゾクンとこみ上げる様にペニスは蠢動し、アスカを惑わせる性の焔を噴き上げていく。力の抜けたアスカの喉奥に、貯まっていた粘液が堰を切った様に殺到する。 「くっ、かはっ。ん…………ううぅ、んんんっ………………………!! うっ、ごくっ」 吐かなくちゃ、と思う内心と裏腹にゴク、ゴクリとアスカの喉が動き、粘ついた唾液を飲み干していく。嫌で嫌でたまらなくても、心と体の接続が半端に断たれてしまったアスカはそれすらもできなくなっていた。苦痛から逃れようとする体のは、条件反射で喉に絡まない様にするため積極的に飲み干していくのだ。気持ち悪さと嫌悪にまた涙がこぼれ落ちていく。 「はぁ、ああ、あう、ぢゅる、ちゅぶ、ちゅ、ううううぅぅぅ」 『うお、おおっ、出す、ぞオーク!』 「おうううっ!?」 永遠とも思えた艱難辛苦の時間の終わりは唐突に訪れた。途切れ途切れの族長の言葉の直後、大きく腰が痙攣し、喉の奥までペニスが突き入れられる。苦しさのあまり血が出るほど強く族長の腰に爪を立て、目を白黒とさせるアスカの口内でペニスが勢いよく震えた。ぶちょり、と一回り大きく膨れあがったかと思うと、ペニスの先端から勢いよく精液が噴出した。いままでマユミ相手に大量に消費しているにも関わらず、未だ衰えぬ族長の精力だった。 「うむぅぅぅぅぅっっ!!」 迸りが喉奥に当たり、跳ね返り、口一杯に充満する。悪臭と悪寒がアスカを責め苛んだ。 (だ、射精された! いやあああぁぁ、こんな、嘘、妊娠、妊娠しちゃう、妊娠しちゃうわよぉぉ) 上あごと喉奥に生温い液体が噴きかかり、どろりべたりと粘つき張り付いていく。さすがに飲み干すことも困難な粘液にアスカは男の様に野太い呻き声を上げて吐き出そうとするが、族長はアスカの頭をしっかりとつかんだまま、なおも噴き出る糊の様な精液を口腔に噴き出し続ける。ちなみに言えば、いかにオーク相手でも口に射精されたからといって妊娠するわけはない。だがそんな思い違いをしてもおかしくないほどに濃厚で大量の精液だった。そんな彼女を宥めるわけではないだろうが、オークにしては優しい指使いで顔面蒼白なアスカの髪の毛を撫でている。そしてそのまま、射精を続けていく。 『お………おおぅ。おぅ、デンヌデンヌ、おぅ』 ドク、ドクッ…と脈打つ音がアスカにも伝わるほど、長く激しい勢いで族長は射精を続けた。一面肉芽で覆われた竿部分が転がる様に口腔全体に擦りつけられていく。敵の接近で警戒する毒毛虫のように膨れあがり、一面に密生した肉芽の先端にゴマ粒の様に小さな黒い毛状の突起物が顔を出す。むろん、口の中でそんな変化が起こっていることにアスカは気づかない。そして、それがもたらす結果をアスカが身をもって知るのは、もう少し後のことになる。 収めきれなくなった精液が口の端士から溢れ、床に白濁の染みを作っていく。生卵の白身を千倍不愉快にした感触にアスカの全身の毛、特にうなじの毛が逆立っていく。緊張のあまり全身の筋肉が引きつり、特に顔と肩の筋肉がきりきりと痛む。 「あむぅぅぅぅ、ううぅぅぅぅ、うう、ぐぅぅぅぅぅ」 雨に打たれた捨て犬 ――― 惨めにアスカは喘ぎ、それだけは嫌だと首を振る。しかし、族長は口元を歪めたまま、それを許さない。精液とペニスで一杯になった口腔の感覚が、だんだんと麻痺していく。喉が詰まり、湯あたりした様に時折ふっと意識が遠くなる。この息苦しさと嫌悪から逃れる為には、口に溜まった精液を全て吐き出してたっぷり20回以上深呼吸をするか、あるいは可能な限り飲み干して鼻と口を使って呼吸をするしかない。そして族長は前者の選択肢を許そうとする様子はなかった。 (ちく、しょう……。ころして、やる。殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやるん、だから……) 再びアスカの喉が躊躇いがちに動き、液体と言うよりゲル状の精液を飲み干していく。心の中の悪態と裏腹に、熱に浮かされた目でむしゃぶりつき、尿道に残っている精液を舌でこそぎ出す様にして、ためらいがちに、だが間違いなく飲み干していく。 不味い。この世にこんなにも嫌悪と不快を呼び起こす物があるのかと思うくらいに不味い。 でも、奇妙に後を引く苦み―――。 額に汗を浮かべ、全身を火照らせながらそれからたっぷり30秒近くアスカは族長の変異ペニスに吸い続けていた。無意識のうちに、一度味わってしまった魔薬 ――― オークの精液を求めてアスカの身体は正直に行動してしまう。 もっともっと、いじめないで、苦しめないで、気持ち良くして…。
心がどんなに拒絶したとしても、今みたいに気を抜いてしまえば、身体は心を容易に裏切ってしまう。 「ふむぅぅぅ……ううぅ、んんっ、ちゅう、ちゅっ。ちゅぶ、じゅる、あはぁ……あ、じゅ、んぐっ、ごきゅ…」 (汚されていく……身体が外と中から汚されていく…) 飲みきれなかった精液が筋となって口元を伝い、腐った海産物の臭いを顔にまとわりつかせてようやくアスカはペニスを解放した。粘つく糸を引きながら毛虫かウミウシの様な形状に変異していたペニスが現れ出て、アスカが瞬きをした一瞬で、口を犯す前のなまこや筋子に似ている形状に戻った。あまりの変わり様に自分が幻でも見たんではないかと、アスカどころか族長自身も思うほどの変わり身だった。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。うっ、ぐっ、げふっ」 (い、いまの、なに…?) 族長の腰にしがみついたまま、空気を求めて大きく方で息を繰り返している。自分が何をしたのかという自覚はあるが、他人の夢をのぞき見しているようで現実を感じられない…そんな表情をしていた。もし正気に返ったとしても、アスカは自分から求める様に族長に口腔奉仕をしたことを、決して認められないだろう。 惚けたアスカにほくそ笑むと殊更優しくしがみつく腕をほどき、いそいそと族長は壁を回ってアスカの背後に回る。 『次はこっち可愛がるオーク』 (なにが…どうなってるのよ? 私、なにをしてるのよ? おかしい、こんなことが本当にあるはずがない) 力なく笑うように口元を歪め、「夢、これは夢よ」と小さくアスカは呟いた。 だが口に残る苦しょっぱい味と磯臭い悪臭が、安易な逃避を許さない。ぺたぺたと足音を響かせながら族長が視界から消えると同時に、アスカは目を見開いて胃液と混ざって固まった精液を吐き戻した。恥も慎みも何もなく、獣の様に呻き酸っぱい胃液にむせ返りながら、体を痙攣させる。 ブラマンジェをこぼしたみたいだわ…。 さっきから口の中がヒリヒリと熱く、ジンジンとうずいて、まるで口の中が別の感覚器官になったみたいだとも思う。舌先で唇や頬を舐めただけで、秘所を触った様に電流が走り、じわりと痺れて熱くなる。心臓が燃えるように熱く、蜂に刺されたみたいに目の前が真っ赤になって、ぐるぐると回っていく。こめかみがズキズキと痛み、汚染された血液が体内で流れ踊る。 (なにこの感覚、口が顔が熱い。ああ、どうして私が、こんな無様なことに…。馬鹿、みたい。私、ばかぁ) 緊張の糸が切れたのかアスカの瞼が閉じた。 「ママー、わたし、えらばれたのー!」 これは夢だ。灰色の草原を明るい顔をして駆けていく少女を見つめながらアスカは思った。同時に腹立たしかった。 夢と希望に満ちあふれ、周囲の世界が残酷に本性を剥き出しにしたことも知らなかった無垢な少女。かつての自分の姿がとてもとても腹立たしく、嫉ましく、哀れだった。 行ってはダメ。 手を差しのばそうとしたけれど、自分の腕はどこにも見えない。腕どころか、顔も身体も髪も声もなにもない。意識だけが夢の世界に浮いていて、為す術もなく過去の出来事を見ることしかできないでいる。 ダメ、やめて、お願いだから見せないで。あの子を止めて。 あの日のことは忘れたい、忘れたと思っても本当のところ決して忘れることは出来ない。純白のシーツに付いた泥染みの様にどんなに洗っても洗っても、生地そのものがすり切れでもしない限り、決して消えることはない。 4歳になるまでは、大きな屋敷に住んでいた。 優しいママ。ちょっと怖いけれど立派なパパ。もう1人のママと慕っている使用人のお姉さんと、姉妹同然に思ってるその娘。誕生日に買って貰った間抜けな顔をした猿のぬいぐるみ。素敵な家族。 大好きなママとパパ。 その時のアスカは心の底から両親が好きだった。愛していたけれど、父と母がそうだったかまでは…気づいていなかった。 アスカの母、キョウコの実家は遠く極東の島国の商人だった。元々、南蛮貿易などで巨万を得ていた実家では海外交流などが盛んであり、自然、異人との付き合いも多かった。遊び好きなアスカの祖父、つまりキョウコの父が交易で訪れた海エルフの商人の娘と情を通じたのは、ある意味、仕方がないことだったのかもしれない。お互い火遊びのつもりだったのか、それとも本気だったのか。生まれ落ちたキョウコは異人の子、鬼の子と疎まれることもないではなかったが、流行病で父と母双方が急死したことなどもあり、たった1人の跡取りとして大事に育てられた。生い立ちもあり人並み外れて浮世離れしていたキョウコだったが、エルフの血と人の血が等しく入り交じった彼女は美しく成長し、京雀たちの噂にあがらぬ日はない、という具合だった。もっとも、所詮は異国の亜人との混じり者であるキョウコは動物園の珍獣を見るのと、さほど違わぬ扱いだったことは想像に難くない。それが彼女の心を、腺病質で壊れやすいガラス細工にしたのだろうか。 誰も本当の自分を見てくれない。祖父も祖母も使用人達も、誰も彼も自分を人間扱いしてくれない。 滅多に外出を許されず、半ば座敷牢に軟禁されたような生活をおくっていたキョウコが、遠く異国の没落貴族…アスカの父の元へ嫁入りした事情を知ることは出来ない。体の良いやっかい払いだったのかもしれない。まだキョウコが正気を保っていた頃、歌う様に話したこともあった。 『お父様はもう無理だと思っていたの。でもね、無理だと思っていた弟が、惣流屋の跡継ぎが生まれたの』 遠く異国まで来たキョウコだったけれど、やっぱり幸せにはなれなかった。 持参金を目当てにした種族差別主義者、つまりはエルフを人の言葉を話す獣でよくて野人と見る没落貴族と、ハーフエルフの結婚に愛があると期待する方が無理なのかもしれない。 義務の初夜 ――― それっきり最低限の日常会話はしたけれど父は母に関わろうとはしなかったそうだ。それどころか当てつけの様にキョウコと共に異国へ来た付き人の女性(後の正妻でありアスカの義母)に手をつけ、先に子を、つまりアスカの腹違いの姉をつくる有様だった。数年後、アスカが生まれた当初は当然だが不貞を疑い、ますます嫌悪の情を深めた。愛していなくても、勝手な行動は許せなかったらしい。エルフが稀に数年以上前の情交が元での妊娠することがあると知ってもそれは変わらなかった。もっとも、そう言うことがあるのだとしても、本当に自分がそうなのかアスカには確信が持てなかった。 だってアスカは母親にも父親にも似ていなかったから。 結局、アスカはラングレーの家の一員、父の娘として育てられることにはなったのだけれど、父はアスカは顧みることはほとんど無く、ただアスカがハーフエルフでもエルフでもなく、人間であったことと、女の子であったことに露骨に安堵していた。 『獣の血が混じらずに良かった。跡継ぎでなくて良かった』 4歳になったとき極東の実家が没落したのか、それともキョウコ達との縁を完全に切ることに決めたのか、年に1度は来ていた使いが来なくなり、同時に資金援助も途絶えた。金蔓としての正妻だったキョウコはたちまち立場を失なった。追い出されなかったのは、キョウコ達には他に行く場所がなかったからだ。本当に追い出したときの悪評に耐えられるほどの覚悟は、さしもの父にはなかったらしい。それともエルフの呪いといった類の噂を信じていたのかもしれない。自分よりも母が不憫すぎて、幼いアスカはとにかく泣きじゃくって抗議したことを覚えている。答えは執拗な平手打ちと、アスカを守る為に這い蹲って謝罪するキョウコの姿だった。 そのころからどこか夢見がちだった母は完全に夢の世界へと遊離してしまった。 とてもとても辛いことが数度繰り返され、キョウコはアスカも誰も認識できなくなった。縫いぐるみにアスカ、アスカと呼びかける様になり、ただでさえ弱かった身体が日ごとにやせ細っていく。幽鬼のような母の姿に幼いアスカは決心した。誰にも負けないくらい強くなる。強くなってママを守るんだ。誰も無視できないくらい強くなれば、きっとパパも私とママを無視できなくなる。 アスカが町の教会で、その大いなる才覚を認識されたのは8歳になったときだった。 生まれつき才知に長け、真面目に何でも一生懸命にこなすアスカは、以前から評判だったが見よう見まねでやった行為で、初歩的ながら法術の初歩を実践したことで、神父に大いに誉められた。是非にもその才能を伸ばすべきだ、必要なら出来る限りの援助をしようと言われたのだ。当時、いや今も戦乙女は自立した女性のつきたい職業で1,2を争う人気職だ。もう一つの人気であるユニコーンライダーと同じく、なりたいからと誰でもなれる物ではないのは言うまでもない。 ともあれ功績と才能を認められ戦乙女にでもなったときには、きっとママは喜んでくれる! そう思ったアスカは喜び勇んで母に報告しようと一生懸命に駆けて駆けて家に帰って、天井の梁からぶら下がっている母親の姿を見た。 父がもうわずかしか残っていなかった財産を食いつぶし、そしてあっけなく心臓発作を起こして死んだのはそれからまもなくのことだった。 そしてアスカが家を出て戦乙女になるべく修行を開始したのは2年後、彼女が10歳の時だった。 「あ………ああっ」 無遠慮な手が触れるゾクリとした感触で意識を取り戻したアスカは、思わず甘い声を漏らした。 スカートのスリットから手が射し込まれ、無遠慮に太股を撫で回される。這いずる蜘蛛は太股の裏から内股に回り、徐々に付け根の方へと近づいていく。ブーブヒー、と鼻息も荒く族長はアスカの尻を撫で回している。 「う、あ…ぐふっ。う…………ああ、なに、を」 『コフ、コフッ』 アスカの弱々しい問いに無言で答えず、豚の様に鼻を鳴らして族長はスカートをまくり上げ、鼻先を太股に押しつけた。太股を押し開き、無理矢理隙間をこじ開けてくる。濡れて冷たい鼻先の感触に火照った身体は疼き、蒼い炎が燃え上がった。 じゅるり、ぬじゅ、じゅぷ 「ふぁあああっ!?」 男性生殖器に酷似しているどころか、実際に生殖器としての機能も備えているオークの触手舌がアスカの処女肌を蹂躙していく。処女雪を踏み荒らす様に涎という足跡をつけ、緊張して堅くなった尻と太股を肩でも揉む様に揉みほぐしていく。もどかしく、くすぐったい。直接敏感を箇所を嬲る様な行為ではなく、少しくすぐったい程度の刺激だったが、容易に晴れない澱の様な官能がアスカの芯に貯まっていく。 「あ……ああっ! ひっ、いや、あっ、あっ、あん、あ、ああっ」 戦乙女のたしなみとして、スカートの下には下着や肌着の類は一切つけないのだが、今はそのしきたりさえも呪わしい。スカートをまくり上げられ剥き出しにされたアスカの秘所や尻穴を、明らかに誤解した笑いを浮かべ族長は舐めた。下着も着けない淫乱娘にはまず舌でご褒美だ、そんなことを言いたげな表情だった。 「くっ、ひぃ……っ! あ、あああっ!?」 冷たい鼻先に比べると格段に熱い舌先が淫唇に触れ、陰毛をかき分け割れ目に沿って下腹まで濡らした。その瞬間、ゾクッと背筋を震わせて頭から爪先までアスカの全身が痺れる。自分が何をされたのか混乱しながらもアスカは悟り、そして、狂乱した。 「うっ、いやぁぁぁぁぁぁっ! いや、いやぁぁぁぁ! だめ、そんな事したら、されたらっ!」 そんな事をされたら…? 何をすればいいのか、どうすればいいのか、何が最善なのか。そういった考えや計画も何もかもがアスカの心から吹き飛んだ。たとえ友人達の惨劇を目の前にしていたとしても、歴戦の勇者として拷問を受ける覚悟が出来たのだとしても、未通娘の覚悟ではこの世で最も強烈なオークの愛撫、凌辱という圧倒的な現実に耐えることは出来なかった。 「いやっ、いやっ、いやぁぁぁぁぁ―――っ!! 誰か、誰かぁ! あ、ああ…」 穴から抜け出ようと壁を両手をついて必死に押して、右に左に上下にと身体を揺さぶるアスカ。サナギから生まれ出ようとする蝶の様な、どこか必死で可憐な姿がそこにはあった。 金色の髪は汗の滴を散らして乱れ、松明の橙色の光にきらきらと輝いている。涙の滲んだ瞳はどこまでも深く湖の様に青く深い。首筋を引きつらせ、千々と乱れる救けの声をあげるアスカの姿を、頼れるリーダーの姿を仲間達は目撃させられた。 レイの目に、ヒカリの目に、マユミの目に、マナの目にアスカの狂態は映った。 「ふっ………ううぅっ……………くぅ、ううぅ……………………ひぅっ」 「あ、ああ、アスカ、アスカぁ」 「ううう、アスカ、さ…ん。ん、んんっ」 「う、ううっ…ぷはぁっ、げふっ…。う、嘘、よ。嘘よっ。だって、アスカさんが、アスカさんが、こんなことっ! ん、んん……っ」 現在進行形で犯されているレイやマユミたちも唖然とするような、アスカの泣き声が真っ暗になった室内に響き渡った。 あのアスカがこんな風に泣き言を言うのを聞くこと自体初めてということもあるが、それでもあのアスカが、というまさかといった気持ちがあった。4人ともあり得ないことを喩える東方の諺『豆腐の角に頭をぶつけて死ぬ』のを、本当に目にしてしまった人間の目をしていた。 唇を奪われながら正常位で犯されているレイは瞬きもせずにアスカを見つめる。 今も絡みつき血を吸い続ける虫によって、子宮に卵を産み付けられ膨らんだ腹を苦しげに揺すっているヒカリが、力なくアスカの名前を呟いた。 対面座位で腹違いの弟オークに犯されながらのマユミの絶望の声。 口、両手、尻穴、秘所、胸、太股、足指、背中、髪…とありとあらゆる所にペニスをなすり付けられ、精液を塗りたくられながらマナが叫んだ。 「うぁ、あぅ、うっ、うううぅぅっっっ! くぅ…っ! ん、やっ……やめ、やめてっ! や、だめ、だめぇっ!」 じゅぷ、じゅぷ、じゅくじゅく、べろ、ぶちゅ…。 様相を確かめるのが恐ろしくなるあり得ない水音が響き、粘つく淫臭が濃密に立ちこめる。 アスカの股間は尻の割れ目どころか背中の、腰のくぼみにまで涎と汗が溜まり、強引に押し開かれた太股から膝裏までが洪水の様になるほどに嘗め回されていた。スカートはぐっしょりと濡れて肌に張り付き、肌の輪郭をイヤらしく露わにしている。アスカの内股は全体が痛々しいほどに赤く染まり、何度されても慣れることのない舌の感触にビクビクと全身を震わせている。淡い陰毛から縮れが無くなり、筆先の様になるまで唾液で濡れている。 股間がズクリと疼き、疼きが甘美な電流となって太股、脹ら脛、つま先までを痺れさせていく。だんだんと自分が壊れていくことを彼女は自覚していた。それは屍肉喰らいに生きたまま足先から貪り食われていくのと、どこか似ていると彼女は思った。 「あ、は、あ、はっ、あ、いや」 アスカの股間に顔を埋めて執拗なクンニを行っている族長は、陶然とした顔でアスカの匂いと肌の味を堪能している。大量の汗をかいたアスカの身体は蒸れ、やや濃い体臭を漂わせている。同じ成分であっても、女と言うだけでどうしてこうも違うのか…。再度肺一杯にアスカの香りを吸い込むと、舌先凌辱を族長は再開する。蜜を止め処なく溢れさせる淫靡な唇に吸い付き、ぷっくりと膨れた小さな淫核を舐め、ついばむ。 「ふぁ、ふはぁぁぁぁっ。あ……あうぅ、ひぃ!? い、いやっ、あ、ああ、あっ…あううああ、あうあうあああぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!!」 淫核に「ちゅうっ…」と音を立てて吸い付かれた瞬間、折れそうなほどに上体を仰け反らせ、アスカは全身を小刻みに震わせた。靄がかかった忘我の目をして、浅く早い息を不規則に漏らしている。 「んんああああぁぁぁぁ………あっ…………あぁ、ぅぁぁぁぁ」 オークの凌辱で軽く達したと、イかされてしまったと処女であるアスカが気づくはずもない。まだ、今のがアクメとか絶頂と呼ばれる物だとわかるはずもない。なにしろそんな言葉自体、彼女は知らないのだから。 ただ、大切な物が失われたことだけは、教えられなくても、知識が無くてもアスカにはわかった。 (わ、わたし……私、わたしは…) 朦朧とした意識のまま堅く目を閉じて肩で息をしているアスカだったが、唐突に、金属音が室内に響いた。 「あ……」 音を追って目を見開くと、見慣れた半球形をした金属が床の上で乾いた音を立てているのが見えた。鎧の一部。 アスカの身体に固定されているのではなく、神力で吸い付く様に装備されていたミスリルの胸当て、そのパーツである肩当てが脱落していた。 (鎧、が…) ぼんやりと眠い目をしたアスカがどういうことか考えている間に、次々と乾いた音が続いていく。肩当て、足甲(レギンス)、籠手、胸当て…。神の力によって装備されていた神に授けられた神衣が落ちていく。革帯などで固定されている一般的な鎧とは違い、神の力で身体の表面に吸い付く様に浮かんでいる神衣は、装備者に重さを感じさせたり、動きを阻害したりすることはない。だが、それだけに装備する為には制限も多く、違反すればあっさりと力は失われてしまう。鎧が勝手に脱げ落ちたことはつまり、アスカが神の恩寵を失ったことを示していた。のろのろとアスカは胸当てを押さえ、せめてそれだけは外れない様にしようとするが、鎧本来の重さが腕にのし掛かかった瞬間、堪えきれずに取り落とすのを止めることはできなかった。 「ああ、待って、なんでよぉ…」 カラーン、と音を立てて胸当ては床に落ち、手の届かないところにまで転がっていく。手を伸ばして失われた物を ――― かつて母を求めた様に ――― アスカは求める。 だが、運命とは冷徹で残酷で非情である。 程なく、赤い角の様にも見える髪留めをのぞいてアスカの装備品は全て解除され、床にまき散らされていた。今の彼女が身につけているのは、純白の、だがオークの手垢によって汚されたドレスのみだ。 (違う、違うわ…………………無くして、ない。まだ、なくして、ない、の、に…) 心の声も力ない。神が ――― あるいはアスカ自身が ――― 汚れてしまったと認識したことで彼女を守る神力が失われてしまったのだ。まだ処女であると言っても風前の灯火であるし、そもそもオークの舌でねぶられて気をやってしまう娘が、清らかな聖女と言えるのだろうか。…心の持ちよう、魂の方が大事なのではないかとマユミやレイだったら思うところだが、アスカの崇める主神はずいぶんと狭量な神らしい。 ともあれ、絶望で力尽きたアスカの上体が崩れ落ちる。だらりと縊死体の様に手も髪も垂れ下がらせ、再び濃密な闇の中に落ち込んでいく。 「いくわよ、アスカ」 雪解け水の清流による沐浴を終えたアスカは、全裸のままで呟いた。身を切る様に冷たい水による沐浴で、鳥肌が一面に浮かび唇が紫色になるほど身体は冷え切っていたが、心は炎となって燃え上がっていた。プライドも自信も打ち壊される厳しい修行。修行はまだ良い。どんなにきつくても耐える自信と覚悟はあった。だが、運任せの要素があることにはいま、この時、最後の儀式を控えた今となっても納得できないでいる。どんなに才能があっても戦乙女を統括する神…死と夢の神に見初められなければ逆立ちしてもなることが出来ない。 選ばれた乙女であるアスカが言うのも何だが、選ばれてしかるべき才能を持った少女達はたくさんいた。 どうして彼女たちがダメで、自分は選ばれたのだろう? いや、選ばれたのはやはり間違いで、本当はどこか別の場所で真に選ばれた彼女たちは叙任の儀式を行っているのかもしれない。 今この控えの間にて叙任を待っている自分は本当の自分じゃないのかもしれない。今ここにいる自分は全部夢で、本当の自分は母親が、キョウコが縊れた家に今もいる…。 (何を考えてるのよ私は) 勿論そんなこと有るわけがない。今ここにいる自分は現実だ。 「どうかしたんですかアスカさん」 気負うアスカとは対照的に、なんとも気楽に話しかけてくるのは、アスカと同じく今日これから叙任を受ける少女、ノノだ。当時14歳のアスカとそう年が違わない彼女はよい友人、というよりも1人にして欲しいときにも関わってくるうるさい奴、そういう認識だった。だがあの厳しい修行や訓練について来たわけだから、決して忙しなく底抜けに明るいだけの少女ではない。皿洗いをすれば粉砕し、馬の世話をすると馬小屋を粉砕するという究極のドジっ子という評価が大半だったとしても。 (…この子は本当、正体不明だったわね) 「お姉様素敵です〜」 なんだかんだいって数年に及ぶ付き合いも、今日で最後になるかと思うと感慨深い物は確かにある。目にハートマークを浮かべて17歳で年上とはいえ、同期の少女ラルクを『お姉様』と呼んでつきまとい、使用人さながらに甲斐甲斐しくお世話をするトラブルメイカーとも今日でお別れだ。シルクで編まれたレースをふんだんに使って作られた純白のドレスを着て、大司教の前に出でて七面倒くさい祝福を受けたあと、やはり神の祝福を受けた装備を与えられ、戦乙女となって神の意を体現するために世界各地を転戦することになるのだ。 まあ、ノノはラルクにつきまとって一緒に世界中を旅して回るのだろうけれど、少なくともアスカは戦乙女の先輩、同期、後輩のいずれとも行動を共にする気もないし、そもそも故郷に戻るつもりもなかった。大人になるとはこういうどこか冷めた感情になることを言うのだと思う。 「こら、放せ! 離れろノノ! いい加減にしないか君はっ! 私はお前のお姉様じゃないと、何度言えば…! ドレスが皺になるだろ!」 小柄で普段身軽に動く彼女でも、これだけ大仰なドレスを着ていては色々と動きにくいだろう。抱きつかれるだけならまだしも、うっかり踏まれて足跡を付けられたりしたら、なにもかも台無しになってしまうかもしれない。 大輪に開いた花の様にスカートが広がり、腹の縊れから胸のふくらみまで身体のラインにぴったりと包んだAラインを描くプリンセスタイプのドレスは、どう言葉を選んでもウェディングドレスにしか見えない。さらに肘上まである長手袋を着け、属性が善の処女しか身につけられないという魔法の装備品『ガラスの靴』を履き、誕生石(アスカは瞳と同じ色の青い石)の指輪を着けるわけだからこれはもう、エスコート役の父親と新郎がいればどこからどう見ても花嫁だ。あとはケープをつけてブーケを持てば完璧だろう。 ただまあ、ウェディングドレスと言うには少々露出が多い部分もないではない。イブニングドレスの様に肩や背や胸が大きくくられ袖が付いていないので上半身は半分近くが露出している。胸も布で覆われているのは下半分だけで、若さに溢れた駿馬のような肌や胸の谷間は丸見えになっている。デコルテ(肌が出ている胸から首までの部分)にはオーガンジー(透けるほど薄い布地)が包んでいるから、完全に露出しているわけではない、と言えばその通りだが、ウェディングドレスにも関わらずことさら女を強調する雰囲気を持っている。 (まあ、ある意味間違ってはいないんでしょうけれど、でもやっぱりなんか納得できない様な…) どんだけスケベな神様なのよ、と思う。その妻である女神達の長が結婚と誕生を司る女神ってのは悪い冗談だ。 戦乙女になるというのは、神に嫁入りをすると言うこと。現世の女としての幸せもなにもかもを放棄し、ただ神に仕えてその意を具現することに生涯を尽くす。そうすることで戦乙女は一般的な僧侶や魔法使いの様な修行や勉強をすることなくして奇跡の力を使い、更に維持することが出来るのだ。反面、その力を維持する為に僧侶や聖騎士とはまた違った形で多くの制約や義務がある。その中で最も重要で理由の如何を問わず許されない禁忌が、処女でなくなること。戦乙女は雷神であり戦神であり、主神にして死と夢を司る神の娘。そして神の花嫁という立場であるから、ある意味仕方がないことかもしれないが…。 (とはいっても、実力だけでなく家柄とかコネが重視される騎士になるよりはよっぽど楽だし…。なんといっても憧れの職業だし) 手早くドレスを身につけながら、小さくアスカは嘆息した。これから儀式の塔の螺旋階段を上って頂上へ行き、大司教その人の手で戦乙女それぞれに選別された武具を与えられる。ある者は槍であり、剣と盾であり、滅多にないことだがそれ以外の武器を与えられることもある。斧や棍棒の様な無骨な武器が与えられた例はなく、長柄の鎌(グレイブ)や細身の両手剣であることが多いらしい。 (私は何を授けられるのかしら…) 少しだけ、楽しみだと思う。周りから評価される、それはアスカにとって日常でもある。この日の為に剣も槍も、グレイブも、それどころか斧やメイス、鞭も修行してきたのだ。非常に稀だが神にとても気に入られた戦乙女は、秩序と正義と善なる力を三つとも持つ『リトリビュート』なる聖剣を授けられると言うが…。 (まあ、今はとりあえず戦乙女になる叙任式を全うすることだけ考えなくちゃ…) 1時間後、まさか自分がリトリビュートを授けられることになるとは、さすがのアスカも予想はしていなかった。 未来の勝利と栄光、そして敗北も…。 拳骨が壁を殴りつけ、腐った板を打ち抜く様な気安さで壁に穴を開けていく。その轟音とあまりと言えばあんまりな破壊力は、肉欲と興奮に酔っていたオーク達とレイ達を一瞬で凍り付かせるものがあった。いくら力強いと言っても族長の腕は破城槌ではない。なのに厚さが10cm以上ある石壁を殴って壊している。その拳が自分たちにふるわれた時を想像し、オーク達は冷たい物が背中を走った。こいつには逆らうべきではない。少なくとも、今は決して逆らえない。 現実を自覚して熱狂が冷めていく。恐らく、族長はこの圧倒的なパフォーマンスでもって今日の獲物全てを自分の物とすることを宣言するだろう。異議を言うことは自由だが、命の保証は出来ない。アスカ達を妻にして代わりに今現在、彼の妻となっている女を下賜する可能性は高いが、いずれにしてもつい先日捕らえたばかりの、褐色の肌をした娘はその対象とはならないだろう。十中八九、数ヶ月前に妻にした族長が飽きた女達になる。ゴブリン部族から奴隷として買った女ゴブリン ――― まだ若い ――― が3人。近くの村からさらった農夫の中年女が1人と羊飼いの娘が1人。山羊や丘イソギンチャクに比べれば遙かにましではあるが、1人は手にはいると思っていたオーク達は失望を隠せない。 『おぅ、ガエが凄いオーク。もったいないが、手っ取り早くいただくオーク』 壁に空いた穴から顔をのぞかせ、ぐったりとしたアスカの両胸を背後から握りしめながら族長はほくそ笑んだ。 マユミの様に圧倒的な質感をもっているわけではないが、それなりの量感を持った胸はドレスの上からでも重さを感じられる。 『おお、良い手触りだオーク』 しばしその質感と布越しの感触を楽しんでいたが、やおら爪を立てると濡れ紙を裂くようにドレスを引き裂いていく。サテンのドレスは容易く引きちぎられ、インナーをつけていないアスカの双乳が露わにされる。北方人(白人種)特有の白い肌はうっすらと赤く染まり、血管が薄く青く栄える。まろびでた乳房は白く、シミ一つ無く目にまぶしい。血を連想させるピンク色の乳首が淫らに揺れる。いかにも良い子供を産みそうなアスカの胸に、先の恐怖も忘れてオーク達が下品な歓声を上げる。 『オ、オオオオーッ!』 もっと見せろ! と言う部下の嘲笑に笑って答えると、族長はピンク色をした乳輪とその中心でひくつく乳首を素早く指に捕らえた。部下達によく見える様に下から掬い上げると、人差し指と親指で乳首を摘んでコリコリと転がして乳首の弾力を楽しんだ。 「ん……んんっ………あっ」 意識がないままでも感じてしまうのか、眉根に皺を寄せて呻き声を出す。眉を八の字にして困ったような顔をして、息がまた荒く、早くなっていく。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、あうぅ、くっ……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ああぁぁ…」 アスカの意識がないのを良いことに、族長の愛撫は激しさを増していく。背後から形が変わるほど執拗に揉みし抱き、苦痛を感じるギリギリまで指を沈めては、ぱっとゆるめて感触の変化を楽しんでいる。乱暴なようでも女体の扱いに関してオークの右に出る種族はいない。徐々にほぐれてきたのか、張りつめて堅いばかりだったアスカの処女乳房は柔らかく、なんとも言えない弾力でもって愛撫を受け入れ始めた。雫となった汗が浮かび、ぬめぬめとした手触りの乳房の麓から頂上まで絞り上げるように握りしめ、赤く充血した乳首をギターの弦でもはじくように指先で転がし弾く。 「ひぅっ、んっ、んあっ、あっ、ああっ、あんっ」 意識のない…いや、光こそ無いが半開きになった目でアスカは喘ぎ声を上げた。意識がないと言うより夢うつつに半覚醒状態でくねくねと身体をくねらせている。今の彼女は催眠術をかけられたように、どこまでも素直に快感に反応した。ゾクンゾクンと疼き広がる乳首への刺激で正気を蒸発させ、背中を反らせて喘ぎ声を上げる。緩く半開きになった口元から涎がこぼれ、顎を伝い、首筋を濡らしていく。族長は身体をかがめてアスカの背中に腹を密着させる。耳に息を吹きかけ、舌で一舐めすると、鎖骨のくぼみに溜まったアスカの涎と汗を音を立てて啜った。粘つく人外の舌に敏感な首筋を嬲られるその感触が、アスカをまた喘ぎ啼かせる。 「ああああぁぁぁ、あっ、ああぁ、ひっ、ひぃう、う……う、うぅっ…ううぅぅん」 彼女の心にとっては甚だ不本意だろうが、無意識のままの身体は媚びに媚びた喘ぎ漏らす男を求め、そして男を狂わせる甘い声をあげて淫らに震える。処女である限り20前後の年齢で不老となる戦乙女であるが、皮肉なことに18歳を過ぎた頃からよりいっそう女らしくなったアスカの身体は、子供を産むのに充分な準備を整えていると言える。全細胞で『孕ませてやる』と宣言している獣性と雄の結晶である、ピンクオークの、それも大英雄(メジャーヒーロー)の愛撫に晒されては、子を産み育て繁殖するという生物の本能に従わないわけがなかった。 「ひん…。ふ、ひゃうぅぅ…う、ううん、くぅん」 官能の疼きに突き動かされ、つい漏らしてしまった子犬の甘え声にオーク達は一斉に唾を飲み込んだ。 族長もぞくりとした寒気にも似た痺れを背骨に感じ、唾を飲み込んだ。開けっ放しでハァハァと夏場の犬のように口で息をしていたため、乾ききっていた口中には唾の一滴も出なかったが、とにかく族長は無理矢理喉を鳴らして興奮を飲み込んだ。いくら今のアスカの声が可愛らしかったとはいえ、初めて女を抱く人間のような興奮を覚えている自分に戸惑う。 (俺が…興奮してるのかオーク?) マユミを抱いたときにも似たような感覚を味わったが、それとはまた違っている。マユミにも興奮して、この世の物とも思えない極上の肢体に何十回射精をしたかはわからないが、それでもこうはならなかった。それはあくまで奪い、征服し、蹂躙する行動だったから、ある意味いつもと同じ凌辱だったといえる。マユミに執着したのは美しく最高に好みの体つきをしてるからだけでなく、父親が独占した初恋(というのも不適当だが)の女性の面影があったからだ。だが、アスカは違う。単純な好みで言えば、スタイルや黒髪といった点でマユミの方が好みといえる。それなのにアスカを前にして興奮した彼を、武者震いのような震えが脹ら脛から腰までを襲い、心臓がバクバクとスタッカートを刻んで五月蠅いくらいに高鳴っている。 『そろそろいただきオーク』 想像以上に小さな声で呟いた。部下達からは見えないように混沌の汚染によって脇腹から生えた小さな隠し腕でアスカの腰をつかむと、また出ない唾を無理矢理飲み込んで族長はペニスを秘所に押し当てた。なぜかおっかなびっくりと、具合の良い腰位置を探るように円を描く。舌愛撫で充分に湿っている秘所は容易にペニスの先端を受け入れた。「クチュリ」と粘ついた音を立てて粘膜と粘膜が吸い付きあう。族長の緊張がダイレクトにアスカの敏感な箇所に伝わり、アスカの腰がビクリと跳ねる。 「ひぅっ、うんっ!」 自分から押しつけるように跳ね上がったアスカの秘所に、亀頭の先端が半分もぐり込む。蜂が蜜と花粉を求めるようにラヴィアをかきわけ、身も心を溶かし尽くす快感が双方を痺れさせた。族長は天を仰いで鋭く嘶き、アスカは息を詰まらせ、目を見開く。 「ん………んんんっ!? うあ、な、なに、がっ」 状況がわからないままアスカは反射的に足を閉じようとするが、族長の膝に阻まれて進入を拒むことが出来ない。かえって力んだことで淫裂を広げ、太股にばかり力が入ってしまってナマコペニスの蹂躙を容易にしてしまう。すかさず淫肉亀頭の節一つ分がアスカの膣内にもぐり込んだ。文字通りの処女地をこじ開け吸い付く亀頭を、処女とは思えないほどに充血し膨らんだ淫唇は拒絶するどころか、飲み込むように受け入れていく。オークオーラやジゴロ並のテクニックでもどうにもできない、処女の強張りだけが抵抗だった。 「ひっ、くっ……ひぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜っ! い、やっ、なに、これっ!? ああ、ああああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜」 『お、おぅ、おお、おおぉぉぉぉ…』 「あう、あう、ああぅぅ。なによ、これぇ…。やめ、て、助け…ぐ、ひぐっ、ううぅ…熱い、熱い、のよぉ」 『ううぅぅぅ、ブヒィ…ブヒッ、ブヒッ、ブヒィ』 「やだ、やだ、離れて、離れてよ…。離れなさいよ、この、豚野郎…。うぐ、うううっ、いや、イヤぁ…。なんで、なんでなのよ? なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないのよぉ」 ズルリとペニスが膣をえぐる。呪いの言葉を中途で飲み込み、歯を食いしばってアスカは快感の電流を堪える。油断したら大声を上げてしまいそうで、どうして声を上げてはいけないのか自分でも気づかないまま、奥歯を噛みしめて必死に快感を堪える。 (くっ、ううぅぅぅ…ダメぇ、なによ、これぇ…。気持ち、良すぎて、痺れちゃって、耐えられ、ない、わ) これがピンクオークの凌辱…。 甘く見ていた。凌辱されて耐えられるつもりはなかったけれど、それでもこんなにもの凄い物だってなんてアスカは想像でも出来なかった。本来、触覚と痛覚、熱を感じる温感が複雑に絡み合い、その時の精神状態などが相まって、結果として快感を感じるはずだ。他人からのマッサージや脇をくすぐられて笑ってしまうのも、この延長に過ぎない。仮に感覚が1000倍とかになったとしても、1000倍快感を感じるわけではなく、通常なら触られたとも感じない空気の感触を知覚するようになるだけだ。一定以上の感覚は脳が処理できなくなる為、知覚はされなくなる。 感覚が数倍になったからと言って、何倍も感じるようになるわけではないのだ。 ただし、オークオーラの影響下にあるときだけは別だ。 科学技術の発達していないアスカ達の世界ではそこまで判明しているわけではないが、オーラの影響下に捕らわれた女性は神経信号の伝達がおかしくなり、本来なら苦痛などを感じる痛覚を伝達する神経路や手足をを動かす為の信号を伝達する神経路には、余計な信号として切り捨てられるはずだった快感が割り込みをかけてしまうのだ。その分、苦痛は緩和された上に痺れたように身体の自由はきかなくなり、一方で通常の2倍、3倍もの快感を感じるようになる。 「はぅ、はぅあぅ、あうぅ、ああ、あうぅぅ…」 恐怖と興奮に瘧のような震えがアスカの全身を支配する。歯をカチカチと噛み鳴らし、ガクガクと首を揺らし、これから襲いかかるだろう未体験の快感に恐れをなしている。 せめて痛ければ、まだ正気を保つことも出来たかもしれないが、半ばまで挿入されたペニスからは圧力と熱を感じてはいても不快に思うほどの苦痛を感じてはいない。処女の強張りと狭い膣をほじくられ、処女膜寸前まで押し広げられているのだから、もっと痛みを感じてもおかしくないのに。勿論、前述したとおりオークオーラが全開になっている影響の為だ。特に神の加護を失ったアスカの抵抗力は、一般人とそう変わらないほどに落ち込んでいる。マユミたちのように痛みを感じることは、無い。 『ブヒ、ブヒヒ、おぅ、いく、ぞオーク』 破れそうなくらい興奮で心臓を高鳴らせた族長は、ぎゅうっと強くアスカの左右の乳房を握りしめると、いったん腰を引いた。 「んんんんっ…」 胸に意識が向き、さらに胎内の圧力がわずかに減少したことで反射的に力が抜け、アスカはため息のような息を吐く。玉のような汗が浮かんだ背中を見つめながら、その時、族長は自分が興奮している理由を悟った。 みつけたのだ。 自分のつがいとも言える最高の女を。きっと、いや間違いなく、アスカと自分の間からはピンクオークと人間の運命を変える救世主とも言えるオークが生まれるのだ。 人の世界を、エルフの世界を、ドワーフの世界を、全ての世界を蹂躙する支配者が生まれる。 勿論、レイからも、マユミからも、マナからも、ヒカリからも彼の血を受け継いだ上位種とも言えるオークロード達が生まれるだろう。だがアスカは違う。エルフの、それもだいぶ薄くなっているとはいえエンシェント・エルフの王族の血を引いているアスカから生まれる子供は、オークキングとも言える最上位種となる。 見えないはずの片眼に息子達が怒濤の津波となって人間世界を蹂躙している光景が映った。 暗黒神からの天啓だ。 知らず知らずのうちに族長は涙を流し、ブヒブヒと鳴き声を上げながらアスカの、最後の儚い抵抗に向かってペニスをえぐり込んだ。引いていた腰がアスカの尻にぶつかるくらい勢いよく打ち付ける。一瞬、処女膜のきつい締め付けがあったが、大量の愛液と唾液を潤滑剤としたペニスは予想以上の気安さでつるりと膣の最奥、子宮の入り口にまで到達した。 「あああああぁぁぁぁぁ――――――っ!!!」 処女が失われたその瞬間、甲高い身を切り裂かれるような悲鳴でアスカは絶叫した。 天は慟哭し地は狂乱していた。族長もアスカも狂っていた。二人の周囲の音も光も全て喪失し、世界には二人しかいなくなった。族長はアスカをかき抱き、共に悶え、吼えわめいた。 「いやっ、いやっ、いやぁ――――っ!」 見開かれた血走った目からは止め処なく涙が溢れた。血管と筋が浮き上がるほどに強くきつく族長の腕を握りしめて、喪失感とわずかばかりの痛み、そして異形のぶつぶつペニスの熱、ざわざわと蠢く肉芽からの刺激、内臓がずれるかと思うくらいの存在感と圧力、それらが複雑に混じり合った苦痛じみた快楽に耐えようとした。死にたいと心で思ったとしても、身体は本能的に生きることを選択する。 アスカの高潔な魂は、愛欲に狂う自分の身体に裏切られてしまった。 「ひぃ、ひぃ、い、いいいいぃぃ…! いや、ああ、ああ、なんで、どうしてぇっ!?」 ゾクンゾクン、ぞわりぞわり…。引いては返す波のような疼きがアスカの全身を支配している。族長のゆっくりしたペースの挿入に合わせて膣が収縮し、腹が波打つ。その意識で制御できない動きが、またアスカの快楽神経を刺激していく。断末魔のような震えが全身を走り、食いしばった口元から血が滴る。 「ひぃう、ひっ、ひっ、ひぎぃぃぃぃ………っ!! や、やめて、もう……やだぁ―――っ! ああああぁぁぁ―――っ!!」 ビクビクと震え、軽く達したアスカ。だが族長の凌辱はとどまる気配もなく、上り詰めたアスカの意識をもっともっと上へととにかく持ち上げていく。どこまでもどこまでも…。 浅く早い注挿を3回繰り返し、ついで深くゆっくりとした挿入でたっぷり1分は弄ぶ。最も敏感な部分を責め立てられ、哀切な喘ぎ声を上げて花嫁が絶頂を迎えると、休むことなく今度はゆっくりとした円運動でアスカの敏感な部分を刺激する。 「ひぐっ、ひぃう、うう、うんううぅん、うんうううぅぅぅぅ………っ!! う、ふぁ、ふぁああ、あうぅ、や、やめ、やめてへぇぇ…」 再び達した涎を垂らしながら呂律の回らない口調でアスカは懇願する。族長は薄笑いを浮かべて、今度は深く速い動きでピストン運動を再開する。焼けた鉄棒で内側から焼かれていく。二人の結合部からは泡となって愛液が溢れ、わずかに流れ出た破瓜の血を洗い流している。太股どころか足首までを洪水のような愛液で濡れ光らせ、愉悦にアスカは狂い喘ぐ。 「や、ら、もう、やだぁ…。あ、あうぅぅ、なに、ああ、がっ」 容赦なく膣の最奥をえぐられ、弄ばれる快感の大渦巻きに翻弄されながら、見えない腕に捕まれ、空へと引きずり上げられるような感覚にアスカは目眩を覚えた。目を閉じれば暗い瞼の裏で閃光が瞬く。秘所を舐められて達したときにも似ているが、それとは比べものにならない蠱惑的な感覚と、これが最終的にもたらす結果への恐怖にアスカは震えた。 「あああ―――っ。あ、あああ―――っ」 (なに、これ、いやぁぁぁ、こわい、怖い、よぉ…) 「ああ、あう、はうあう………ま、ママ……ママぁ……う、くぅ…ひぃう、ひゃう。 怖いよぉ、怖い、ママぁ…。変なの、わたし変なの…ママ、ママぁ」 とうとう幼児のように泣きじゃくるアスカ。せめて気持ち悪くて苦痛だったら、まだ耐えられたかもしれない。しかしオークの絶技は嫌悪と拒絶の気持ちとは裏腹に、ビリビリピリピリと指先まで痺れあがるくらいに気持ちが良い。小さい物も含めれば、何度達しているかもわからない。ペニスが気持ち良くて恐ろしくて仕方がなかった。気持ちいいのは罪悪だった。不埒な神をも恐れぬ行為に身体が喜び乱れていることが信じられなかった。助けに来るはずがないとはわかっていても、それでも母の名前を呟かずにはいられなかった。 「うああぁぁ……やめて、やめて、やめてぇぇ…。やだ、いやぁぁ」 アスカの全身と認識の全てがピンク色に染まる。 胎内のペニスは存在感をいや増し、この上更なるなにかを行おうとしていることを如実に物語っていた。未通娘の知識とは言っても、なにをどうすれば子供が出来るのか位は、アスカは知っている。いや、その最低限の知識がなかったとしても、快感に翻弄されていたとしても、初めてでもアスカには族長が射精しようとしていることがわかった。 (そんなことされたら、壊れる、死んじゃう…。ううん、そんなことよりもっと酷いことになっちゃう…) 「あう、ひっ、いやっ、オークの赤ちゃんだなんて、イヤぁ…。産みたくない、産みたくない…」 アスカが族長に射精の気配を感じたと同時に、彼女の膣はきつく密に収縮して螺旋ペニスを締め上げる。 「くっ、ひぃぃぃぃ〜〜〜〜っ! ああ、こ、擦れてる…い、ぎっ、あ、ああ、とけちゃう…」 ゴーヤかナマコのような形状だった族長のペニスは、アスカの胎内で膨れあがり、再び毛虫に似た混沌ペニスへと変異していた。ざわざわと一面に密生した絨毛が波打ち、繊毛一本一本に無数に存在する目に見えないほど小さな刺胞細胞がアスカの膣壁へ撃ち込まれていく。毒 ――― が血管に混じり神経を犯されて、甘美な快感に声にならない悲鳴をアスカは上げる。苦痛を感じさせることなく刺胞細胞は粘膜の下へと潜り込み、病原菌のように作用して新たなる感覚器官とそれに付随する神経経路をつくっていくのだ。 触覚と痛覚の一側面でしかない通常の快感にくわえて、正真正銘の快感のみを味合わせる第7の感覚とも言うべき快覚を作っていく。この刺胞細胞が触れた箇所は遠からず、性器と同等以上の快楽器官となってしまう。元々快感を感じる為の感覚集合器官である膣や淫核がこの影響を受ければ、どんな聖女も処女も娼婦のように狂ってしまう…。 「はぅ、ひゃう、いひゃう、きゃう、ひぅっ、あぁ、いやぁ……あっ、そんな、暑いっ、熱いのよぉ! お腹が、熱いっ! あう、あああっ! あ、ああぁっ! ひっ…? ひぃいいいいいいいいいいいいいいっっっっっ!?」 突然、これまでのも耐えられないほどだったのに、段違いの官能がアスカの魂を貫いた。オーク達があっけにとられるような喘ぎ声を上げ、骨が折れそうなくらいに身をよじり、全身を痙攣させる。族長が押さえ込んでいなければ、壁や床に頭を打ち付けて自殺したかもしれない。それほどの狂いようだった。狂うほどの快感だった。身体がバラバラにされ、砕かれ、細胞の隙間に快感が染みこんでくる。快感の嵐にアスカが一時的に正気を失いながらも、完全なる狂気に陥らなかったのは、力を失いながらも高レベルの戦乙女として経験を積んできたからかもしれない。狂えないくらい自分が強いと言うことが、今の彼女にとってどれほどの意味があるのかは、全く別の話だが。 「か、かは、はっ、はぁっ………………………。はぁ、はぁ、はぁ、はっ、はひ、ひっ…。な、に、これ、は…? はっ、はっ、はっ………はぁ、はぁ、はぁ…。ぐっ、い、ぎぃ…うっ、ううっ、くあぁぁぁ、ぐっ…………ううぅぅ」 アスカは空気を求めてしばし喘いだ後、きつく奥歯を噛みしめて快感に耐えようとする。オークペニスの圧倒的な快楽には焼け石に水だが、それでもしないよりはましだった。全身をぐっしょりと汗で濡らし、肩と言うより全身で息をして大波をやり過ごそうとするアスカだったが、胎内で膨れあがる圧力と耳元で囁かれた言葉に絶望という言葉の意味を知った。 『出すオーク!』 「いっ…!!」 痛いほど強く生温い精液が亀頭の尿道からだけでなく、竿一面に密生した肉芽の隙間から噴き出した。内側から膣全面を一度に刺激する生温い精液の感覚に、アスカは声にならない悲鳴を上げて絶頂を迎えた。 声を出すことは出来なかった。波が収まる前に口を開けば、魂ごと吐きだしてしまいそうで。 「…………っ! く……………っ! んん………………くぅ……………………っ!!」 精液が膣に染みこみ、子宮に流れ込む感じるはずのない絶望的な感覚を確かにアスカは感じていた。胎内は精液に満ちあふれ、流れ込んだ精液は子宮に溢れ、数十億の精子は逃げまどう卵子を捕らえ、後から後から無理矢理頭を突っ込み凌辱していく。 「ひ、ひぅ、ひっ…ひっ、は、はひっ、ひっ…な、中に…」 (あ、ああ……だされ、た。妊娠、しちゃっ…た) 息も絶え絶えに呻いていたアスカの目が裏返り、遅れてきた快感の稲妻がアスカの背骨を貫いた。 「ひぅぅぅぅっ! ………うぁ………」 いくら彼女でも、これ以上の凌辱と屈辱に耐えるのは不可能だった。凌辱されて戦乙女の力と資格を剥奪された絶望、オークの子供を身籠もったかもしれない恐怖、仲間を巻き込んだ己の迂闊さと罪悪感は彼女の精神をさんざんに打ちのめした。あるいは気絶は彼女にとって救いだったのかもしれない。 アスカが気絶したとき、族長は少しだけつまらなさそうに鼻を鳴らしたが、あまり気にせず、だが名残惜しげに射精を続けた。目を開けたまま気を失うアスカの腰をつかんで固定し、挿入できる限り奥までペニスを挿入して最後の一滴までも精液を絞り出す。 尻にえくぼを付くって絞り出し、腰を揺すって本当に最後の一滴までアスカの中に精液を吐き出すと、鼻歌を歌いながらおもむろにペニスを引き抜いた。栓が抜かれてドロドロと熱い精液が秘所からこぼれ落ち、ゆるみきった淫唇は息でもしているようにヒクヒクと動いている。 『ふぅ…。冬が楽しみだオーク』 クルミほどの大きさに縮んだ睾丸袋にすっきりした顔をして、子供が産まれるだろう半年後のことを思って族長はほくそ笑んだ。凌辱後の運動とばかりにアスカを捕らえている壁を殴りつけ、粉々に打ち砕いて完全にアスカを解放すると、穀物袋でも担ぐみたいに彼女の身体を抱え上げた。これ以上ないくらいに上機嫌で、高らかに宣言する。 『よし、おまえら、ひきあげるぞオーク!』 オークから見ても常識外れな交尾にあっけにとられていた他のオーク達が、掛け声にのろのろと反応する。ぼんやりとしていた彼らだったが、大雨や地下の秘密の扉近くまで溜まり始めた雨水に気づき、慌てて引き上げ準備を整えている。泣きじゃくるマユミやマナ達に魔法が使えないように、あるいは自殺されないように猿ぐつわを噛ませ、縄でぐるぐる巻きに縛り上げて肩に担ぐと、我先にと地下通路へともぐり込む。 最後の1人…つまりは族長が通路をくぐり、内側から扉を閉めた直後に入り口の上に水が流れ込んでいった。雨は凌辱の後を洗い流し、溜まった泥が通路の入り口をより完璧に覆い隠していく。 数分後、完全に沈没した室内に、ここでほんの少し前に凌辱があったことを悟らせる物は何もなかった。 ここに「竜を挫く者」とまで呼ばれた腕利きの冒険者達、惣流アスカ・ラングレー、綾波レイ、山岸マユミ、霧島マナ、洞木ヒカリの5名の冒険は、全滅という最低最悪な形で終わりを告げたのだった。 たとえどれほどの実力者であっても、ちょっとした油断で全滅するし、どんなに素晴らしい功績を成し遂げたとしても、死んでしまえば全てはお終い。
初出2009/06/05 改訂2011/07/11
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